続いていく日常を ~インタビューと写真、“ママじゃな” ちひろ編~
実はだいぶ前から私が心の中で温めていた企画、ちひろちゃんにもう一度インタビューをしようの巻を実現しました。
「ママじゃな」を見てて、「こういう写真を撮るちひろちゃんというのは、どんな人なんだろう?」と興味をもってる方もけっこういるんじゃないかと思って。
ちひろちゃんは2010年11月生まれの女の子と、2015年2月生まれの男の子のお母さん。2人目の妊娠中(臨月)にダンナさんの肺癌がわかり、出産3日後に手術。約1年後、肺にまた小さな影が現れて、今夏には転院。食事療法も開始。そんなこれまでのことを、最近、近しい人への報告と自分の整理も兼ねて、facebookに投稿していたちひろちゃんです。今回は、その辺りについても聞いています。
◆「なんかいつもカメラ持ってる人」です。
―――facebookにアップした文章、すごく整理してまとめてあって、変な言い方になるけど、読みやすかったよね。
あ、そう? よかった。読んだ人の負担になったらいけないなーとも思ってたし。
―――ちひろちゃん自身が下を向いてるわけじゃなくて、それなりに普通にっていうか、前向きに暮らしてるのが伝わってきたよ。
よかったー。そんなふうに思ってもらえてたらうれしい。
―――「ママじゃな」の基本の質問やけどさ。ちひろちゃんは、自分では、自分の性格ってどういうふうに思ってる?
うーん。わからんねー。わからーーーん・・・。
あ、なんかね、「写真が好きな人」っていうスタンスがちょうどいいんよね。「あー、なんかいつもカメラ持ってる人ね」って見られ方が・・・楽。
―――それは、カメラのコミュニティの中でってこと? それとも、それ以外の場で?
あ、カメラのコミュニティの中ではね、逆に「子どもがいる母です」みたいな(笑)。でも、子供も大きくなっていくのだろうし、これからはね、そういうのなくして、ばーんと一人で立ち振る舞って・・・みたいとも思うけど。
―――確かに、なんか役割とか属性があるほうが楽ってのはあるかもね。何にもなく、裸でポーンといくよりも。
特に、コミュニケーションってとこで考えると楽やね。
―――10代、20代のころとか、考え込むタイプだったりした?
あー、考え込むタイプだったー。自意識過剰なまでに。よくいえば内省的っていうのかな? 悪くいえば、なんかうじうじした人みたいな。
今はね、もうそんなことないよ。写真のことで言ったら、楽しい、って思って、もっと知りたい上手になりたい、って思うけど、時間が少なすぎるやん、大人って。それでもうけっこう割り切って「ちょっと撮らせて!」って言える度胸がついたなあって思う。いいや、おばちゃんだし。おばちゃんっていいよね。楽。
―――なんか、楽なところにいくってことに対して、若い頃はちょっと否定的だった気がするよね。自分にも他人にも。でも、年を重ねてくるとだんだんね。
楽しむことがまず大事だしね。なんかほら、そういう意味では、夫が癌になってからも思ったけど、結局やりたいことが一番体に良かったりするし。あー、いつか死ぬんだな、って思ったら何でもしとこうって思うし。
◆神様が手加減してくれた
―――ダンナさんに癌があるってわかった日、私たち、一緒にいたんよね。たまたまっていうか、一緒にお昼食べようってことになっとって。
そうやったよねー! あのときさ、夫は仕事で私だけが結果聞きに行っていたんよね。もし結果が悪くってがん告知なんかされたらお昼行けんよ、って思っとったけどさ、実際とりあえず行って、スープカレーお代わりしたんよ、私。あれけっこう自信になった!
―――ああー、そうだったんだ。
「あのとき食べれた!」「私、大丈夫!」みたいな(笑)。
―――食べてたよねえ。お腹も大きかったしね。もう臨月でね。
明後日から里帰りします、ってタイミングだったんよね。あのときお代わりできたのが私の心のすごい支えよ。
―――それからすぐ二人目も生まれて一年半以上経ったけど、ちひろちゃんはその間、よく動いてたよね。
写真にしろ、食事にしろ、治療や転院のことにしろ、いつも何かやったり勉強したりしてたし、友だちや園ママともよく遊んでたし。
家族が病気になったとき、そちらにかかりきりになったり、ふさいでおうちに籠もりがちになったりしても全然不思議じゃないと思うんだけど、ちひろちゃんがそうならなかったのは何でと思う?
わー、すごーくいい質問。
それはね、きっと神様が、私の性格を知ってて、手加減してくれて、妊娠・臨月・里帰り・出産のあたりに、告知と手術を重ねてくれたんだと思ってんのよ、ほんとにさ。赤ちゃん生まれてきたら考え込む暇がないほどノンストップやしね。
私、三番目で生まれて、あまっちょろくてさ、誰かが何とかしてくれるみたいな人生やけん、手加減してくれたんやと思うんよ。
―――自分ではそういうふうに思ってるんだね。私は、それだけじゃなくて、やっぱりちひろちゃんの性格的な強さもあるんじゃないかなと思ってた。
うーーーん? 心の中は、夫のことどうしようっていうのと、写真のこともっと勉強したいっていうのと半分半分でせめぎあってて、それもよかったのかもね。
―――あ、写真のこともなくならなかった?
うん。なくならなかった。不思議よね。だから、癌のことも、本はあるけど拾い読みぐらいしかできなくて、ネットで調べたりするのもやめて・・・写真もしたいしインスタも上げたいけんさ(笑)。だから、人に聞いたら早いな、って聞くようになったりして。
―――転院も、幼稚園で聞いてみたのがきっかけだったよね。
そうそう、幼稚園のお母さんたちで持ち寄りの「雑穀の会」があってね、「これを作ってきました」って一人ずつ話すときに、尋ねてみたんだよ。この人たちならここで話しても許してくれるだろうと思って・・・。
―――言ってみれば、シリアスな話だもんね。楽しい会で。
そう。でもとても親身に聞いてもらえて、詳しい人がやっぱりいて、すぐにいろいろ教えてくれたり・・・。本当にありがたい。
―――そうやって、人に聞けたのが本当によかったしすごいと思うよ。それまでに信頼関係ができてたからだし、ちひろちゃんがそういうときでも心を閉ざさずにオープンにできたってことだよね。子育てしてても思うけど、助けを求めることができる力って大事だよね。
いや~もう背水の陣みたいなとこもあったけんね。
◆どうしたら癒してあげられるだろう
―――食事療法のこと勉強して実践したり、すごい愛を感じるよね。お金も時間も費やして、かんたんなことじゃないと思う。
いや~(笑) 自分のためでもあるかもよ~。
―――facebookの投稿に、「どうしたら癒してあげられるだろう」って書いてたのがすごく印象的で。
いや笑っちゃうんだけどさ、なんか、そういうふうに自分が思えたことが興奮するくらいうれしい。
―――あ、自分でもそうなんだ。すごく愛とか母性みたいなの感じたんだよね。
私、三番目でさ、甘えて育ってきたと思うんだよね。好きなようにやらせてもらったし、いるだけでかわいい、自分が幸せなことが両親にとっての幸せみたいな。自分の気持ちが一番大事と思ってわがままに生きてきたからさ。
―――そうやって、いっぱい愛されて大事にされて育ったからできることかもね。自分も、家族に愛情をかけて、大事にできる。
そうだね、しかもさ、今まで夫にもたっぷり見守られて、好き勝手やらせてもらってきたってのもあるかも(笑)。
―――なるほど~やっぱり愛だね~!
◆夫婦ともに、よく眠れます
―――「病気になっても不幸にはならないどこうね」って話したって・・・。
うん、会話的には「不幸とは思わんどこうね」「あ、そうやね」ぐらいだけどね。状況の重大度はいろんなレベルで人それぞれあると思うけど気持ちの持ちようで感じ方は違うと思うんよね。ほら、不幸と思ったら、んー、・・・損じゃん 笑 いや、実際ね免疫学的にも気持ちが落ち込んだら免疫が落ちるわけだし。「幸せー」って思う回数が多い人生のほうがどう考えてもいいしって思って。
―――病気のこととか、生活の仕方を変えるとか、いろいろ話して決めたの?
散歩を始めようとか食生活は私主導なとこが多いんだけどね。
―――ダンナさんのほうで、そういう変化に抵抗感はなかった?
うん、意外にない。もっと抵抗あるかなって思ってたけど。
―――そうなんだね。夫婦で話し合えるのは大事だね。
大切だよね~ほんっとそうだよね。ほんと夫婦の時間ほしいなあと思う。なんか、小さい頃の話とかいっぱいしたりさ。
―――最初にわかったときは、彼は落ち込んでた? やっぱり・・・。
んー。わかりにくいね。ただひとつ言えるのは、不思議とよく寝られる。私もだけどね。
―――ずっと? ちひろちゃん、眠れないことは?
うん、ないよ。写真の作業とか、好きなことしてて寝れないときはあるけど(笑)。
―――手術のあとは3か月ごとに検査があって、毎回検査前は夫婦でとても緊張してるって・・・不安だよね。
うん。自分は不安になるとイライラするってことがわかった(笑)。そのイライラが家族にも向かっちゃうんだよねー。
―――そういうときは、どうしてる?
延長保育を頼んで預けたりするのもいいよね。子どもが子どもらしくいられる場所って大事だなあって思う。
◆きらめいて見える瞬間を
―――自分の写真についてはどう? 「ママじゃな」を始めた頃から比べても、ずいぶん進化したように思うけど。なんか写真のことわかってるみたいなこと言ってるけど私(笑)。
いやいや、言って言って。まだまだ、表現というよりは技術を得始めているっていう時期だけどね。
―――感性みたいなのが爆発するようになった感じがするよ。技術がついたからそう見えるのかな?
あ、そうかもね。たとえば、このコップを撮るにしても、いろんな撮り方に今のほうが気づいてると思う。角度とか光とか、カメラの操作でいろんな表現方法があるなって。
10年くらい前にさ、撮るのやめちゃったときは、どう撮っても同じような写真になっちゃって、光にばっかりこだわってたからかな。そこらへんの反省点も今はわかる。
―――技術的に行き詰まってたから、気持ち的にも行き詰まっちゃったのかもね。
同じ瞬間ってのはないからさ、撮り続けたらもっといい瞬間を切り取れたりするから、そこらへんが進めたらうれしい。
―――ちひろちゃんの写真人生で、写真を撮らなくなってたブランク時期がある、ってのは、案外重要かもね。
ふふふ。なかなか、オツなもんですよ。
(後述:今と昔の自分はきっと違う・・・っていうちょっとした自信も少し出てきたのです。昔はモロかったなぁ~しみじみ 笑 あと、「ありがたみ」や「時間の貴重さ」「続けることの価値」なんかも少しは理解できるようになりました。)
―――写真を撮る人の目ってどんな感じなんだろ。ちひろちゃんの写真もだけど、日常を撮ってるの見ると「あ、こんなに素敵な瞬間があるんだな」って思う。普通の目では見逃しちゃってるような瞬間・・・
写真を趣味にしてる人でも、そうだよー。インスタとか見てると「写真してなかったら、こんな瞬間に気づいてなかったなあ」とかキャプションついてること多いね。ほんとそう。きらめいて見えるよ。
―――撮る前に、もう、ちゃんときらめいて見えてるってことだよね。
そうー。ある意味、冷静な目で見ないと撮れないとこもあるけどね。カメラの設定とか。
―――「これは素敵だな」って見えた通りに撮れるの? 撮ってみてから、「思ったより素敵だった」とかなる?
両方あるんだけど、今Lightroomっていうソフト使ってて、パソコンの中で現像できるんよね。色合いや明るさを調整したり、下半分を少し明るめにぼやかしたり、それを使い始めてからは、そのときの感動を思い出せるように仕上げることができるようになってきた。
―――あー、じゃあやっぱり感動に近づけるように調整してるんだよね。もともと目で見た感動に。それはやっぱり感性の世界だよね。写真やってる人や映画を撮る人とかって、目そのものがファインダーっていうか、みんなとは違うものを見てるんだろうなって感じる。
意外に狭くていいんだよ。写真撮るって。それが面白い。
―――そっかー。目は無意識に広く漠然と見てるからね。
(「へ?ここで撮ったの?」ってくらい小さいスペースで写真が撮れるのも面白い。)
◆光と空のギフト
―――ちひろちゃんは日常の写真をよく撮ってるけど、それって日常を見る目が豊かになって、日常そのものを豊かにしてくれるものかもしれないよね。
うん、ほんとそうなんだよー、めっちゃラッキーって感じ。写真が趣味で。
―――日常がとってもポジティブになるような気がする。
なんかね、光って、どこにでもあるやん。空もそうなんだけど、誰でもその美しさに気づこうと思えば気づけるし、空も見上げようと思えば見れるよね。感じ方はそれぞれだけど、でもだいたい、空はきれいやったら気持ちいいやん?
それはさ、お金持ちでも貧乏でも、ハッピーでも今とても大変でも、厳しい生活をしてる人や戦争がある地域でもさ、みんな平等に見れるやない? ほんと、光って降り注いでてさ。ギフトだなあって思う。
―――ほんとだねえ。そういうことって、昔から思ってた?
いやいや最近。去年の今ごろに思ったんだよね。ほんと平等だなーって。秋は特に光が美しいからね。
ただ、自分が気づかないとね、気づけないんだけどね。
―――ちひろちゃん、前にさ、「そういう日常の美しいものを美しいと感じられなくなったらどうしよう」っていうようなこと書いてたよね。ツイッターだっけ・・・。
あ、うんうん。書いてたっけね。
―――それもわかる気がする。やっぱり、美しいものに気づけない、美しいと感じられなくなるときもきっとあるよね、人生いろんな状況があるから・・・。
でも、やっぱり普段から心がける、っていうとちょっと違うけど、普段から感じるアンテナを立てておくほうが、気づきやすくなるってのはあると思うんだよね。
そう。気づかなくなっちゃうからね。
―――で、写真に撮ると残るから、それがまたいいよね。撮った写真を見返すと、すてきな瞬間を積み重ねて暮らしてるんだ、っていうのが実感できる。私も日記書いててさ、楽しかったことや感動したことをたくさん書くようにしてるんだよね。
そうだねえ。
―――なんか、語り残したことない? これは話しときたい、みたいな。
いやいや(笑)。光と空が平等だなーって話ができてよかった!!
大好きな友だちは、尊敬すべき友だちだった。
と、この2年近くのちひろちゃんを見て思っています。
きっと誰の人生にも、いろんな不安や苦しみに襲われる時期はある。そんな時期にも、美しいものを見て美しさを感じること。毎日の小さないろいろを楽しむこと。ちひろちゃんを見ているとその大切さがわかります。それは、苦しい時期には難しいことですが…。だからこそ普段から大切にしたい。美しいものを感じられる目をひらいておくこと。窓を閉ざさず開けること。外に出て季節の匂いを嗅ぐこと。
路上の花の思わぬ生命力や、眠たげな子どもの顔や、投げ出された赤いタイツ、ビルの上の鱗雲…落ち葉のじゅうたんに伸びる長い影・・・。
この写真たち! ちひろちゃん家族はいつのときも祝福されている。そう思います。それは私たちの家族、私たちの人生も同じ! 光と空はいつもみんなに降り注いでいます。どんなときも。
・・・あら? なんかちょっと、宗教っぽい文章になっちゃってるかしら?(笑) 普段は私たち、他の友人や子どもたちも含めて集まって、美味しいもの食べてご機嫌で飲んだりしながら、他愛ない話をしています。
写真:橘 ちひろ
いや~!ありがとうございます!
なかなか上手く文章でまとめられないでいるのでエミちゃんにまとめてもらって本当嬉しかったです。
本当、エミちゃんって聞き上手の聞き出し上手の汲み取り上手♡
例えば全くしゃべらない相手でも一記事書けちゃうんじゃないかと思います 笑 いや、本当に!
写真はインスタグラムにアップし続けている日々のスナップから抜粋しました。
vol.25 ちほ の 「ママじゃない私」 ポートレート
ちほちゃんはワーキングママ。平日はお仕事なので、土曜日に、おうちにおじゃましましたー。
小学4年生の娘さんに年中さんの息子ちゃん、「ママじゃな」企画コンビの2人、それに子守も兼ねて来てくれた共通の友だち夫婦、それぞれの子どもたちもみんな入り混じっての楽しい持ち寄りランチ! ママじゃな史上、最高に賑やかな中での取材です。
時はハロウィンの季節で、お部屋も素敵に飾りつけしてありましたよ♪ 翌日は別の友人たちを招いてハロウィンパーティするそうで…
◆ハッピーハロウィン♪ パーティ・ピーポゥです。
―――今日もこんなに大人数でおじゃましちゃってるのに、明日もハロウィンパーティなんだね。
ていうか、前に一緒にランチしたときも、「今夜、うちでWiiパーティなんだ」って言ってなかった? もしかしてパーティ好き?
パーティ・ピーポゥなんです(笑)。いや、私、飲むのすごい好きだからさ。
―――あ、そうか。じゃ、子どもを遊ばせつつ・・・ってことね。
外のお店とかだと、子どもたち一緒だとゆっくりできないから。
―――そうだよね。結局、おうちパーティが楽なんだよね。
で、私、なんか今日、服もパンプキンカラーなんだけど。(カーディガン)着てたほうがいいですか? 脱いだほうが?
――(ちひろ)どちらでも。どちらも明るい色で素敵です♪
(これまでのポートレート記事を)見てると、皆さんけっこうシンプルな服装だよね。
―――おうちでの撮影が多いからかな? 部屋着、とまではいかなくても、家で動きやすい感じの・・・。
◆別居婚のち遠距離通勤、早産、そして東京生活
―――卒業してからのヒストリーを、簡単に教えてもらえる?
えーっとね、大学を卒業して、縁あって、大分県で公務員になりました。
―――具体的にはどういうお仕事?
福祉関係だね。妊娠したのが31か2だから、まあそれぐらいまで。
―――あ、じゃ、結婚も大分で?
大分に住んでるときなんだけど、えっとね、ダンナは大学時代の後輩だけど、彼は一般の会社員になって、福岡に勤めてたの、そのとき。だから最初は別居婚。
―――別居婚。ほう。
最初、大分と福岡で1年くらい別居してて、2年目からは北九州で一緒に住んで、夫は新幹線で福岡に通って、私は鈍行で中津に。
―――日豊本線ね。けっこう遠いよね?
鈍行で1時間。でも北九州の家は、駅のすぐ隣って感じだったからね。で、夫が東京に転勤になって、私は妊娠中で、中津に一人で職員住宅に住んでて。
産休に入るつもりだったんだけど、妊娠6か月くらいで切迫早産になって、結局8か月で出産。
―――わあ。そうだったんだ。大変だったね。
遠距離だし、あっち行ったりこっち行ったり、仕事も出張も多いしね・・・って感じでいろいろ心配なこともあったから、結局辞めたの。小さく生まれたから少し大きくなるまで実家にいて、それから東京に行って、専業主婦生活が2年くらいかな。で、娘が2歳半くらいでまた福岡に戻ってきて。
―――また、ご主人が転勤になられて。
そう。それで、娘が3才になったときに、また仕事を始めた。と同時に、娘は幼稚園。
―――あ、幼稚園。保育園でなく。
休職中は保育園って入れないし、年度の途中だったから入りにくいから、延長保育が充実してる幼稚園を探してね。
―――それが、今の仕事?
そう。だからもう、長いんだよね。福岡市の嘱託です。
―――やっぱり、また福祉系のお仕事ね。
そう。役所って勝手がわかるから、そういう意味ではやりやすくてね。
◆効率的・・・というより雑なんです(笑)
―――ちほちゃんてすごくしっかりした人に見られる気がするけど。
あー、そうかもね。第一印象ではね。
―――実際しっかりしてるんじゃない? たとえば仕事してて、ダンナさんは今、単身赴任。すごく忙しいと思うけど、時間のやりくりとか家事とか、合理的に効率的にやれてる感じ。
それはねぇ。やりくりしてるといえばそうなんだけど・・・雑なの(笑)。
―――そうなん?(笑) 家、めっちゃ綺麗やん。
いやいや、普段はこのカウンターやテーブルもね、プリントもあり、あんなのもこんなのもありで、カオス状態(笑)。月曜からスタートして、向こう側からこっちへだんだんモノが侵略してきて・・・
―――わかる! 金曜日にこっちがわまで来たのを、土日にまたがんばって向こうへ戻して、でまた月曜からだんだん潮が満ちるように・・・
だいたいね、ばっちぃのあんまり気にならない。たとえばね、食べこぼしがあって、その上にお茶碗置いて食べても全然大丈夫。
―――おーっ(笑)。それは、もともと? 子ども産んで忙しくなったからじゃなく?
もともと。母親になってから、子どもの教育上、あんまり良くないなと思って、心がけるんだけど、途中でどうでもよくなって(笑)。
だいたい、土日のほうが疲れちゃうわけよ、パーティしたりなんたりで(笑)。けっこう予定も詰め込む。習い事もあって、バスで行くときは朝7時半に家を出たり。
―――もう、出勤と同じやん、それ。
そう。そんなんでいろいろしてたら、月曜からすでにすごい汚い。
―――取り戻せないまま週明けになっちゃうんやね。
で、月曜になったら「もういっか」ってなる。
―――あはははは(笑)
月曜だからしょうがない、って。
―――(笑) いやでも、平日働いて、土日にもいろいろ活動できるって、体力あるよね!
そんなことないと思うんだけど。効率的っていうか、ちゃんとしないで寝ちゃうから。
―――平日も早く寝る?
うん。けっこう早寝早起き。
―――あ、そうなんだー。どれくらいのレベルで早寝早起き?
9時半とか。今はね、子どもたちが先に自分たちで寝てくれるようになったから、ちょっと遅くなってるけど。
―――あ、早い! てか、仕事から帰ってそれまでに片付くのがすごいね。
でも雑(笑)。
―――いや、いくら雑と言っても、ごはん食べさせて片づけてお風呂入れて、洗濯ものだって毎日あるやろ。
まあ、乾燥機が全部やってくれるから。食洗機もルンバもあるし。
―――おお、働く主婦の三種の神器! 朝は何時に起きる?
5時。だんだん冬になると、少し遅くなるけどね。
―――すばらしー! 子どもが起きるまで何してる?
うーん、ボーッとしてる。
―――えっ。
自分の時間というには少ないからね。ボーッとしてたらすぐ6時。
―――ほんとにボーッとしてるの?(笑)
うーん。片づけたりとかね。
◆睡眠大事。何をさしおいても寝る!
―――ともかく、9時半とかに寝て5時に起きるなら、睡眠不足ではないね。
睡眠はすっごく大事にしてる。私すごく雑なんだけど、本当はそれなりに丁寧な暮らしをしたいの。でも、疲れると、どんどん雑になる。
―――わかるわかる。
ま、日常生活は、正直、雑でもまぁいっか、ってとこもあるんだけど(笑)、仕事のほうで集中力が落ちて来るんだよね、疲れると。文字の間違いとか、つまらないミスが増えたり、仕事で話をしていても、なんかこう、ピリッとこなくなる。それが困るから、何をさしおいても寝るようにしてる。昼寝もしてる。
―――あ、昼寝って職場で?
そう、ごはん食べたあと、空き部屋で5分、10分ね。寝て、少しでも雑にならないようにしてる。仕事ではね。
―――仕事は面白い?
うん、やりがいはあるね。
―――福祉系のお仕事で、前向きにウキウキするようなお仕事じゃないよね?
そうね・・・。でも、深いというか。いろいろな方に会って話をするけど、そのたびに学ぶことがあるし、考えさせられるよ。
―――仕事をしてる良さって何だと思う?
それはなんたって、言い訳をできることだよ。仕事では「子育てが大変」って言って、ママ友には「仕事が忙しくてさ」って(笑)。
―――ああー(笑)。
専業主婦だったら、ある程度、主婦クオリティを求められる気がする。いや、人がどう思うかは別にして、自分がそう思っちゃうのかな。日曜の昼はラーメンでいいやとか、思えないんじゃないかな。いや、私なら思うか(笑)。
―――社会とつながっていたい、みたいな気持ちってある?
あるある。ずっと子育てっていうのも、よだきいしね。“よだきい”って方言だけど。でも、エミちゃんとかの話を聞いてると、幼稚園の帰りに遊ばせたりとか、そういうのはいいなーと思う。
―――見られるもんね、子どもの様子が。
見られるし、楽しいよね。
―――仕事でストレスはないの?
もうお局様だからさ(笑)。
―――ちょ、まさか、ストレス与えてるほうじゃなかろうね、周りに(笑)。
与えてるほうだと思うよ(笑)。与えてるほうはもう、しょうがない、あきらめてもらうしかないね(笑)。
―――割り切るなあ!(笑)
※あ。お仕事に関して。ちほちゃんに、とても良いページを教えてもらいました。
“社会福祉にかかわる相談者の基本7原則” ですが、
「クライエントの感情表現の自由を認める」
「決して頭から否定せず、どうしてそういう考え方になるかを理解する」
「善悪を判じない。カテゴライズしない」「自らの行動を決定するのはクライエント自身」
・・・・など、我が子や家族、周囲の人々、そして自分との向き合い方でも大事な視点だと思ったので、興味のある人はご参照くださーい。
◆よく喋る。夫も子どもも、よく喋る。
私ね、「ママじゃな」に出ようと思ったひとつにはね、写真を撮ってもらおうかなと思ったのよ。大学時代の友だちと久しぶりに会って、レストランで一緒に写真を撮ったら、二の腕が衝撃的でさ。
―――あ・・・なんかちょっと、年齢を感じた、みたいな?
年齢が出てた! あれけっこうショックだった。なんか、私の41才の写真がこの1枚だけって、あまりに悲しすぎると思って(笑)。
――(ちひろ)人が実際に見てる以上に、どうしてか写真には年齢がもっと強調されることがあるから、あんまり気にしなくていいと思いますよ♪
―――そうそう、今日は綺麗に撮れますよ~♪ 今日の写真は、ダンナさんには見せる?
いや~。見せないかなあ。言ってないもんね、今日の(取材の)こと。
―――ちほちゃんはさ、ダンナさんとはよく喋るほう?
めっちゃ喋る。
―――あ、そうなんだー。いいことだよね。ダンナさんもよく喋るの?
喋る。子どもたちもよく喋る。もう~~、よく喋る。
―――よく喋る家族(笑)。いいね。ダンナさんとどんな話する?・・・って聞かれても困るだろうけど。
もう、どうでもいいようなことっていうか、子どもの話とか、お金の話とか(笑)。何でも話す。仕事の内容とかはね、あんまり話さないけど、今日職場でこんなことあったとか。
―――聞いてくれるんやね?
聞いてくれる聞いてくれる。
―――じゃあ今さ、ダンナさん単身赴任であまり喋れないのは、慣れた?
うん。それはそれで。ま、電話で話したりもするし、話さないからストレスが・・・とかってのはないね。職場でもずっと喋ってるし。職場の話をママ友にすると、「あんた仕事してるの?」て言われるくらい(笑)。
(ほら!ママを笑わせて~! ・・・七五三撮影の逆バージョンみたい 笑)
◆40代、「ホットなママ時代」が終わったあとで
―――40代になったら楽になった、っていうか、感覚が変わったみたいなこと言ってたよね。30代までは人と比べてちゃんとしなきゃみたいなのがあったけど・・・だっけ?
そうそう。もう出し尽くしたからね、40代は自分にあるものでやってくしかない。
―――周りと比べる感覚はなくなってくるよね、だんだん。
娘が小4だけどさ、もう子どもによってほんとそれぞれになってきてるもんね。
中学受験する子はそろそろ塾に入って受験対策し始めるし、本格的にスポーツしてる子は週4,5回やってたり。小さい頃は、みんなと同じ感覚でスイミングしたり、とかあったけど。
―――そだねー。でも、下の息子ちゃんは、まだ小さいよね、年中さんだから。
それでも、ママとして一番ホットな時期は過ぎた気がする。もっと小さいころはさ、子どもがどういうこと考えてるか、見てたらだいたいわかった。でも今は聞かなきゃわかんないよね。
―――そうだね。もうしっかり、いっちょまえの人格があるもんね。
あとやっぱり、現実的に時間かなー。「お風呂に入って寝なさい」って言ったらできるから。
―――子どもはどんどん大きくなっていくけど、たとえばあと3年後とか5年後とか、どうなってると思う?
あー、たぶん全然変わんないと思う。
―――あ、そう? 時間の使い方とか変わらない?
たとえばさ、子どもが小さい頃ってもっとやることいっぱいあったやん。お尻拭いてあげたり着替えさせたり・・・。そんな手間はもうなくなったけど、だからといって今、私の時間が増えたかといえばそうじゃないわけよ。
―――確かにそうやね。
だから、そういう時間がだんだん拡大していくだけで、やってる感じとか忙しさはあんまり変わらないんじゃないかと思うけど。
―――子どもが大きくなったらこれ始めようとか、あったりしない?
あー、私ね、習いごとマニア(笑)。
―――そうなんだ!(笑)
なんか、教えてもらったり、話を聞いたりするのが面白い。でも、ほんとにまったくの一人時間がないとできないよね。家族といるときは家族の時間にしないともったいないから。実は私、焦る~って気持ちもある。「子どもを何をし尽くすか?!」みたいな。遊ばなきゃ、って。
――(ちひろ)いいですね、なんか(笑)。ギラギラ。
――― いっしょに遊べるうちに、てことね。中学生になると部活とかもあったりするし・・・。
そうなのよ!
―――ちほちゃんは、なんか、今を生きてるって感じやね。物事を深刻に考え過ぎたり先のことをうじうじ心配したりしないような・・・。
あー、そう。なんか、アホみたいやね(笑)。特に、人と話すと、そういうところが出ると思う。
―――あんまり悩みを人に相談するとか愚痴るとかもなさそう。
どうかなー。あんまり不満とかもないねぇ。いや、日々、小さくイラッとすることはそりゃあるけど、でも、大きく言うと特にないかな。
―――いいことだよね。あんまり、ナーバスになりすぎない力って大事、生きやすさにつながる気がする。
そうねー。私は「楽に生きてる」って言われる。
―――あ、やっぱ言われる? それって、性分なのかな。もともとの性格…。
性分だと思う。血。みんな、ストレスを受け取るほうじゃなく与えるほうね(笑)。
―――(笑) いや良い性分ですよ(笑)。
(おわり。)
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(土曜の昼下がりフル子連れで挑む取材、友人夫婦の最強(!)シッターさんのおかげで楽しくスムーズに終了しました。スペシャルサンクスです。写真はF氏がマジックを披露しているところ。写っていないけどもう二人こどもがいるのです。にぎやか~! 笑)
【編集後記】
インタビュー:イノウエ エミ
わーわー! 私も雑な星の住人なので、雑なお話のあたり、あるあるの嵐でした。そう、片づけても片づけても、どこからともなく机上にわいてくる書類やら小物やらゴミたち・・・(捨てろよ)
でも、同じく雑だといっても、ぐうたらな雑星人の私と違い、ちほちゃんはアクティブ! 人生いろいろ、雑にもいろいろ。
「ストレスを与えるほう」なんて、ほんとはそんなことなくて、ちほちゃんは周りも楽にさせる人じゃないかな。明るくて楽しくてさばけてて、裏表がないな、とすぐわかる。信頼させてくれる懐の深さを感じます。ちほちゃんと話してて、私がもらってるのは元気だと思います。
ふだんは幼稚園のママなど、自分と似たパターンで生活している人と会うことが多いので、仕事をしてる女性の話を聞くと、いろいろな違いも感じ、面白く、刺激的です。楽しいお話ありがとう。そしてさすがパーティ・ピーポゥ、ホストもスピーディで自然体! 子どもともどもくつろいじゃいましたー。
写真:橘ちひろ
一枚目の写真は自分の「いい!」と思った感覚を信じて、思い切ってこの写真にしましたよ。初のストロボ使用です。
うん、やっぱり好き♡
ちほさんはおしゃべりが上手で表情も豊か、きっとお仕事もバリバリとされているのだろうなぁと、想像するとうっとりします(^_-)-☆
でも正面切っての撮影は案外照れ照れでかわいらしかったです。そして古くからの友人まきちゃんとおしゃべりしているカットはとても柔らかい表情でドキッとしました。このときもっと撮っておけばよかったなぁ。こんな表情も引き出せるようになりたいです。
インタビューでは「ホットな子育て期が終わってきている」と感じられているようで、そのあたりを冷静なのに熱く、でも気負わず捉えているのがいいなぁと思いました。今自分はたぶんホットな子育て時期なのですが(下の子が1歳男児)自分のこれからの事を考えては焦り、反面、子供が手を離れていくことを思えば焦り・・・という感じです。こうやっていろんな方のお話を聞いているととても参考になります。
取材を受けていただいて、本当にありがとうございました~!
特別編:デンマーク研修レポート(下)私たちも変われるかもしれない
前の記事、 「特別編:デンマーク研修レポート(上)デンマークってどんな国?」の続きです。
茉莉ちゃんのレポートで、もっとも驚き、また印象深かったのは、
デンマークは4時には既に帰宅ラッシュで、
5時ごろには家族が帰宅し、そろって夕食を食べるのがあたりまえ
ということでした。
自動車税が高いこともあり、コペンハーゲンでの主な移動手段は自転車。
専用の自転車道が整備され、子どもを乗せる前カゴ(デンマークは寒いのですっぽりと覆うボックス仕様)つきの三輪自転車で通勤する男性も多いそう。
(コペンハーゲンの通勤ラッシュ)
(カメラを向けると恥ずかしがって顔を背けた子を見て茉莉ちゃん、うちの子と同じだなーと思ったそうです)
報告会に同席されていた、福岡ジェンダー研究所理事の倉富史枝さんが
「男女共同参画の問題に長年取り組んできたけれど、結局は労働問題に帰するように思います」
とおっしゃっていたとおりですね。
保育所や教育やシングル家庭・・・いろいろな問題がありますが、
結局は、働く環境や働き方が変わらなければどうしようもないよね、って話なんだよな。
◆
さて、わたくし。
この「ママじゃない私、ポートレート」を2年半やってきて、
特別編も含めれば、25人以上の方々にインタビューさせてもらいました。
始めたきっかけは、
「子どもを産むと、「○○ちゃんのママ」と認識され、呼び合うこともあるけど、
一人一人のお母さんにはそれぞれの個性や生活があって、
年齢も出身地も趣味も性格も、学生時代や独身時代にやってきたことも、全然違う。
そういう姿を写して、話してもらったら面白いんじゃないかな。」
という気持ちからでした。
多様性を描き出す企画にしたかったんです。
実際に、多様性、出てるよねって思います。
色とりどりのパレットのように。
いろんな人に話を聞けば聞くほど、いろんな人がいて、いろんな人生があるなーと思います。
けれど最近、同時に、
人々はこんなに多様性に富んでいるのに、社会の枠組みはとても窮屈で強固なものだな、
とも思うのです。
結婚や出産で仕事を辞めている人が本当に多い。
将来的にも、家庭との両立を考えるとやっぱりパートタイマーかな、とか。
ええ、企画者である私やちひろちゃんからして、そうなのです。
私自身もそうですが、専業主婦であることを本人が不満に思っているわけじゃない。
「もともと大した仕事をしていなかったし、仕事の能力が高い人間じゃないし。」
・・・と、多くの人が言います。
でも、家事や育児にだって、
段取りや忍耐力、対応力やコミュニケーション力など、
かなりマルチな能力が必要ですよね。
そのうえ、PTAなど煩瑣な「お仕事」を立派にこなすママたちもたくさんいます。
茉莉ちゃんのレポートで興味深い話がありました。
就職の面接の場面での実験。
「男性と女性が、まったく同じ履歴書を持ち、まったく同じ発言をする。
面接官の反応は男女で全く違って、
男性と同じように振る舞う女性は傲慢で売り込みすぎだと評価され、
採用は男性に決まる。」
うわー、現実にありそう!
学校を出て就職する段階で、
男性と女性は既に、はっきりと区別されているんですよね。
女性に割り当てられるのは、補助的な仕事だったり。
女性のほうもそれが当たり前だと思っていて、
能力があっても、目立つのを避けて遠慮しがちだったりする。
そして、結婚し、出産し、職場を去る。
持てる能力を発揮できる機会がないままの人も多いんじゃないかな。
「私は専業主婦でいい。外の仕事より家の中の仕事の方が好きだし、
子供の成長をじっくり見ることができる」
という意見もあり、これまた私もそうなんですが
(いや、別に家の中の仕事が好きなわけでもないな…←ものぐさ人間)、
それが女性の特権のようになっている社会の実態はどうなんだろう?とも思うのです。
男性の、いわゆる専業主夫の人もいるでしょうが、女性に比べると、きっと肩身が狭い思いをすることも多いじゃないかな。
私自身、「ママじゃな」みたいな企画をやったり、
子どもの幼稚園の行事や放課後の時間にかかわる時間は楽しいものですが、
その分、私の夫が外で働いていて、つまり夫には、そんな時間も機会もずーっと少ないわけですよね。
なんかごめん・・・って気分にもなります。
だって、子どもが小さくてかわいいのは、人生の中ではわずかな期間なのに。
夫も妻も両方が、家事にも育児にも仕事にも、半分半分くらいでかかわれたらいいなと思います。
いや、人には向き・不向きがあるから、必ずしも半々じゃなくてもいいけど、
男性は外働きが当たり前だよね・・・家族の世話は女性メインの仕事だよね・・・みたいなのが暗黙の了解のように共有されるんじゃなくて、
個々の家族、それぞれの希望が叶いやすい社会だといいなー、と。
実際は、ママじゃな のインタビューで聞いていても、周囲の知人友人を見ていても、
仕事をしている・していないにかかわらず、
家事や育児の作業の大部分を妻のほうが担っている夫婦がとても多い。
残業や休日出勤が多いダンナさんもたくさんいます。
そして、それをみんな「しょうがない」「当たり前」だと思っている。
多かれ少なかれ、みんなそういう中でがんばってるんだから。
もう慣れてるから。
夫に仕事があるだけ有難い世の中だから、と。
たまたま夫の理解や協力が得られている女性は、「私はラッキー」「恵まれている」と言う。
もちろん、受け容れざるを得ない現実があるわけです。
夫(自分)の職場の環境なんて、変えられないし。
とにかく夫がいなかろうが何だろうが、家事育児を回さなきゃいけない。
毎日忙しくて、あれこれ考えるヒマも余裕もないですよね。
でも、個人の生まれや育ち、性格や価値観はこんなに違うのに、
この社会のあり方への態度は、驚くほど共通しているんだなあと、考えてみれば不思議です。
ある意味、子どもの頃から、「それが普通だ」と刷り込まれているのですよね。
だから、茉莉ちゃんのデンマーク報告がとても響きました。
4時に帰宅ラッシュ。家族そろっての夕食。休日。
保育所が足りないなんてことはない。
教育費と医療費が無料。
そんな社会も存在してるんです。
私たちは、それを望んでいいんだと思いました。
しかも、それは、デンマークの伝統的風景ではありません。
人々の願いが結びついて、この数十年間で実現してきたことなのです。
倉富さんは、
「家族が愛情を持てる社会づくり」とおっしゃっていました。
家族だから愛し合い助け合うのが当たり前なんじゃない。
保育や医療、介護の環境が充実していて、家庭の中で何もかもを背負わなくていいから、家族が仲良くいられるのだ、と。
子どもたちが子育てをするときには、
変わっていってほしいなと思います。
これは、分不相応で贅沢な願いじゃないはずだ。
私たちが「今のままでいい、しょうがない」と思っていれば、
子どもたちの時代にも、変わらないでしょう。
変えていきたいんだと思って、
そういう目で政治を見つめ、参加していきたいなあ。
政治参加って大ごとのような気がするけど、
茉莉ちゃんも言ってました。
「専業主婦の私が、こんな研修に参加していいのかなと思った、実際に専業主婦は私だけだった。でも、本当はそれが政治参加だし、男女共同参画」
広い世界を知ることって大事ですね。
地に足のついた生活は大事だけど、身の回りだけを見ていると、どうしても固定観念にとらわれてしまいます。
知ることが、第一歩。
そう思いながら、新しい年齢を始めたのでした。
・・・そうっ! この日、私の誕生日だったんです!!
またひとつ大人になったとですたい。
長い文章を読んでくださった方がいたら、ありがとうございました。
茉莉ちゃんにも、報告会に携わった皆さまにも、ありがとうございます。
特別編:デンマーク研修レポート(上)デンマークってどんな国?
こんにちは、秋ですね~! さつま芋大好き、エミです。
ポートレートの vol.17 に登場してもらった 稲生茉莉子ちゃん が、デンマーク研修の報告会を開いたので参加してきました。
幼稚園のママ友として知り合って、園で毎日のように会ってる彼女が、町の「男女共同参画推進センター」で何十人もの聴衆を前に立派に報告する姿に感動でしたよぉ。
本人は事前に「テンパり倒してどうなるかわからない」的なことを言っていましたが、何をおっしゃるうさぎさん!(古)
はっきりとわかりやすく、なおかつ気負わない自然体のお話ぶりはとても聞きやすく、内容は豊富で、とても実りある時間でした。ありがとう。
興味深く感じる人もきっと多いと思うので、1時間にも及ぶ茉莉ちゃんの発表のうちのほんの一部になりますが、ここでシェアさせてもらいますね。
(司会の方に紹介されている間、はにかんでいる茉莉ちゃん。)
◆
茉莉ちゃんが参加したのは、福岡県が実施している海外研修事業「女性の翼」です。
男女共同参画社会づくりを推進するために行われていて、行き先は毎年違うらしく、2015年度はデンマークに一週間。
20人ほどの研修団員の中で、専業主婦は彼女だけだったそうです。
(しかもこのとき、まりちゃんは3人目の赤ちゃんを妊娠中でした。悩んだけれど、安定期だったし、周囲の励ましやサポートに背中を押されて飛び立ったそうです!)
デンマークは九州とほぼ同じ大きさ、人口は約566万人で福岡県とあまり変わりませんね。
国会は一院制で179議席、任期4年。議員の平均年齢は45歳。
投票率は、なんと86%!
一期のみ務める人も多いそうなのですが、これには理由があって、
職場に休暇を申請して議員になる場合も多いからなのだそうです。
さらに、地方議員については報酬は時給制(議会の開会期間中など)。
多くの議員は自分の仕事を続けながら、夕方から開催される議会等に出席して務めます。
それでいて、インフラや教育など地方議会の裁量で行われることは非常に多いそうです。
国民一人当たりのGDPは 52,114 USドル、世界8位。
(ちなみに日本は 34,870 USドル、世界26位です。ともに2015年、IMFのデータより)
(日本って…生産性高くない国なんですね…)
(レゴ発祥の地でもあります!)
女性の参政権が認められたのは1915年(日本は戦後、1945年ですね。)
出産育児休暇の取得や選択的夫婦別姓の権利、男女平等推進大臣の選出など、
だいたい日本の20~30年先を常に走っているイメージですね。
所得税率は55%、消費税率は25%と非常に高いのですが、国民幸福度は世界一!
「税金は国民に還元されている」という意識が強いのだそうです。
これはつまり、
「税金は無駄なく使わなければ」
という意識にもつながっていて、
たとえば医療費は無料だけれど、医者は風邪薬はほとんど出さない。
歯科治療は18才以上は有料。(逆に、子どもは校内にある診療所で虫歯治療をする!)
胃のポリープ除去の手術や、胃ろうはしない。
など・・・。
そういったことに税金を使うより、教育や福祉に使おうという感覚が共有されているそう。
だから、子どもの相対的貧困率は世界一低い。
4%ですってよ、奥さん。
日本は、今や6人に1人の子どもが貧困状態にあるといいますよね…。ひとり親家庭の貧困率は、実に50.8%。
離婚率は、デンマークのほうがずっと高いんですよ。
女性の就労率の高さと医療費・教育費無料によって、貧困に陥る家庭が少ないそうです。
◆
茉莉ちゃんたち研修団員たちは、男女共同参画を推進する公的機関や、民間団体、
ワークライフバランスに取り組んでいるデンマークの大企業などを訪問。
それらのレポートの中で私にとってとりわけ印象深かったのは、
1.デンマークでは、市民の社会参加・政治参加が特別なことではない!
前述した、兼業しながらの地方議員たちもそうだし、
移民や難民など外国人女性のメンター(指導・相談員)を務める女性たちもボランティア。
公的機関「KVINFO」には3,000人ものメンターが登録しているそうです。
茉莉ちゃんも言っていましたが、
こういうことができるのは、助け合いの意識があるのも当然ながら、
仕事をしながら社会参加できる時間的・精神的余裕があるからですよね。
2.デンマークでは、選挙活動がスマート!
デンマークでは大きな音を出す選挙活動は禁止されているそうです。
日本でおなじみの、うるさくがなりたてたり、妙な歌を流す街宣カーなんて、どこにもない世界なのです!
民間団体「Women's Council」では、 女性議員を増やすことでよりよい社会を作ろうという信念のもと、政党にかかわりなく女性立候補者を支援する取り組みを行っているとのこと。
彼女たちが行った選挙支援活動は、「ウォーキング&トーキング」
ショッピングモールで花を配ったり、
カフェでお茶を提供して市民と話したり、
メディア関係者を招いてボウリング大会をひらいたり。
ああ、静かな選挙。うらやましい。
3.デンマークはカジュアル&おしゃれ!
街並みはもちろん、
「男女共同参画センター」のような固い機関や、性暴力被害者のシェルターのような場所*1も、
美しく洗練され、かつ暖かみのある外装・内装。
どの研修先でも、手作りのお菓子やハーブティなどで心づくしのおもてなしを受けたそうです。
トイレが日本より綺麗かも、という話にはびっくり!
研修先で出会った女性たちも、皆さんおしゃれな装いで明るく働いていて、
要職にある方がワンピースとスニーカーというカジュアルな恰好で応対していたり、
妊娠中の若い女性職員が堂々と視察団への説明を行ったり。
・・・長くなってきたので、次の記事に続きます。
>>次の記事:デンマーク研修レポート(下)私たちも変われるかもしれない
*1:オープンスペースのみの観覧
vol.24 おかじぃ の 「ママじゃない私」 ポートレート
1歳の息子ちゃんのママ、おかじぃ。私(インタビュアー・エミ)は会うの3回目くらいかな?
はじめ「ママじゃな」に出てみませんか~!とお誘いしたとき、「えっ、私、何も話せること…」っていう素振りもあったんだけど、「考えてみたらこんな機会なかなかないし」と引き受けてくれました!
お話聞いてみるとホントに面白くて、いつもながら「何もないなんて人はいない!!」と世界の中心で叫びたくなる私です。そして、おかじぃったら料理がとっても上手…☆
◆宮崎出身、三姉妹の末っ子です
―――お姉さんたちと、割と年が離れてますよね。
上が9歳差、下が6歳差です。
―――それで、「生意気な子だった」ってアンケートに書いてあったけど、生意気ってどんな感じだろ。
「関係ないじゃん」とか言ったり。保育園生で(笑)。
―――(ちひろ)いるいる、そういう子(笑)。
姉の影響でそういうこといろいろ言ってたんですよね。
―――私も姉と5才差だから、わかります。真似するんだよね何でも。お姉さんたちにはすごくかわいがられてたんじゃない?
いやー、けっこういじめられてましたよー(笑)。
―――あら。じゃ、鍛えられたのかな。同年代の中では強かった?
あー、そうですね。口喧嘩では勝てない、みたいに言われたりして。小学6年のとき、班替えのあと廊下を歩いてたら、「私、○○さんと一緒の班になっちゃった」っていう声が聞こえてきて、「あ、やばい。私嫌われてる」って思って、それから変わりましたね。人の目を気にするようになりました。
―――おかじぃが悪かったかどうかは別にして、それ聞いちゃったのはけっこう大きな出来事ですね。
自分が言ったことはすぐ忘れちゃうけど、言われたことってずっと覚えてるんだろうなって思って。ひどいこと言っちゃったのかな、って。
―――自分が変わったことで、周りも変わった感じはありました?
中学生になって、友だちの顔ぶれが変わった気がしますね。それから仲が良い子は、ずーっといいですね。
―――親御さんはどうでした? 末っ子って、親にとってはいつまでも一番小さいかわいい子だと思うけど。
親はかわいがってたんだろうと思います。姉たちも、親が私にだけは甘い、みたいなこと言ってましたね。でも、私は厳しいと思ってました。母は特に。
―――厳しいってのはどういう方向で? しつけとか?
そうですね。高校の時にストレートパーマが流行って、みんなやってるから私もこっそりかけたんですよ、お小遣いちょっと足して。そしたら、母がはさみを持って追いかけてきた。
―――えーーっ!
「パーマかけて学校に行くなんて! そんな子に育てた覚えはない!」って(笑)。
―――(ちひろ)ストパなんだけどね(笑)。
そう(笑)。「とってきなさい!」って言われて泣く泣く行ったけど、「え? ストパをとる?」って感じで。
―――むしろ、巻くしかなくない?みたいな(笑)。
結局、ベリーショートぐらいに切って許しを得ました(笑)。
◆初めて自分で選んだ王子さま(笑)
―――中学時代は小沢健二一色だった、とのことだけど、私も小沢くん大好きなので、ここはぜひとも聞いときたい! アルバム『LIFE』が私の高校時代だから、そのころおかじぃが中学生だよね。
そうですね。中学1年か2年のとき、友だちがカラオケで「それはちょっと」を歌ったんですよ。
―――ほうほう!
―――(ちひろ)すごいね!!
「あ、何この歌、すごくいい~」と思って。あの歌、カップリングじゃないですか。で、そのシングルを買ってきて、両面聞いたときに、「なんていいんだ!」と思って、それからバーッと買いそろえていって。
―――うんうんうん。
それからずっと好きでしたね。
―――なんか、それまで聞いてた歌と違うよね。たぶん。
ですね。それまでは、米米CLUBとか聞いてたから。姉が好きだったので。
―――わかる! うちの姉もそうだった!!
ずっと姉の影響が大きくて、だから初めて好きになったアーティストっていうか。
―――初めて自分で選んだんだね。
そうですそうです。それがオザケン。
―――本人のことも好きでした? 「おざわくーん!(ハート)」って。
うんうん、王子さまって・・・(笑)。
(おかじぃ・エミ同時に) 「子猫ちゃんになりたーい!」 (笑笑笑)
―――小沢くんは何年かでパッタリ表舞台から姿を消しちゃったけど、そのあとはどんな音楽聞いてた?
えーっと、高校まではずっとオザケン一色で、そのあと就職してからGLAYになって。
―――おーっ、また何か変わったね。オザケンからそこにいくとは、なかなか意外な(笑)。
JIROちゃんが好きだったんですよ。
―――あー、ちょっとかわいい系の。
そう。だからちょっとつながってたのかな。
―――すごく流行ってたよね。当時。
北九のGLAY EXPOとか行って、えらいハマってましたね。
◆18才、放たれた鳥!
―――高校出て就職して、それが・・・。
福岡です。
―――わーっ。すごいねー。
―――(ちひろ)すごい!
―――18才で宮崎から福岡に出てくることには、全然抵抗なかった?
まったくなかったです。早く出たくて。
―――抵抗どころか、むしろ出たかったんだ。
周りを変えたいって思ったんですよ。何か違うコミュニティの中で暮らしたい、全然自分を知ってる人がいないところに行きたいと思って。
―――親御さんは、福岡でもどこでもいいよ、って感じでした?
配属されたならしょうがないねというか。割と堅い職種の、しっかりした会社だったし。
―――じゃ、もう、最初から一人暮らしですか?
そうです。
―――すごいねえ。でも楽しいよね~
楽しかったーーー!!
―――うきうきするよねー。初めての一人暮らし。
何やっても自由だ―!と思って。
―――でも、ちょっと里心ついて、淋しくなったこととかなかったですか?
いや全然。もう、放たれた鳥のように。ピュー!って。
―――のびのび(笑)。仕事も全然大丈夫だった?
仕事は大変だったですね。覚えること多かったし、ちょこちょこ変わるし。でもそれより、アフター5楽しかったなー、てことしか、ほぼ記憶にないです。
―――最初っからお酒が強かったの?
なんかそうだったみたいですね(笑)。
―――そんなにも飲むって知らんかったよ。飲み会好きって、誰とそんなにしょっちゅう飲んでたの?
うーん、自分の友だちとかもあり、会社もあり・・・
―――飲むのが好きなん? それとも飲み会の「会」的なのが好きなん?
なんだろう(笑)。テンション高くなって騒ぐのも好きだったかな(笑)。楽しかった。飲み会はいっつも、必ず最後までいましたね。
◆料理人生の原風景
―――お料理はいつからしてたんですか?
かなり前からですね。うちの両親は共働きで・・・最初に作ったのは、きゅうりを使った料理だったんですよ。小学1年か2年だったと思うんですけど、土曜日の午前中授業の日に。
火を使っちゃダメといわれてたから、扱えそうなのがきゅうりしかなかったんです。そのとき私きゅうり苦手だったんですけど(笑)。
―――苦手なもの使ってでも料理してみたいと思ったんだね。
みじん切りにしてみたり、長いままとか3,4品・・・切っただけですけどね(笑)。しょうゆをかけてみたりとか。で、母が仕事から帰ってくる時間に合わせて、陽のあたるところにアイロン台を出して、並べて、2人で食べた記憶があります。
―――アイロン台を、陽のあたるところに。
台がないなーと思って。食卓じゃなくて、家の中でいちばん陽があたるところに、なぜか持って行って。
―――なんか、思い浮かべてみると、すごくあったかい、いい光景だね。
全部きゅうりなんですけどね(笑)。
―――でもお母さんすごーく喜んでたんじゃない?
うん、お母さん喜んでた。
―――いい思い出だ~。
それからいろいろやるようになって、学校の調理実習とかでも、なんか勝手に食材持っていってアレンジしたりしてましたね。
―――そのころにはもう、かなり作れるようになってたんだね。お母さんかお姉さんに習ったりしながら?
いや習ってないですね、自己流。
―――その自由にできる感じが楽しかったのかな。
母が忙しかったから、食べたいものは自分で作る感じでしたね。
―――独り暮らし始めたときは、もう最初から普通に自炊してた?
やってました(即答)。
―――そっかー。そこから初心者スタートする人が多い中でね。でも、自分のキッチンってやっぱりうれしかったんじゃない?
はい! 2口コンロがおけるところで部屋を探して。最後、そこを引っ越す時に、ガスの検針の人に「あなたはちゃんと料理やってたでしょ」って言われました。単身者向けのマンションだったんですけど、「ここだけいつもメーターが伸びてるから」って。
◆食事を作る、食事を考える。
キッチンに立って、お昼ごはんの用意をしてくれてる、おかじぃ。
を、ワクワク見てる私たち。すみません・・・でも、達人の技を垣間見るのが楽しい!
―――やっぱり、普段やり慣れてることをする姿って綺麗だよね。
―――(ちひろ)座ってお話してるときの綺麗さとは、また違うんだよね。
―――たぶん、やり慣れてることって、無駄がない動きをしてるから、美しく見えるような気がする。
料理をしない日は、ある?
ないですね。(←サラッと)
―――(ちひろ・エミ)わあー!
―――したくない日、ないと? したくなくならない? 「んもう、今日はせん!」って。
いやあ~、ないかな~。なんか作ってますね。絶対。簡単なものでも。
―――(ちひろ)料理が苦痛に思うとき、ない?
うーん、ない(笑)。
―――おかじぃは野菜ソムリエの資格を持ってるんだよね。いつ取ったの?
就職して6年半福岡で働いて、転勤で宮崎に戻って働いてるうちに、「このままでいいんだろうか?」ってふと思ってしまって・・・
―――25才くらいだね。
仕事にそんなに愛着があるわけでもないし、レセプト(医療報酬の明細書)で病名をずーっと見る仕事も、しんどくなってきて。それじゃ何をやろうかなと考えたとき、とりあえず野菜ソムリエの資格をとろう、とって辞めよう、でカフェを開こう!と思って。とって、やめました。会社を。
―――自分でごはんを作って出すカフェってこと?
そうですね。野菜料理のカフェがしたいと思ったんですけど、やっぱり勉強するにつれ、現実は厳しいぞと。出店となるとやっぱりお金もかかる、とっても。
―――「お店やろう」まで考えること自体すごいよね。
なんか、人が食べてるの見るの好きなんです。
―――へー、それはまさにお店の人の適性あるね!
それから、すごい人気のパスタ屋さんで働いたり、マクロビのお店でも働いてたよね。マクロビはやっぱり魅力的だった?
面白かったですね。肉を食べないっていうのがまず衝撃的だったし。当時はいろいろ勉強したりしてましたね。
―――でも、今はそこまで厳密にやってないと聞いて、今日は普通のおにぎりとかパンとか持ってきましたが(笑)。
子どもができてから主人ともいろいろ話して、自分が本当にマクロビをやりたいのか、できるのかって考えたんですけど・・・。子どもに「どうしてマクロビしてるの?」って聞かれたときに、ちゃんと答えられるのかなと思って、ちょっとゆるくいこうと。
―――なるほどね。身体にいいことをしてるはずだけど、子どもにしたら、みんなとどうして違うのかわかんなくて、逆に生きにくくなるかもしれない・・・。
とりあえず、なるべく普通に育てていこうかなと思って。
―――あんまり、あれはダメ・これはダメって感じになりすぎるのもね。
―――(ちひろ)「これはいい」なら、まだいいんだろうけどね。「野菜はいい」とか。
―――大きくなって子どもが自分で選ぶならそれでいいんだよね。マクロビでも何でも。とにかく、今の時点から、そういうことをちゃんと考えて話し合ってるのがすごいなあ。
◆子どもは育つ、どうやっても。
―――「母乳育児がうまくいかなくて」って書いてあったよね。今は息子ちゃんもこんなに元気に大きくなって、どうやっても子どもは育つっていう実感もあると思うけど、そのときは相当つらかったんじゃない?
もう、ほんと毎日、涙が出て。なんでおっぱいをあげられないんだろうと思って・・・
―――あー・・・つらいよね・・・。
この人、こんな感じ(息子ちゃんは離乳食をもりもり食べる子です!)だから、いっぱい飲みたいのにこっちはあんまりでなくて、需要と供給が全然バランス取れてなくて。
―――(ちひろ)焦ると余計にね・・・。
だんだん、この子が、おっぱいを見るのも嫌になって。授乳体勢にしただけで、のけぞって大泣きするんですよ。
―――あああ、つらい・・・
助産師さんは、「大丈夫大丈夫、何度でもくわえさせて」って言うけど、子どもは泣き叫んでるわけじゃないですか。あーもうだめだーと思って。
―――それが、どれくらいのとき?
生まれてすぐからそういう感じだったんですけど、やめたのが4ヶ月くらいだったかな。
―――そっかー・・・。つらかったね、4か月間。
お母さんが授乳してる画像って、幸せそうじゃないですか。そういう気持ちを味わいたかったな、ていうのはありますね。
―――でも、ほんとよく食べる子だよねー。
こういうことだったか、って思います。量が必要。
―――(ちひろ)だから、ここに生まれてきたんだよね。
―――そうだよー美味しいもの、どんどん作ってくれるから。「妊婦時代の理想の子育てにこだわらなくなった」って書いてたのは、母乳をやめたのとも関連してる?
そうですね、なんかもうどうでもよくなってきて。オーガニックコットンの肌着とか・・・高ェ高ェって。
―――だよね(笑)。
布おむつもやってみたけど、「何を血迷ってるの」って一番上の姉に言われて。
―――(笑)
「この時代よ」って。「しかも、おっぱい出らんで大変で、あんまり寝てないのに、布おむつなんか洗いよったら大変やろ」って、紙おむつ送ってくれて、それからずっと姉が。
―――えっ。今も? 1年以上?!
「私がずっとおむつは送るから」って。
―――えーっ。すごい! やっぱりかわいいんだね、心配なんだね、妹が! いいお姉さん~!
(おかじぃが作ってくれた離乳食後期・お子様ランチ風 ! 私も息子の残りをいただきましたがすごく美味しかったです。そして・・・おかじぃの息子くん(1歳2カ月)はこの量をペロッと平らげていました!すごい!このご飯を食べに彼はここに生まれて来たんだよね、きっとそうだ! By 橘)
◆いろんな時代を経て、夫の視点も得て、今。
―――ダンナさんは高校の同級生だったんだよね。
はい。彼と結婚するっていうのが、本当に思ってもみなくて…
―――(笑) あ、ずっと付き合ってたんじゃないんだ?
5年くらい前からかな? 卒業してからも遊んではいたんですよね。で、彼が転職して福岡で働き始めて、久しぶりに会ったとき、私マクロビのお店で働いてて、ショートカットでほとんど化粧もしてないような感じだったんですけど、それがなんか良かったみたいで。
―――良かったんだ(笑)。
けばけばしい金髪パーマの私よりも・・・
―――えーっ、けばけばしい金髪パーマのおかじぃがいたの?! 衝撃やね。今日いちばん驚いたかも(笑)。想像できない!!
ピンクの爪で、ハイヒールで(笑)。それが彼はイヤだったらしくて、そのとき初めて「今がいいよ」って言われて、で、なんか付き合い始めて。
―――ひゅううう! 「自分が感情的だけど主人が冷静なので助かる」って書いてたよね。おかじぃ、いまお話してるととても冷静で理知的な感じだけど。
いやー、感情的になりますよー。特に夫婦で話し合いするときとか。話し合うときは感情的になっちゃいかんと主人には言われます。
―――む、難しい。感情は入るよー。人間だもん。ご主人は感情を排して話し合ってる?
そうですね。ちょっと変わってるんですよね。彼は100%じゃなくて50%がいい、っていう性格で。100%でやったらダメなんだって。そういう理論らしいです。
―――へえー、すごいコントロール力! でも、意識的にそうしてるってことは、もしかしたら、ストッパーを外したら、本当はとても情熱的で一直線な性格なのでは・・・?
―――(ちひろ)結婚生活とか、子育てにあてはめると良さそうな理論だね。余白があって。
―――そうだね、一時の感情で自分を見失わずにいられるよね。
結婚して、自分と全然違う人と一緒に暮らすって、自分も変わるっていうか、一人の時とは違う視点で物事が見られたりして、新しいものが見えてくるのかもねー。
そうですね~。私にはちょうどいい人なのかな(笑)。
(おわり)
【編集後記】
インタビュー:イノウエ エミ
おかじぃの印象は、透明感。体にいいもの、体が喜ぶものを日々作って食べている人の健やかさ。お話を聞いていてその印象が強まっていただけに、金髪ソバージュ話には驚きました(笑)。いや~、人に歴史ありですね!
ここに載せた以外にも食に関する話をいろいろ聞いて、面白くて。食事って身近なことのようで、突き詰めて考えていくと思想になるんですね。食べることは生きることに直結していますもんね。
だからこそ、「もっと良いものを・もっと理想を高く…」となるのもわかるのですが、おかじぃは、野菜ソムリエやマクロビオティック、いろいろ勉強して仕事もしたうえで、いろいろ考えて話し合って、「ちょっとゆるく」を選択。その“意志のある、ゆるさ”も1つの立派な思想だと思いました。
「飽きっぽくて何でも続かないんですよ~」と自分では言ってたけど、「料理したくたくない日がない」ってすごいよね! 今は育児日記も続いているそうです。きっと、本当に大事なものを、もう見つけてる人なんだって思います。
お料理ほんとに美味しく、きびきびと立ち働く姿もすてきでした。ごちそうさまでした! そして、そんな彼女に「お酒大好き~! 飲み会大好き~! 最後までいます~!」みたいな一面があるのもすごくいい(笑)。人は多面体ですね。
撮影:橘 ちひろ
色々あって、遅くなってしまい申し訳ありませんでした~(汗)
おかじぃのポートレートどうでしょうか?一枚目は私がビビビッときた写真です。このはにかみ笑顔、見た瞬間こちらまでニンマリなってしまいました。大人の写真ではなかなかないことだと思います。
美味しい美味しいお食事の後、屋外でも写真を撮ろうと思っていたのですが息子さんがお昼寝に入ってしまったので今回はもうこれで作成しようということになりました。こんな感じが無理なくて良いなと思います。こんな感じが子育て世代に必要な余白かもしれない・・・ふんわりとした余韻を感じながらバスで帰りました。
インタビューは健康や食事の話のとこなどたくさん話に入り込んでしまいました。エミちゃんが上手にまとめてくれて目立たなくしてくれていますが。質問がどんどん出てくる自分の口に驚くほどです (笑)。
おかじぃのごはん、本当においしいのですよ。(今度飲もうねー!笑)
番外編: 迷惑かけたりかけられたりですよ
(撮影 橘ちひろ)
こんにちは。
幼稚園児と過ごす夏は暑い! スイカが手放せない2016サマー! エミです。
◆人に迷惑をかけたらいけないけれど・・・
「人に迷惑かけちゃいけません」
家庭でも学校でも必ず教えられることですよね。
みんなが深く心に刻んでいて当たり前にそう思っていることは、
礼儀正しさや順番を守るみたいな、日本人の美徳につながっているのだろうとも思います。
けれど母親になると、それ以前に比べて、
「今、迷惑かけてるかも…」と思う場面は、何倍にも増えますよね。
子どもがもっと小さかったころ、外から帰るとぐったり疲れていたのは、
抱いた子どもやたくさんの荷物の重さのせいだけではなくて、
人様に迷惑をかけないよう
白い目で見られないように
と
無意識のうちに気を張っていたからだと思います。
当時はそれを「しょうがない、みんなこうやって頑張ってるんだ」と思っていました。
でも、本当にそうなのかな?
みんながそうやって頑張るから、変わらないんじゃないかな。
◆
思い出すのは、以前読んだ本で宮崎駿が言っていた言葉です。
他人に迷惑をかけないなんてくだらないことを誰がいったのか知らないんですけれども。
人間はいるだけでおたがいに迷惑なんです。
そう思ったほうがいい。
お互いに迷惑をかけあって生きているんだというふうに認識すべきだってぼくは思う。
本当にそうだなと思って、
それからずっと、この言葉が胸にあります。
バスを降りるときベビーカーがもたもたしてたら迷惑かもしれませんが。
そこにいた人がサッと手伝えば済むんじゃないかな。
子どもが泣いてぐずるのに居合わせればうるさくて迷惑かもしれませんが。
(そのうるささがいかにしんどいか、当の母親が一番よくわかっております…)
「いいよいいよ、子どもだからしょうがないよ、大丈夫だよ」って目で見てもらえたら。
出かけるのはもっと楽になりますよね。
子育てはもっと楽になりますよね。
そうなったらどんなに楽か。
どんなに優しい世界になるか。
私はいくつもの経験で、実感しました。
◆やれば簡単、代打弁当
6月のある朝、私が作ったお弁当です。
お料理はそんなに得意じゃないので、恥ずかしいんですけど、えへ。
うちの子どもは今、年長男児1人なのに、なぜ2個のお弁当かといいますと、
夫の・・・ではなくて(うちの夫は自分の弁当は自分で詰める、エラい弁当男子)、
クラスのお友だちの分なのです。
彼のママが、赤ちゃんを出産して間もないので、
週に2回のお弁当を、1ヶ月ほど、クラスの何人かで交替ばんこに作っていたのです。
これは、7月のある朝。
さっきとはまた別の、産後のママの代わりに作ったお弁当。今度は女子弁。
いや、別に内容は変わりばえしませんが・・・えへ。
あっ、うちの園は、キャラ弁とかとは無縁の、地味弁推奨なのでね!!
そこんとこご理解よろしくね!!
もとい。
この、「産後のママには代打弁当」って、うちの園の伝統らしいです。
人に話すと、「えーっ!!」ってびっくりされるんですが。
私も、入園する以前ならびっくりしてたと思うんですが。
全然、大変ではないんです。
7,8人くらい?(下に小さい子がいる人や、お仕事で忙しい人…など“じゃない”ママ)でローテーションを組むからね。当番が回ってくるのはほんの時々。
◆
いいことは、いっぱいあります。
産後のお母さんが、ちょっとでも楽をできる。
それが直接的なメリットだけど、それだけではありません。
ママの手や目が、生まれてきた赤ちゃんにどうしても向く時期。
代打弁当を食べていたクラスメートが、
「今日は、○○のママが作ってくれる」 「今日はどんなお弁当だろう」
と、毎回楽しみにしていた様子をママから聞きました。
みんなが自分のことを思って、何かをしてくれる。
そんな喜びを、幼稚園児もちゃんと感じるんですよね。
そして、お母さんのほうも、自分がしてもらって心底うれしかったから、
いつか誰かが産んだときには、同じことをしようと思える。
◆
現代日本で、「お弁当、代わりに作るよ」ってママ友に言われて素直にOKできるか?
なかなか難しいと思います。
迷惑かけちゃうからとてもお願いできないわ。
って思うほうが多いんじゃないかな。
逆に、クラスのママ友に「お弁当、代わりに作るよ」と申し出ることも、なかなかできないんじゃないでしょうか。
恐縮されて、かえって気を遣わせるんじゃないだろうか、とか。
出しゃばりと思われちゃうんじゃないだろうか、とか。
でも、経験があれば、スムーズに言えます。
「私もしてもらったんだよ。あなたもいつか誰かにしてあげればいい」って。
そして、自分もしてあげた経験があれば、
「全然、大した負担じゃなかったわ」
って実感があるから、また次に自分の番が来たとき素直に言えます。
「ありがとう、お願いします」と。
誰かがちょっと手を差し伸べれば、
余裕があるときにちょっとの負担を受け容れられれば、
誰かがおおいに助かる。
その誰かが大変なときは、また別の誰かが。
「人に迷惑をかけず」
「自分のことは自分で」
「自己責任」
しゃかりきにそう頑張り、他人にもそれを求めるよりも、
楽で、気持ちよくて、本来、自然な気がします。
京都大の総長でゴリラ研究の大家、山極壽一さんが、
「太古の昔から、
人類と動物との決定的な違いは、火の使用より二足歩行より言語より、
『共食』 と 『共同保育』である」
と言っていました。
人はもともと、助け合う生き物だったのです。
◆自分にも人にも、「お互いさま」と思えたら
代打弁当に限らず、幼稚園では
「してもらう → うれしい → だから自分もしてあげる」
という、ポジティブなサイクルができているなーと感じることがよくあります。
そのサイクルに乗っかると、とっても楽で、しかも何だか心持ちが良いのです。
もちろん、うちの園だけでなく、育児中の相互扶助は多くのところでされているでしょう。
けれど、そうじゃない環境で育児をしている人も、きっといるでしょう。
育児中の輪の外側の社会では、
「助け合い」より「自己責任」の風潮のほうが強いようにも思います。
「人に迷惑をかけてはいけない」
その迷惑は、実はそんなに大したことじゃないかもしれない。
「迷惑かけないようにしなきゃ・・・!」
その頑張りは、他人に迷惑をかけられたときの、狭量さにつながってしまうかもしれない。
私たちはみんな、一人だけでは、自分の家庭だけでは生きていけない。
迷惑をかけたりかけられたりして生きている。
考えてみれば、それって、昔からの言葉にありますよね。
「お互いさま」
子どもが少なく、高齢者が増えていく国。
経済成長の望めない国。
たびたび天災に見舞われ、エネルギー問題を抱えた国。
日本だけでなく、どこを見ても、政治も選挙も世論も、
不寛容と攻撃性を増しているように思います。
今、必要なのは、「自己責任」でなく「お互いさま」なんじゃないかな・・・。
つらいときは 甘えさせてもらおう
そのかわり できるときは 人を甘やかそう
優しくされたらうれしい
だから優しくしよう
そんな世界で子どもを育てられたら
子どもたちみんな そんな世界で育つことができたら
(撮影 橘ちひろ)
vol.23 城戸みどり の 「ママじゃない私」 ポートレート
2016年、初夏のポートレートをお届けします♪
今回のモデルさんは、年長さんを筆頭に3姉妹の母みどりさん。初めまして、なのですが・・・。
実は、1年前に取材させてもらう手はずになっていたのです。ところが、そのとき3女ちゃんを妊娠中で臨月だったみどりさん、なんと約束の日の朝に陣痛が!!
あれから1年、ついにお会いできる日がきました(^^)
みどりさんはこの1年で、バランスボールの先生や専門学校の講師など、新しいことをいろいろ始めてるとのこと。そのプロセスに興味津々の私です。
◆限りある命だから
―――アンケートやfacebookとかを拝見してると、みどりさんはとても行動的なイメージですね。
こないだ、ブログに書かれてた記事を読んで、すごく納得したんです。
みどりさんが26才のときにお父さんがガンで亡くなって。お葬式の日に、
「自分にもいつかこんな日が来るんだな。だから今を一生懸命生きよう、やりたいことは何でもやっておこう、失敗してもいいから」と思って、それが今の自分にすごくつながっている、という話。
読んでくれてありがとうございます。
―――すごく説得力があって、本当にそうだなあと思ったんですよね。
それに、お父さんが亡くなるのはすごく悲しくて大変な出来事だけど、その経験を通じて自分の人生を前向きに考えるようになった、っていうのがすごいなあと思って。人間って、すごく悲しいことがあっても、そこからも学んでいけるんだなって。
月並みな言い方だけど、今のみどりさんを見てお父さん喜んでるだろうなって・・・(←超語る私 笑)
ほんとですかー。うれしいです。
―――でも、日々、行動的に過ごしてて・・・疲れませんか?(←疲れやすい私 笑)
そうですね。疲れるときもあります。
―――だって、小さい子を3人育てていて、毎日そのお世話だけで疲れますよね?
はい。だから逆に、自分のやりたいことをしてる時間に癒されるっていうか・・・
―――ああ、そういうことね! わかります。
子どものこと100%で1日が終わっちゃうと、「あー、何にもできなかった」ってなる。それが、仕事なり、バランスボールなりすると、すっきりするんですよね。
―――うんうん。
なんていうんだろう、子どもとか主婦とか全部忘れる時間が、私にとっては気持ちがいいんだと思います。
◆「そうだ、体育の先生になろう!」
―――この春から、先生のお仕事を始められたんですよね。
はい。大学時代の友だちの縁で、「講師を探しているのでやってみない?」と声をかけられて。本当にまだ始めたばかりで、2か月ぐらいしか経ってないんですけど・・・。
スポーツ系のインストラクターを目指す子たちの専門学校なんですよ。スポーツジムのインストラクターや、保育園の体操教室の先生、デイケアサービスの運動指導とか・・・
―――へー、そういう専門学校があるんだ!
そこで、スポーツ栄養学と福祉実践を教えています。福祉実践っていうのは、介護予防ですね。介護が必要になる前の段階で予防しよう、っていう動きが広まってて。
―――みどりさんは、そういう知識をどこで得たんですか?
いや、実は大学の時に習ったんですけど、実際もう忘れちゃってるじゃないですか(笑)。だから自分も勉強し直しながらですね。1時間授業するのに何時間も準備して・・・。
―――わぁ、大変だ。大学、スポーツ系の専門だったんですね。
最初は法学部にいたんです。
―――あら。
私ずっと部活しかしてこなかったから、進路とか全然わからなくて。顧問の先生に「とりあえず大学でいろんな経験して決めればいいやんか」って言われて、片っ端から学部を受けて、受かったのが法学部(笑)。
―――うんうん、大学ってそういう感じですよね(笑)。
で、大学2年の時に、車の路上教習で、友だちの運転の後ろに乗って山道を走ってる時に「これからどうしようかなー」って考えてたら、「そうだ、体育の先生になろう!」って舞い降りてきて。
―――山を見ながら(笑)。
でも法学部じゃなれんよね、と思って教務課に行って調べたら、転部制度があったんです。3年から4年に上がる時に転部できるシステムで。それで、もう1回試験を受けてスポーツ学部に移りました。
―――やっぱり試験はあるんですね。4年生で転部して、4年間で卒業できるんですか?
できないんですよ。
―――やっぱり取るべき単位が違いますもんね。
だから5年間行ったんですよね。なんて親不孝だったんだー!と思って。
―――ええっ。いや、確かに授業料を考えるとね…。でも、長い人生を考えると、4年が5年になったところで大して変わんないですよね。
そうなんですよね。それで体育教師の免許をとったんですけど、そこからが難しくて…。高校で体育と保健の非常勤講師をしながら、採用試験を3回受けて・・・そうこうしてるうちに結婚することになって。
◆仲間や先生たちと出会い、バランスボールに出会った
―――今は、専門学校の講師の他に、バランスボールの講座も受け持ってるんですよね。
はい、子どもがいるお母さんが多いですね。
―――そちらは、最近、インストラクターの免許を取ったって。
そうなんですよ、免許はなくてもできるんですけど、やっぱり一通りの知識と技術を身につけたかったので。
―――バランスボール自体、始めたのは産後ですか?
ええ。いいですか? 話をさかのぼると、ちょっと長くなりますけど。
―――(笑)。いいんですいいんです、今日はみどりさんのお話を聞きに来てますから(笑)。
自分の特技を生かして、仕事につなげたいなとずっと思ってて。どこかに勤めるとかじゃなくて、子育てしながらできることがいいなって。
―――お母さんになってから、ということですね。
はい、それで2人目を産んだあと、「ママの未来チャレンジ」っていう講座を受けたんです。それこそ、特技を生かしたいけど何から始めれば・・・っていうママのための、全何回かの講座が無料で。
―――まさにみどりさんのための企画!
そう! それで、同じ講座を受けた7人が集まって、「ままいる」っていう団体を作ったんです。お母さんたちのための講座やイベントをやる団体です。
―――ほうほう。
その企画の1回目が、バランスボールの講座だったんですよ。西新から中村先生という方をお呼びして。それがすっごく楽しかったんですよね。
そして、私がいずれ、運動系の教室とかやりたいって言ってたから、周りのスタッフが「先生に相談してみなよ」って言って。私は、初対面だし自分の相談なんて・・・
―――とてもできないわ、って思っちゃいますよね。
でも周りが軽く言ってくれるもんだから、相談してみたんです。そしたら、なかむら先生が「とってもいい人がいる」って、竹村先生という方を紹介してくださったんですね。
―――ほうほう。中村先生の次は、竹村先生。
竹村先生は、すごく幅広い知識や技術を持ってる方なんですけど、とにかく忙しい方で。
連絡してやりとりしてたんですけど、「いつかどこかのタイミングで会えるかもしれないから、その流れを待ちましょうか」って言われて、待ってたんですよ。
そしたら、「ままいる」のスタッフに「みどりちゃんから行かなきゃダメなんじゃない? 向こうから、この日に会いましょうとか言ってこないよ」って言われて。
―――忙しい先生ですからね。
「でも、今のみどりちゃんには無理か。」って言われて。それですごく発奮して。
―――おお!
彼女は悪気なく言ったと思うんですよ、そのとき、うちの次女まだ小さかったし、今は無理だよねって。
でも私、そう言われて「全然無理じゃない!」って思って、すぐ竹村先生に連絡して、「先生、お昼休み1時間でもいいから会ってください」ってお願いして、子どもをおばあちゃんに預けて会いに行って。
―――すごい!
そうしたら、先生は初対面の私に、すごく親身になってくださって。「30分でもいいから、自分が自信を持ってやれることを身につけたらいいよ」って。
―――はー、30分でもいいから。なるほどねー!
「それが何なのかは、城戸さん次第よ」って。なるほどーと思って、いろんな教室に参加したり講座を受けたりして。
自分は何が楽しいかな?って考えて戻ってきたのが、バランスボールだったんですよね。
―――あー、戻ってきた(笑)。
「お母さんたちが集まれる場所を作れれば」っていう気持ちがあったんです。
小さい子といつでも一緒にいる時代は、自由に動きづらかったり、どうしても窮屈な部分がありますよね。私もそうだったから、子連れでも一緒に楽しめて、お母さんたちが元気になれるような場所をを作りたかった。
―――ああ、「お母さんたちを元気に」という思いが大前提としてあったんですね。
はい。そうやって考えたときに、バランスボールって、妊娠中でも産後でもできるし、小学生も高齢者もできる。幅広い!って思って。
今は、ままいるの定期講座のバランスボール教室を私が引き継いだ形でやってるんです。
(はいっ!!この笑顔!)
◆何でも叶う?! 引き寄せの法則
―――その状態から、人に教えるようになるまでは、かなり勉強されたんでしょうね。
ネットで検索したんですよね。バランスボール講師養成の。
そうだ、その前に、「引き寄せの法則」ってご存知ですか?
―――ん? いや、知らないです。
紙に、願い事を、叶ったと思って書くんです。完了形で。
―――ああ、はいはい! スポーツ選手がやってるの、テレビで見たことあります。「オリンピックで金メダルをとりました」って。
私もそれをやったんですよ。
「子連れOKの養成講座を見つけることができました。しかも自宅近辺で開講されます。時間も融通が利きます」
―――すごい(笑)。自分に都合の良い条件を書き連ねるわけですね(笑)。
そうなんです。「願いが叶って、私はインストラクターになれました」って。
そしたら本当に見つかったんですよー! 清水リサ先生という方で。
―――ほう、今度は清水先生。
そのとき私、3人目を妊娠中の臨月で、大きいお腹で見学に行って。すごく素敵な方だったんですけど、まだちょっと迷いもあって。
―――そうですよね、始めるかどうか、大きな決断ですよね。習うってなるとお金もかかるし、専業主婦にとっては迷うところ。
でもやっぱり1回の人生だし、失敗してもいい!って思って、産後4ヶ月くらいから受講したんですよ。それも何と、先生がうちに来て教えてくださったんです。
―――すごい! 願いが叶いまくり!!
自宅で赤ちゃん転がしながら、マンツーマンで半年ですよ(笑)。
―――いやあ、すごい行動力ですね。いいお話でした。引き寄せの法則、私もやってみようかな。
書くことで、知らず知らずのうちに、そうなるように行動していくみたいなんですよ。潜在意識にスッと落ちるっていうか。
―――書くってことが重要なんでしょうね。ぽやーんと心の中で思ってるだけじゃなくて、具体的に言葉にすること。言霊に近いのかな。
◆剣道一直線!の学生時代
―――小学校から中・高・大と、ずっと剣道をしてたとのことですけど、辞めたいと思ったことなかったですか?
やー、ありました。あったんですけど、なんか、そのときそのときでいろんな出会いがあって、引き戻されたんですよね。剣道の世界に。
―――始めたきっかけは何だったんですか?
アイスなんです(笑)。練習終わりに迎えに来るお父さんたちが差し入れてくれるんですよ。「毎日アイスが食べられるばい」って、友だちに誘われて(笑)。
―――中学では、部活を選ぶときに、もう自然に? 「私は剣道部」って。
そうです。田舎だったから、全員、なんか部活に入らなきゃいけなくて。
―――そうだ、「友だちがなんかすごく大好きで、学校に行くのが楽しみだった」って書いてありましたよね。
私も学生時代を思い出すと、漠然と“青春時代”って感じの楽しいイメージですけど、実際そのときは結構冴えない日常というか、イヤなこともあるし、友だちとの関係もめんどくさいときあったなーって思うんですが。
うーん。毎日楽しかったんですよね。田舎だったからか、みんなすごくいい人ばっかりで。
―――へぇー。女子同士って、時にややこしくなったりしませんでした?
なかったんですよ。やっぱ田舎だからですかね(笑)。素朴な人ばっかりで。男女も仲良かったし、楽しかったですね。
―――みどりさんは、もともと楽天的というか、あんまり悩まないほうだったりします?
ううんー! 全然ですよ。すごい小心者だし、心配性だし。中学の時とか、部活の先生がめっちゃ怖かったんですよ。もうホント毎日「今日はしごかれませんように」ってお祈りしながら・・・
◆大きなひと。
―――小心者ってイメージ全然湧かないけど・・・
そういえば、ダンナさんのこと、「『みどりはすごい!』ってすごく褒めてくれる」って書いてありましたよね。「それで自信がついた」って。逆にそれまでは、自信がない面が?
そうですね。ダンナさんが。そうそうそう。
―――たとえば、どういうところを褒めてくれるんですか?(←興味津々)
うーん。たとえば、私いろんな話を聞きに行ったりするの好きなんですよ。講座とか。まぁ実践するかどうかはおいといて(笑)、新しいものを自分の中に入れるのが楽しくて。
ダンナさんはそういうの行かない人なんですけど、出会ったころに、「こういう講習受けてきたよ」って話したら、「みどりはすごいねー。どんなこと習ってきたと? 教えて」って
―――へえええええ、そんなこと言うダンナさん、あなたもすごいよ!!
褒め上手なんですよ。
―――(ちひろ) いい関係ですねー。「教えて」って言われたら、一生懸命思い出すじゃないですか。すごい身につきそう。
私が先生役になって、もう1回おんなじこと話してましたね。そしたら一生懸命聞いてくれるんですよ。
―――(ちひろ) 聞いてくれるのがすごいよね。
―――聞いてくれる男の人って意外に少ないからね。
出会ったころ、私全然、仕事ができなくて。社会人1年目だから当然なんですけど、すごい落ち込んでたんですよ。でも、裏でそうやって彼が支えてくれたから。このまんまの私を受け止めてもらえたら、こんなに楽で安定するんだー、って思って。
―――ほんと、大きいですよね。その存在は。
それから、仕事もがんばれて、いろんなことがきちんとできるようになった気がします。
―――でも、そんなダンナさんは高校の先生で、剣道部の顧問。となると、毎日の放課後の練習や、お休みの日も部活がありますよね。
いろいろ考えますよ。日本の社会というか。
―――ほんとね。親になると考えちゃいますね。
なんかもう、6時になったらみんな帰宅、とか。店も全部閉めて。日曜は仕事しちゃダメ、とか。やっぱりお父さんが家にいないっていうのがね・・・。産後うつとかも増えてるし。
―――ほんとにねぇ。でも現実的に、ダンナさんの仕事の仕方を変えてもらうのは難しいじゃないですか。
そうすると、どこの家でもそうですが、男の人は仕事の時間が長くて、どうしても夫婦の時間は短くなってしまいがちですよね。それで淋しかったり困ったりすることないですか? 子どもの話とかも夫婦で共有しておきたいですよね。
そんなに困らないかなあ。コミュニケーションは自分からもとるようにしてますね。うん。「最近あんまり話してないから話そうよ」とか。「子どものことで話があるから時間作って」とか、思ったことやお願いしたいことがあれば言います。
―――えらい! 言えるんだ。
うんうん。ためないようにしてます。
―――そしたら、ダンナさんは?
「あ、ごめんごめん、話そう」って。やっぱり、自分が家にいないことをすごく申し訳ないと思ってくれてるみたいで、そういうときはすごく対応早いです。
―――ダンナさんも、いつも家族を気にかけてるんですね。
そうだと思います。
―――みどりさんが何かやりたいことがあるとき、ダンナさんはすぐ賛成してくれるほうですか?
はい! なんか全然心配しないんですよ。何に安心してるのかわからないんですけど(笑)。え、やれば?って。
あ、でも専門学校の講師は・・・バランスボールの資格をとって、「さあ今からだ」って時と重なったので、理解してもらえるか、ちょっと考えるところもあって。
―――普通に考えて両方は難しいですもんね。それでどうしたんですか?
自分は、両方がんばってみたい!と思ってたんですけど、やっぱり、口では伝わらない面もあるかなーと思って。話せば話すほど言い訳がましく聞こえちゃうこととか、あるじゃないですか。
だから、それこそ、父の命日のときに書いたブログをLINEに送って、「お時間あるときにご一読ください」って。
―――すごーい! おもしろーい!
そしたら、帰ってきて開口一番、「みどり、やったらいいよ!」って。「1回きりの人生やん」って(笑)。
―――うわー面白い! めっちゃいい人!
変な言い方ですけど、あのブログは、ほんと役に立ちました(笑)
―――開口一番で肯定してくれるのがまたすごいですよね。なんか、男の変なプライドみたいなのがなくて、いい!
◆今もう一度、教壇に立って
―――今、先生として19、20才の子たちを見て、どうですか?
やっぱり、かわいいですね。
―――独身のときの講師時代と、今とでは、見方も少し違うんじゃないです?
違いますねー。やっぱり前は、若かったから年が近すぎて・・・
―――きょうだいくらいの年の差ですもんね。
なめられちゃいけないと思って、壁を作ってた。かっこよく見られたい、私は何でもできるのよ、って。見せかけなんですけどね。今はもうそんなものなくて、どう思われてもいい、知らないこともあるけど、私にできる限りは伝えるね、って。
―――授業をしていて、今よく聞いてるなーとか、生徒さんたちの反応ってわかるもんですか?
わかりますね。私が実体験からとか、実感を込めて話していると、目の色が違うというか、「はーっ!」って聞いてます。でも、どっかからちょっと拾ってきたようなことをペラッと言うと、ふーんって感じでやっぱり響かない。
―――なめちゃいけないですね。子どもでも若くても、やっぱり言葉の深みがわかるんだ。
そうだと思います。私は今たった2科目だけの講師で、時間的にも質的にも、学生さんたちに教えられることは限られるんですけど、私も母になって世界が変わったし、ものの見方や考え方も前とは違うと思うんですね。
―――そうですよね。自分が大人になって、いろんな経験をしたから見えることはありますよね。
だから若いときには言えなかったことも言えるよね、と思ってて、だからもう一度、教壇に立ちたかったのかな、と思います。もちろん、私自身まだまだ未熟なところもいっぱいあるし、自分も学びながら、成長しながら、ですね。
(おわり)
【編集後記】
インタビュー:イノウエ エミ
一年前の取材予定はお産でキャンセルになったものの、赤ちゃんが無事に生まれたこと、すくすく育っているのをfacebookなどで微笑ましく拝見する日々。
この日、一年越しでお会いできて、こんなご縁もあるのだなーと、とてもうれしく思いました。みどりさんは写真のとおり美人さん、でも本当に飾り気がなくて自然体、この日の空のようにすがすがしい人。という印象です。
バランスボール、専門学校の講師。ある意味結果というか「達成されたこと」ですよね。
お話を聞いてると、大きな達成までの道のりは、小さなことの積み重ねなんだなあと思います。もちろん、みどりさんの意思があってこそですが。人との出会いを大事にしたり、話を聞きに行ったり、講座に参加したり。ひとつひとつのプロセスに対して小さな勇気を出して踏み出し、取り組むことで、ひとつひとつが経験値になり、やがて道がひらけていくんだなあって。
みどりさんが言う「今を一生懸命生きる」って、そういうことなんだろうなーと思います。そして今この日々が、明日に、何か月後・何年後につながっていくんですね。
一緒に来てたちひろちゃんの息子ちゃんは、初夏の日差しの中ですやすや。30代女子3人、緑の中を散策してバランスボール乗って木登りしてお昼食べて・・・ピクニック気分も存分に味わった、楽しい取材でした♪
撮影:橘 ちひろ
駅でお会いして、車を運転されている横顔を見て「きれいだなぁ!」っておもったもので・・・気が付いたら今回、ほぼ横顔になってしまいました。あわわ。
正面切ったみどりさんをまたいつか撮らせてください!
でも横顔って語りますよね、人を。うん。やっぱり横顔すてきです。
広ーい公園、燃ゆる緑に青い空・・・スケールが大きくてのまれそうな自分でしたがみどりさんは堂々・健やかに・自然に写ってくれました。
お話もすごく良かったです。「やってみよう」っていう気持ちとか「引き寄せの法則」とかの考え方かなり影響を受けています。体を動かすことと学び思考すること、どちらもできるみどりさん、すてきだなぁ。と思いました。
あ・・・実家にバランスボールあったなぁ、やってみようかな・・・。