vol.7 ひろみ の「ママじゃない私ポートレート」
小2・年少さんのママであるひろみさんは、撮影担当・ちひろ氏の「ちょっとした知り合い」。インタビュアー・エミにとっては、別ルートでの、友だちの友だち…という存在で、このインタビューが正真正銘の初対面です。その程度の薄~いつながりでも、俄然、取材させてもらっちゃう「ママじゃな隊」です! 偶然にも、3人とも同い年、しかも10代の頃に小沢健二が好きだったという共通点もあって(笑)、あのころの渋谷系の音楽シーンの話なんかでもひとしきり盛り上がりました!! ほんと、あのころはネットもなかったから、雑誌とかラジオとかライナーノーツとかが情報源で・・・(エンドレスになるので自重)
◆最初は入りにくかったママ友の輪
―――普段は、おしゃべりなほう? ママ友の中にいるときとか。
いやー、自分からはそんなに…。人の話を聞いて、「へー」って言ってるほうかな。
―――そういう中では、自分の趣味とか、言う? ほら、学生の頃とかは、趣味が似てる子が集まって友だち付き合いしてるけど。ママ友は、ほんとバラバラの人たちの集まりだったりするやん?
あー、私は全然言えなくて。転勤で引っ越してきて、上の子は年中から幼稚園に入ったんだけど、そしたら、年少から入園してる子と一緒だから、お母さんたちの輪ももうできあがってるんですよ。入りにくくて。
―――ああ。そうよね。そうよね~。
まあ、それはもう、しょうがないよな、と。それで、当時の年少組のママだったしほこさんと仲良くなって。でも最初は送り迎えで挨拶するくらい・・・。何かのときに、人伝いで「しほこさんは絵を描いてる」って聞いて、「あっ」て思って、勇気を出して(自分も絵を描いてたことを)言ってみた。
―――あ、じゃあ、福岡のママ友で最初に自分をさらけ出したのって、しほちゃんなんだ。
そう、で、しほこさんはホントにディープな人で(笑)、その周りの人たちも、仲良くなると、みんなそれぞれ面白くて。
―――そういうふうに広がると、ママ友って面白いよね。新しい出会いだもんね~、この年になってからの。
うん、幼稚園時代が一番ディープかも。小学校になると、もう、さらけ出すってとこまでない気が・・・。
(幼稚園のママ達とウクレレバンド“silo”を結成し、今その活動がとても楽しいそうです。)
◆マンガを描いてた少女時代 / すんごいお宝に騒然!!!
―――「ずっとマンガを描いてた」ってことだけど。雑誌に投稿するってすごいよね。「りぼん」に投稿ってことは、自分もまだけっこう幼い・・・
中学校ぐらいから、ちょくちょく描いて、出してみたりして。賞金5,000円とかもらえたりするんですよ。A賞とか入ったりしたら。
―――え!! 賞もらったことあるの!?
や、下のほうの賞ですよ。
―――下のほうだって相当すごいよ!! だって、ああいうのって、ものすごい数が投稿されてくるからね。それで、お金がもらえる賞だなんて。
もらったお金で、ケント紙とかスクリーントーンとか買って、みたいな・・・。
―――わ~、ほんと、マンガ少女だね。いいね、そういうの。
だいたい、話を完結させられるところがすごいよね。私も子どもの頃、小説書いてたけど(黒歴史 笑)、最初はノリノリで書くんよ、でも、だんだん筆が止まってくる。最後まで書くってすごいことだよ。何ページぐらいの話? 短編だよね。16(ページ)くらい?
そのときの規定は、32ページ。
―――わ、けっこう長くない?!
まあ、最初は何も考えずに描いてて。でも、『耳をすませば』って映画の中で、主人公の女の子が、なんだっけ、「もっと勉強しないと書けないってわかってるんです」みたいなセリフがあって。それでね、「あ、そうか」って思ったり。いろいろ知ったりしないとね、面白いのって、描けないんだよね。
―――そうだねー、自分の引出しを増やさないとね。特に、まだ子どもだったわけだから。
そう。そう思って、「勉強しよう」と思ったり。
(子供部屋のロフトスペースにはひろみさんの漫画コーナー。集中できそう~! 夏は・・・暑い!!そうです(笑))
★
―――ずっと「りぼん」に出しとったと? 読む雑誌って、年齢上がるにつれて変わったりするよね。「りぼん」から「マーガレット」になったり。
うん、いろいろ、他のも見て。傾向とか・・・
―――あるよね、雑誌ごとに、カラーが(笑)
「LaLa」 がね、面白いな~と思って。
―――!!! わかる!!!(がっちりと握手)白泉社!!! 好き!!!
白泉社、大学のとき、1回、持ち込みしたんですよ。
―――えっ、持ち込みって、マンガの原稿持って行ったってこと?! 持って?! 郵送じゃなく?! 出版社に!?
うん、1回、してみようと思って。
―――ひゃー、すごい!!
―――(ちひろ) 佐賀から行ったってこと? 飛行機で?
飛行機で。佐賀から行ったのよ~ひとりで。電話して「見てください」って言って。ほんと、何してるんだろうね(笑)。
―――すごい! すごいよー!
で、見てもらって、「ウチには絵が合わないな」とか言われたんだけど(笑)。
(補足。原稿は、白泉社だけでなく、講談社・集英社にも持ち込んだそうです。一度の上京で3社を回ったということですね!! ストロングハート!! 結果、いちばん反応の良かった集英社に投稿して、賞をもらったとのこと。うーん、すごいっ!)
―――や、でも全然違うよね、1回でもその経験があるかないか、って。ものすごい勉強になるよね。
ただ好きなものを描いたらいいってわけじゃないんだな~、って。絵を変えなきゃいけないのかな、とか。「合わせる」っていうか。
―――まあ、商業誌だからね~。
ちっちゃいときからやってきたことだから、あきらめきれんな、続けよう、って思って。でもやっぱ、働き始めると、なんか生活のほうが大変で。学生の頃って貴重だったんだなーって。好きなことだけ考えることができて。
―――大人になると、お金ないと生きていけないもんね。・・・ねぇねぇ、マンガの原稿って、残してるのあります?(おそるおそる)
うーん、あると思うけど・・・ほんと、恥ずかしいッスよ。
―――え、いいとー?! 言ってみるもんだ!!
(探しに行くひろみさん。しまい込んでいるらしく、別室のロフトに上って探しているもよう。しばらく待つ。やがて、「ギャーッ!」という絶叫が聞こえる。原稿が発見されたらしい笑)
どうしよう、これ~。ほんと恥ずかしいよ~?
―――大丈夫! 熟読しないから。サラッと見るだけ!!
あ~恥ずかしい~
―――見たい見たい見たい。・・・・・あ、すごい! かわいい! すっごい上手やん!!(エミとちひろ、騒然。) ・・・あ、逃げた(笑)
―――(ちひろ)かわいい~。うまい~。なんでこんな描けるんだろ。マンガ雑誌によく載ってるシロートの投稿原稿って、だいたい違和感あるけど、これ、全然ないもん。
―――ない、ない。ね~、すごいね。ちゃんとトーン貼ってあったり、点描とか・・・モノローグもある。
(戻ってきて)
きゃー、もう、恥ずかしい。
―――恥ずかしいことない!! よかった、取ってあって。これは絶対捨てちゃダメだよね~。
これ、持ち込みしたやつね。大学のころ・・・。あ~、もう、鳥肌。ゾワッとする。いや~な汗がいっぱい・・・
―――自分じゃ恥ずかしいだろうけど(笑)。感動だよ!! ありがとう、こんな大事なものを!!
◆「ふわっと手触りなのにハートはワイルド」
―――(仕切り直して)ひろみさんとは今日が初対面だから、しほこさんに、紹介文を頼んでたんですよ、事前に。
うわ、そうなんだー!
―――じゃーん! ・・・これが、想像以上に全力で書いてくれて、なかなかの名文なのよ!! (興味のある人はこちらをどうぞ)
かいつまんでキーワードを並べると、しほちゃんから見たひろみさんは、「気遣いの人」。「信頼できる」。「のんびり屋さん。でも、どんくさいワケじゃない」。で、佐賀出身のこととか(笑)、サブカル趣味のこととかも、ちゃーんと押さえてくれててね、最後に、ひろみさんのキャッチフレーズ。「ふわっと手触りなのにハートはワイルド」。
(ウケるひろみさん)
―――「ふわっと手触りなのにハートはワイルド」。2回言ってみた(笑)。うまいよね。はい。名文ですよ。贈呈します。
こんなことないから、すごく新鮮~!
(ひろみさんのお家の玄関にはしほこさんから送られたテンペラ画があります。お家の雰囲気にすごく合っていた!)
◆「気分屋の私と、諭してくれる夫」
―――この、しほちゃんからの紹介文と、ひろみさんに事前に回答してもらったアンケートを見比べると、「マイペース」とか「のんびり」とかは一致してて。そういうイメージなんだろうね。でも、自分では「気分屋」とも書いてるよね。そういうとこもあると?
けっこう振り幅が激しい。落ち込んだり、イライラしたり。そういうときに人に会ったら、「ぶすっとしてる」って思われてるかも…。逆にハイになることもある。
―――そうなんだー。今お話ししてる感じだと、ちょっと意外かも。
だいぶなくなってきたけど、今でもちょこちょこあるかな。
―――ま、誰にでもあるものだけどね。あるていど。
聞いた話なんだけど、そういう凹凸って、季節の変わり目とかに顕著に表れるものなんだって。あと、女子なら生理の周期とか・・・。人間、いつも同じペースでは生きてないんだな、とは思う。
―――ほんとね! みんな、そうなんだよね。それ聞くだけでちょっと楽になるね。
(アンケートより)大学時代の、「人間関係に悩んでた」ってのは? 美術系の大学で、初めて彼氏ができて、人間関係・・・。これ読んだとき、もう、私の中で、『ハチクロ』しか思い浮かばなかったんだけど(笑)。ちひろちゃん、わかる?
―――(ちひろ) なに?
―――そういうマンガがあるとよ。『ハチミツとクローバー』っていう、有名な・・・。恋と仲間と、甘酸っぱい・・・・
いや、そういうんじゃないけど(笑)。自分の人に対するやり方とかがね、なんだろう、子どもだったので。バーン!と感情をぶつけちゃったり。それでケンカしたり、疎遠になることも・・・。甘えてたんでしょうね。
―――あるある~、そういうこと、若いころはたくさん。
ま、それで、わかったり。「ここまで言っちゃダメなんだな」とか・・・。遅いよね。
―――全然遅くないよ! ダンナさんは? アンケート見てたら、ダンナさん、めちゃめちゃかっこいいイメージなんだけど。理系だけど情緒豊かで、音楽してて、普段は穏やかだけど正義感が強くて・・・
―――(ちひろ) 諭してくれる、とか書いてたよね。
うん、だ~~~いぶ、諭してもらってきた。感情を表に出し過ぎるとことか、気分屋なとことか・・・。バランスのいい人だな、と思って。人間ができてる。私は、尊敬してます。
―――ほんと、どんな人だろう~。会ってみた~い。
★(終)
[編集後記]
インタビュー:エミ
先にもらってた、しほちゃん筆の紹介文の的確さに膝を打つインタビューでした! ほんわか・のんびりとしたお話しぶりだけど、頼りない感じじゃない。芯があって、すごく信頼できる感じ。すごーく恥ずかしがりながらも学生時代のマンガ原稿を出してきてくれて、すごーく恥ずかしがりながらも、「さらけ出したほうがいいよね、こういうときは・・・」と言ってくれたのが、超かわいく、かつ、かっこ良かったです。私もちひろちゃんも、あの原稿に感動&尊敬でしたー! ありがとう、オザケン話・マンガ話など、まだまだ話したいことたくさんでした!
写真 :橘 ちひろ
アジサイの色合いと洋服の色やトーンが素晴らしくマッチしていたり、撮影中たくさんの奇跡が。わたくし、そんな事にテンションアップ!!そこに差し込む光・光・光!
そんな色と光と空気に包まれて、嬉しくなってしまう撮影でした。
ひろみちゃんとは子供達が赤ちゃんの頃とある育児サークルで知り合ったのですが、やはりママの顔して会う場で話すだけでは分からない部分がたくさん。すごく面白いインタビューです。本当にもう一度再会できて嬉しいよー!!