“ママじゃない私” ポートレート

いつものあなたの、いつもと少しだけ違う顔。いろんなママたちの、「ママじゃない顔」ポートレート。

vol.18 Masako の 「ママじゃない私」 ポートレート

 

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思いがけず、夏休みの取材機会に恵まれました。今回は戸外の広いロケーションでの撮影予定もあり、「思いっきり“夏!”って感じの記事にしよう!」と意気込んでいたのですが、取材当日は降水確率90%の予報。朝起きると、雷まで鳴っています。なんてこと!? 昨日までの猛暑はどこに行ったのでしょう? 毎日毎日、あんなに晴れあがってたのに!

それでもせっかく組んだ日程だもの、一縷の望みに賭けて博多から電車で40分、行ってきました、撮りました。すらっと背の高い今回のモデルさん、インタビュー担当エミとは今日が初対面になります。事前にお願いしたアンケートだけが、彼女を想像する材料で・・・。

 

 

 

◆ある日ふと、解き放たれて。

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―――アンケートの回答がすごい速くて。

ああ、確か、その日のうちに回答して返したような。

―――(ちひろ)「ママじゃな」史上、最速(笑)。

―――お仕事もしてて子どももいて、忙しいだろうに・・・何か、時間の使い方に工夫とかあるんですか?

工夫ですか。うーん、何かあるかなあ・・・

―――テキパキしてるほうですか?

あ、テキパキはしてるかも。ぐうたらする時間が欲しいから、やらなきゃいけないことはさっさとしてしまう。それに、子どもももう9歳で手がかからないから、声かけだけなんですよね。

―――そっかー。

「宿題しとったほうがいいっちゃない?」って。「しなさい」じゃ絶対ダメだから、「○○したほうがいいんやない?」みたいな言い方で。そしたら、「あっ」てなってくれる、まだ。

―――そうやって、自分の時間ができたら、何してますか?

何してるかなー。本読んだり、だらだらもします。日曜日、子どもが外に遊びに行ってて家に誰もいなかったら、テレビで野球のデーゲーム見ながらビール飲んだり。そんなぐうたらにも幸せを感じますね(笑)。

―――お酒、好きなんですよね? アンケートにも、「たまに友だちと酔っぱらって踊ったりするのが楽しい」って書いてあった。私たちもお酒大好き! 今はちひろちゃんは(授乳中)飲めないけど・・・

―――(ちひろ)下の子を妊娠するまでは、ちょくちょく飲んでたよね。子どもいるのにね(笑)。

ほんとは、子どもがいるから自分を律さないといけない、みたいなのが、長い間、自分の中であったんです。他のお母さんが「飲みに行って・・・」みたいな話を聞くと、いいなって思う反面、「この人たち、子育てどうしようっちゃろうか?」って思ったり。

―――うんうん。そういう人、けっこういると思います。

ちょっとした嫉妬心があったと思う。「この人たちは自由にしてていいな、私はがんばりよるのに」みたいな。それがある日、ふっとなくなって。本当に、ある日、ふっとなくなったんですよ。

―――えー、不思議!

「いいやん、私も行けばいいやん」って。

―――そう思えたのは、息子さんが何歳ぐらいのときですか?

小学校に上がってから。それまで、自分の中でもバタバタしてた時期が終わって、自分にも思いが向くようになったのかな。

―――初めての子育て子どもが小さいときって、ちょっと違う自分になってるような時期ですもんね。生活スタイルもがらっと変わって・・・。

確立できてなかったのかな、って思う。「あたしががんばらないかん!」って思いが強すぎて・・・みんなそうだと思うけど、自分のことが後回しになって。それが、だんだんと子どもにかかる割合が減っていって、自分の割合が増えてきた。今はいいバランスかな、と思います。


◆一人でも平気、一人が好き。クールで冷めていた過去

         

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―――アンケートに、「昔からクールに見られる」って書いてあって。クールってどんな感じですか? 背が高くてすらっとしてるからってのもあるのかな・・・

私、若いときは、けっこう冷たかったと思うんですよ。

―――冷たいって、人あたりとかも?

そうです、そうです。

―――あんまり、愛想よくとかしないタイプ?

愛想よくなかったー。子どもが生まれてからは変わったと思うけど。なんか、キャピキャピするのがダメなんですよ。

―――あー、うんうんうん。

そういうのすごく冷めた目で見てて。

―――女子同士で群れたりとか・・・

あ、もうダメ。いやだいやだ、そんなんだったら、ひとりがいい(笑)。

―――ははははは(笑)。さばけてるんですね。じゃ、周りの友だちもそういう・・・

サバサバしてる子が多かったですね。それに、昔から一人で行動するのも好きで。映画見るにしても、ラーメン食べるのも一人で行ったりするし。

―――好きなように行動できますもんね、一人だと。自由に、効率的に。

基本的に、自分のペースでやりたいんですよね。

―――でも、若いころって、どこに行くにも誰かと一緒って感じありましたよね? 女子は。

そうなんですよ。で、冷めてる私は、「この子たち、自分に自信がないから一人で動けないんだろうな」って(笑)。

―――思ってたんだ(笑)。クールだ(笑)。そういう群れから外れてて、人にどう見られても平気?

全然なんともない。

―――昔から?

昔からですね。

―――強いですね~。ひとりぼっちになるのも、そう見られるのも怖くて、とりあえず同調してグループに入っておく・・・みたいなのって日本人的にあるあるな気がするんですけど。

そういう気持ちはなかったですね~。人になんと思われようと全然平気だから、言葉も行動も冷めてて。でも、私がそうしてると、子どもも同じようにするだろうな、と思うから、子どもが生まれてから変わりました。

―――今、お話していても、とっても柔らかい雰囲気ですもんね。それに、最近は、「つるむ」ってわけじゃないんでしょうけど、すごく仲良くしてるお友だちの女性がいるとか・・・?

そうなんです。職場の人つながりで、たまたま同席する機会があって、それからfacebookとかLINEとかでやりとりしてるうちに仲良くなって。いっしょにごはん食べに行ったり、築城にブルーインパルス見に行ったり・・・

―――すごい。デートみたい(笑)。

LINEとかも、私たちが学生の時はなかったツールですよね。今は手軽にやりとりできて、面白いなーと。やりとりが続いて最後は「おやすみ」まで言い合ったりして、「もうすぐ40になろうとする女2人が何しよるんやろか?」と自分でも思うけど(笑)。

―――この年になったから、肩の力が抜けたお付き合いができるのかもしれないですね。無理はせず、自分らしく楽しめるというか。

                 

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◆あんまり動じない。っていうか鈍感なのかも・・・(笑)

 

―――お話してると、強くてしっかりしてるなーって感じがするけど、ストレスたまったりすることないですか? ストレス解消はどうやってしてます?

うーん、なんだろう・・・・

―――ストレス、あんまり感じないほうですか?

感じない。痛みも感じない。子ども産むときも、なんか朝からお腹が痛いけど、まだ予定日より6日も前だし、「お腹の調子が悪いだけやろ」ぐらい思ってて、でも夜ごはんのあとどうしても痛くて病院に電話して。「そんなに痛いんなら、おいで。帰ってもらうかもしれんけど」って言われて、行って診てもらったら、子宮口が6cm開いてて。

―――ええええ、すごい!!!

―――(ちひろ)あれ、痛いよーーー!!

で、9時ぐらいにすぐ入院して、部屋でしばらく待ってて、痛かったり痛くなかったり・・・11時半に診てもらったら、もう10cm開いてて。

―――ひゃああああ!!

そのとき、私ていろんな感情に対して鈍感なんだなって思った。自分でも笑っちゃって。「道理で痛いと思いました(笑)」って。

―――強いんだろうね。耐性があるっていうか・・・・。ちなみに、まだ1cmも開いてないうちからギャーギャー言ってた私ですが(笑)。

―――(ちひろ)わかるそれ(笑)。

―――でも、ちょっとしたことで、いちいちギャーギャー言ってる人は、そうやって発散してるというか、ためこまないところもあると思うんですよ。逆に、強くて耐えられる人は、ギリギリまでがんばっちゃって、気づかないうちに抱え込んだり、バタッと倒れてからすごく疲れてたことに気づくとか、そういうのないですか?

うーん、あんまりないんですよね。たぶん、小出しにはしてると思う。しゃべって発散とかじゃないけど、今もジョギングとかウォーキングとかしてるんですけど、すっごいストレス解消になるんですよ。汗、だらだらかいて。

―――ああ、わかる! 汗かくとすっきりしますよね。

頭もクリアになるから。あんまり、わーーーってなることはない。

―――そっかー。逆に、しゅーーーんと落ち込むことも?

ないんじゃないかなあ。


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◆ジタバタしないで、静かに時が過ぎるのを待つ。

 

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―――若いときから、そうだったんですか? わーってなったり、落ち込んだすることなく。(←しつこい)

どうかなあ。落ち込むというより、静かにしてた。・・・うーん、うまい表現が見つからないけど。
イヤなことがあったとしても、「ギャーギャー言ったところで物事は変わらない」っていうのが自分の中に根底としてあるから、ジタバタするよりは、静かに時が過ぎるのを待つって感じ。


―――す、すごい・・・! そしたら、過ぎていくんですか? 実際。

過ぎました。いろいろ。やっぱり、時間が解決することが多い。

―――そうかー。「あまり動じないタイプ」ってアンケートにも書いてたもんね。

そうだと思う。そのときそのときで感情の波はあるけど、それに乗ってしまってもどうしようもないな、と思うし。

ずっと前の話になりますけど、私が高校2年のときに、身内が病気で亡くなって。大好きだった人だから、それが、初めての、なんていうのかな・・・・


―――人生での、すごく大きな・・・

ショックな、大きな出来事だった。でも、そのとき思ったのが、それでも時間が止まるわけじゃないし、誰かが何かをしてくれるわけでもない。自分や身内がしっかり立ってなきゃ、みんな共倒れやん、って。

―――初めての大きな出来事で、そう思えたってすごい。

もちろん、しばらくは情緒不安定で、思春期だし、突然泣いてみたりとかはあったけど・・・。倒れたのは、私が9歳のときだったんですね。

―――ああ、じゃあ、ずっと闘病されてて・・・

私がもうちょっと大きくて頼れる存在だったら(闘病中も)支えてあげられたのに、っていう思いもあって。

―――そのころから、子ども心に、いろいろ感じたり考えたりして、だんだん強さや冷静さができていったのかもしれないですね・・・。そういう意味で、周りの子たちよりも大人っぽかったのかもですね。

それはあったかもしれません。

―――自分では冷めてたと言ってたけど、そういう経験が、まさこさんをどこか達観させてたのかもしれないですね。

さらに言うと、私の祖父が僧侶だったんですね。

―――おお!

祖父は私が小さいころに亡くなったんですが、父は仏教の教えを受け継いでいるところがあって、「人はほどほどじゃないとダメだよ」って。“中庸”っていう言葉がありますよね。がんばらないかんときもあるけど、がんばりすぎてもダメ・・・

―――それを、お父さんから聞いたんですか?

そうなんですけど、そのときはふーんと聞いていて本当にはわかってなかったと思う。でも高校がたまたま仏教校だったから、授業中にその言葉を習って、「ああ!」って。

―――「これかー」って。そっか、やっぱり親の言うことって、心のどこかに残ってるんですよね。私たちの子どもも同じだと思うと、責任重大・・・。

親の影響って大きいですね。


◆自分は自分の中にしかない

 

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―――これは「ママじゃな」でお会いする人みんなに聞きたいことなんだけど、自分のこと好きですか? 普段はこういうこと考えないと思いますが。

好きになりました。最近特に。

―――あ、そうなんだー。

やっぱりそれは、自分の時間が増えてきたからだと思う。

―――自分らしくいられるようになった、ってことですかね。若いときはどうだったと思いますか? 想像しにくいかな。

たぶん、基本的に嫌いではなかったと思うんですよ。私、ほんとすごい冷めた人間で。『百万円と苦虫女』って映画があるんですけど・・・

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誰かが「自分探しをしてるんだ」と言うと、蒼井優が演じる主人公が
 「そんなくだらないことしてないで、自分なんて自分の中にしかいないんだから」
みたいなことを、さらっと言うんですよ。それ聞いて、「そうだそうだ、私は昔からそう思ってた!」って思った記憶があります。


―――ほおお。なんか、わかる気がするなあ。まさこさんがそんなふうに思うってのが。

なんか、「自分探し」って言葉に昔から引っかかるものがあって。

―――どっか行ったからって都合よく見つかるもんじゃないよ、ってね。

そうなんですよ。

―――そんなふうに思えるのは、まさこさんが昔から自分自身に満足していた・・・とまではいかなくても、“自分”をちゃんと持ってたってことなんだろうなあ。
 

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子ども子どもの人生を。でも、子どもに世界を広げてもらえることもある

 

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―――お子さんも大きくなるにつれ、“自分”を確立していくと思いますが、お子さんにどんなふうになってほしい、とかありますか? 

特にないです。好きなように進んでほしい。今のところ、まあ順調に・・・優しい性格なんですよ。

―――ああ、優しいっていいですよね。

遊び友だちもいっぱいいるし、そのままの状態で自分らしく・・・やりたいことを見つけたら、それは絶対応援するから、って常々言ってて。彼には彼の人生があるから、親はただフォローするだけ。時には厳しい言葉もかけなきゃいけないけど・・・。そういうスタンスでやってますね。

―――子育てでも、あんまり思い悩んだりしないほうですか?

子どもが何かやらかしたりしたら、ガクッとくることはありますよ。でも本人がきちんと反省して、次どうすればいいかって言えた時点でもう大丈夫だと思うから。子どもを自分の所有物のように見てしまうのだけはやめよう、ってずっと思ってて。自分の思い通りにしないように・・・。

―――そうなっちゃうのって、最初のほうにした話と同じで、自分に自信がないからかもしれないですね。

自分で自分を認めきれてないと、人のことが気になっちゃうんだろうな、って思う。

―――そこから解き放たれたら楽になりますよね。比べてもしょうがないもん。みんな絶対それぞれ違うし。

そうなんですよね。やっぱり、自分は自分の中にあるものでやっていくしかない。でも、自分の中にあるものは、増やしていけるとは思います。これからも新しい自分を・・・。それはちょっと楽しみですね。

―――ほんとですね~。

子どもに自分の世界を広げてもらう、っていうのもあるんですよ。彼はすごく電車が好きで、3歳になる前から、電車の写真が載った本を見て「これなに? これは?」って尋ねて、電車の名前を覚えて。私は全然興味なかったし、移動といえば車しか考えられなかったけど、彼と一緒に本を見てたら私も覚えちゃって、「これ乗りたいね。かっこいいね」とか言って。

―――うちもまったく同じです(笑)。

今ではうちは、電車で行けるところはどこでも電車で行きますね~。電車旅、楽しいですよ。



(おわり)



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[編集後記]

インタビュー: イノウエ エミ

ごらんのとおり、雨はやみました! 奇跡!! 

いつもより短い時間でのインタビューで、しかもまさこさんとは初対面。不安もあったんですが、濃密なお話が聞けた気がしてます。「静かな強さ」とでもいうんでしょうか、聞いていてとても気持ちが良かったです。心で思っていることを、的確に、コンパクトに言葉にできるって、すごいですよね。

まさこさんは強くて賢い人で、それもクールに見られてきた理由かもしれません。誰もが持ち得るものじゃないから。でも、「ママじゃな」世代になった今、彼女が経てきた経験や心の動きに思いを馳せ、共感する人も少なくないのではないでしょうか。彼女のほうも、芯の強さは変わらず、より柔らかく軽やかになってるんでしょうね。年齢を重ねるっていいなと思える、深いお話でした。

雨上がりの空気の中、すらりとした立ち姿がとても綺麗です。

撮影: 橘 ちひろ

久々の再会。中学校からのお友達です。取材できることになってうれしかったー!
エミちゃんが上に書いてくれてる感想がもう全くその通りって感じです。大人になってこうしてじっくり話きけて写真という形で関われて、想像以上に楽しく嬉しい経験となりました。

そして、写真について「気が付けば自分の写真ってなかなかないんよね」って言ってくれました、共感!本当に!正にそうなんですよ(はじめた頃の挨拶文にも書いているんですけど)、母になると子供が主役、そうこうしているうちにささっと子供を前に押し出して自分はおまけポジションに、ってかもう子供だけでいいかな、とか・・・。いやいや、この30年40年だてに歳を重ねていません。自分一人で写る写真、こんなにストレートで素敵です。インタビュー内の「子供は子供の人生を」という言葉が特に心に響いたのですが、ってことは「自分の人生は自分が主役」です!だから30代40代50代、自分が主役の写真をたまには撮るべきなんです(熱弁)!
そんな意味をもう一度思い出させてくれてありがとうー!今度本当に一緒に呑みたいっ。

長身とストイックそうな体型に白くてふわっとしたお肌のギャップ、くしゃっとした笑顔もいいけどふわっとした表情も味わいがある、特に私は横顔が好きです。横顔のアップ写真は「こういう写真が撮りたかった」って写真です。