“ママじゃない私” ポートレート

いつものあなたの、いつもと少しだけ違う顔。いろんなママたちの、「ママじゃない顔」ポートレート。

続いていく日常を ~インタビューと写真、“ママじゃな” ちひろ編~



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実はだいぶ前から私が心の中で温めていた企画、ちひろちゃんにもう一度インタビューをしようの巻を実現しました。
「ママじゃな」を見てて、「こういう写真を撮るちひろちゃんというのは、どんな人なんだろう?」と興味をもってる方もけっこういるんじゃないかと思って。

ちひろちゃんは2010年11月生まれの女の子と、2015年2月生まれの男の子のお母さん。2人目の妊娠中(臨月)にダンナさんの肺癌がわかり、出産3日後に手術。約1年後、肺にまた小さな影が現れて、今夏には転院。食事療法も開始。そんなこれまでのことを、最近、近しい人への報告と自分の整理も兼ねて、facebookに投稿していたちひろちゃんです。今回は、その辺りについても聞いています。

 

◆「なんかいつもカメラ持ってる人」です。

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―――facebookにアップした文章、すごく整理してまとめてあって、変な言い方になるけど、読みやすかったよね。

あ、そう? よかった。読んだ人の負担になったらいけないなーとも思ってたし。

―――ちひろちゃん自身が下を向いてるわけじゃなくて、それなりに普通にっていうか、前向きに暮らしてるのが伝わってきたよ。

よかったー。そんなふうに思ってもらえてたらうれしい。

―――「ママじゃな」の基本の質問やけどさ。ちひろちゃんは、自分では、自分の性格ってどういうふうに思ってる?

うーん。わからんねー。わからーーーん・・・。
あ、なんかね、「写真が好きな人」っていうスタンスがちょうどいいんよね。「あー、なんかいつもカメラ持ってる人ね」って見られ方が・・・楽。


―――それは、カメラのコミュニティの中でってこと? それとも、それ以外の場で?

あ、カメラのコミュニティの中ではね、逆に「子どもがいる母です」みたいな(笑)。でも、子供も大きくなっていくのだろうし、これからはね、そういうのなくして、ばーんと一人で立ち振る舞って・・・みたいとも思うけど。

―――確かに、なんか役割とか属性があるほうが楽ってのはあるかもね。何にもなく、裸でポーンといくよりも。

特に、コミュニケーションってとこで考えると楽やね。

―――10代、20代のころとか、考え込むタイプだったりした?

あー、考え込むタイプだったー。自意識過剰なまでに。よくいえば内省的っていうのかな? 悪くいえば、なんかうじうじした人みたいな。
今はね、もうそんなことないよ。写真のことで言ったら、楽しい、って思って、もっと知りたい上手になりたい、って思うけど、時間が少なすぎるやん、大人って。それでもうけっこう割り切って「ちょっと撮らせて!」って言える度胸がついたなあって思う。いいや、おばちゃんだし。おばちゃんっていいよね。楽。


―――なんか、楽なところにいくってことに対して、若い頃はちょっと否定的だった気がするよね。自分にも他人にも。でも、年を重ねてくるとだんだんね。

楽しむことがまず大事だしね。なんかほら、そういう意味では、夫が癌になってからも思ったけど、結局やりたいことが一番体に良かったりするし。あー、いつか死ぬんだな、って思ったら何でもしとこうって思うし。


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◆神様が手加減してくれた

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―――ダンナさんに癌があるってわかった日、私たち、一緒にいたんよね。たまたまっていうか、一緒にお昼食べようってことになっとって。

そうやったよねー! あのときさ、夫は仕事で私だけが結果聞きに行っていたんよね。もし結果が悪くってがん告知なんかされたらお昼行けんよ、って思っとったけどさ、実際とりあえず行って、スープカレーお代わりしたんよ、私。あれけっこう自信になった!

―――ああー、そうだったんだ。

「あのとき食べれた!」「私、大丈夫!」みたいな(笑)。

―――食べてたよねえ。お腹も大きかったしね。もう臨月でね。

明後日から里帰りします、ってタイミングだったんよね。あのときお代わりできたのが私の心のすごい支えよ。

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―――それからすぐ二人目も生まれて一年半以上経ったけど、ちひろちゃんはその間、よく動いてたよね。
写真にしろ、食事にしろ、治療や転院のことにしろ、いつも何かやったり勉強したりしてたし、友だちや園ママともよく遊んでたし。
家族が病気になったとき、そちらにかかりきりになったり、ふさいでおうちに籠もりがちになったりしても全然不思議じゃないと思うんだけど、ちひろちゃんがそうならなかったのは何でと思う?

わー、すごーくいい質問。
それはね、きっと神様が、私の性格を知ってて、手加減してくれて、妊娠・臨月・里帰り・出産のあたりに、告知と手術を重ねてくれたんだと思ってんのよ、ほんとにさ。赤ちゃん生まれてきたら考え込む暇がないほどノンストップやしね。
私、三番目で生まれて、あまっちょろくてさ、誰かが何とかしてくれるみたいな人生やけん、手加減してくれたんやと思うんよ。


―――自分ではそういうふうに思ってるんだね。私は、それだけじゃなくて、やっぱりちひろちゃんの性格的な強さもあるんじゃないかなと思ってた。

うーーーん? 心の中は、夫のことどうしようっていうのと、写真のこともっと勉強したいっていうのと半分半分でせめぎあってて、それもよかったのかもね。

―――あ、写真のこともなくならなかった?

うん。なくならなかった。不思議よね。だから、癌のことも、本はあるけど拾い読みぐらいしかできなくて、ネットで調べたりするのもやめて・・・写真もしたいしインスタも上げたいけんさ(笑)。だから、人に聞いたら早いな、って聞くようになったりして。

―――転院も、幼稚園で聞いてみたのがきっかけだったよね。

そうそう、幼稚園のお母さんたちで持ち寄りの「雑穀の会」があってね、「これを作ってきました」って一人ずつ話すときに、尋ねてみたんだよ。この人たちならここで話しても許してくれるだろうと思って・・・。

―――言ってみれば、シリアスな話だもんね。楽しい会で。

そう。でもとても親身に聞いてもらえて、詳しい人がやっぱりいて、すぐにいろいろ教えてくれたり・・・。本当にありがたい。

―――そうやって、人に聞けたのが本当によかったしすごいと思うよ。それまでに信頼関係ができてたからだし、ちひろちゃんがそういうときでも心を閉ざさずにオープンにできたってことだよね。子育てしてても思うけど、助けを求めることができる力って大事だよね。

いや~もう背水の陣みたいなとこもあったけんね。

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◆どうしたら癒してあげられるだろう

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―――食事療法のこと勉強して実践したり、すごい愛を感じるよね。お金も時間も費やして、かんたんなことじゃないと思う。

いや~(笑) 自分のためでもあるかもよ~。

―――facebookの投稿に、「どうしたら癒してあげられるだろう」って書いてたのがすごく印象的で。

いや笑っちゃうんだけどさ、なんか、そういうふうに自分が思えたことが興奮するくらいうれしい。

―――あ、自分でもそうなんだ。すごく愛とか母性みたいなの感じたんだよね。

私、三番目でさ、甘えて育ってきたと思うんだよね。好きなようにやらせてもらったし、いるだけでかわいい、自分が幸せなことが両親にとっての幸せみたいな。自分の気持ちが一番大事と思ってわがままに生きてきたからさ。

―――そうやって、いっぱい愛されて大事にされて育ったからできることかもね。自分も、家族に愛情をかけて、大事にできる。

そうだね、しかもさ、今まで夫にもたっぷり見守られて、好き勝手やらせてもらってきたってのもあるかも(笑)。

―――なるほど~やっぱり愛だね~!

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◆夫婦ともに、よく眠れます 

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―――「病気になっても不幸にはならないどこうね」って話したって・・・。

うん、会話的には「不幸とは思わんどこうね」「あ、そうやね」ぐらいだけどね。状況の重大度はいろんなレベルで人それぞれあると思うけど気持ちの持ちようで感じ方は違うと思うんよね。ほら、不幸と思ったら、んー、・・・損じゃん 笑 いや、実際ね免疫学的にも気持ちが落ち込んだら免疫が落ちるわけだし。「幸せー」って思う回数が多い人生のほうがどう考えてもいいしって思って。

―――病気のこととか、生活の仕方を変えるとか、いろいろ話して決めたの?

散歩を始めようとか食生活は私主導なとこが多いんだけどね。

―――ダンナさんのほうで、そういう変化に抵抗感はなかった?

うん、意外にない。もっと抵抗あるかなって思ってたけど。

―――そうなんだね。夫婦で話し合えるのは大事だね。

大切だよね~ほんっとそうだよね。ほんと夫婦の時間ほしいなあと思う。なんか、小さい頃の話とかいっぱいしたりさ。

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―――最初にわかったときは、彼は落ち込んでた? やっぱり・・・。

んー。わかりにくいね。ただひとつ言えるのは、不思議とよく寝られる。私もだけどね。

―――ずっと? ちひろちゃん、眠れないことは?

うん、ないよ。写真の作業とか、好きなことしてて寝れないときはあるけど(笑)。

―――手術のあとは3か月ごとに検査があって、毎回検査前は夫婦でとても緊張してるって・・・不安だよね。

うん。自分は不安になるとイライラするってことがわかった(笑)。そのイライラが家族にも向かっちゃうんだよねー。

―――そういうときは、どうしてる?

延長保育を頼んで預けたりするのもいいよね。子ども子どもらしくいられる場所って大事だなあって思う。


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◆きらめいて見える瞬間を

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―――自分の写真についてはどう? 「ママじゃな」を始めた頃から比べても、ずいぶん進化したように思うけど。なんか写真のことわかってるみたいなこと言ってるけど私(笑)。

いやいや、言って言って。まだまだ、表現というよりは技術を得始めているっていう時期だけどね。

―――感性みたいなのが爆発するようになった感じがするよ。技術がついたからそう見えるのかな?

あ、そうかもね。たとえば、このコップを撮るにしても、いろんな撮り方に今のほうが気づいてると思う。角度とか光とか、カメラの操作でいろんな表現方法があるなって。
10年くらい前にさ、撮るのやめちゃったときは、どう撮っても同じような写真になっちゃって、光にばっかりこだわってたからかな。そこらへんの反省点も今はわかる。


―――技術的に行き詰まってたから、気持ち的にも行き詰まっちゃったのかもね。

同じ瞬間ってのはないからさ、撮り続けたらもっといい瞬間を切り取れたりするから、そこらへんが進めたらうれしい。

―――ちひろちゃんの写真人生で、写真を撮らなくなってたブランク時期がある、ってのは、案外重要かもね。

ふふふ。なかなか、オツなもんですよ。


(後述:今と昔の自分はきっと違う・・・っていうちょっとした自信も少し出てきたのです。昔はモロかったなぁ~しみじみ 笑 あと、「ありがたみ」や「時間の貴重さ」「続けることの価値」なんかも少しは理解できるようになりました。)

 


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―――写真を撮る人の目ってどんな感じなんだろ。ちひろちゃんの写真もだけど、日常を撮ってるの見ると「あ、こんなに素敵な瞬間があるんだな」って思う。普通の目では見逃しちゃってるような瞬間・・・

写真を趣味にしてる人でも、そうだよー。インスタとか見てると「写真してなかったら、こんな瞬間に気づいてなかったなあ」とかキャプションついてること多いね。ほんとそう。きらめいて見えるよ。

―――撮る前に、もう、ちゃんときらめいて見えてるってことだよね。

そうー。ある意味、冷静な目で見ないと撮れないとこもあるけどね。カメラの設定とか。

―――「これは素敵だな」って見えた通りに撮れるの? 撮ってみてから、「思ったより素敵だった」とかなる?

両方あるんだけど、今Lightroomっていうソフト使ってて、パソコンの中で現像できるんよね。色合いや明るさを調整したり、下半分を少し明るめにぼやかしたり、それを使い始めてからは、そのときの感動を思い出せるように仕上げることができるようになってきた。

―――あー、じゃあやっぱり感動に近づけるように調整してるんだよね。もともと目で見た感動に。それはやっぱり感性の世界だよね。写真やってる人や映画を撮る人とかって、目そのものがファインダーっていうか、みんなとは違うものを見てるんだろうなって感じる。

意外に狭くていいんだよ。写真撮るって。それが面白い。

―――そっかー。目は無意識に広く漠然と見てるからね。

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(「へ?ここで撮ったの?」ってくらい小さいスペースで写真が撮れるのも面白い。)


◆光と空のギフト

 

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―――ちひろちゃんは日常の写真をよく撮ってるけど、それって日常を見る目が豊かになって、日常そのものを豊かにしてくれるものかもしれないよね。

うん、ほんとそうなんだよー、めっちゃラッキーって感じ。写真が趣味で。

―――日常がとってもポジティブになるような気がする。

なんかね、光って、どこにでもあるやん。空もそうなんだけど、誰でもその美しさに気づこうと思えば気づけるし、空も見上げようと思えば見れるよね。感じ方はそれぞれだけど、でもだいたい、空はきれいやったら気持ちいいやん? 

それはさ、お金持ちでも貧乏でも、ハッピーでも今とても大変でも、厳しい生活をしてる人や戦争がある地域でもさ、みんな平等に見れるやない? ほんと、光って降り注いでてさ。ギフトだなあって思う。


―――ほんとだねえ。そういうことって、昔から思ってた?

いやいや最近。去年の今ごろに思ったんだよね。ほんと平等だなーって。秋は特に光が美しいからね。
ただ、自分が気づかないとね、気づけないんだけどね。


―――ちひろちゃん、前にさ、「そういう日常の美しいものを美しいと感じられなくなったらどうしよう」っていうようなこと書いてたよね。ツイッターだっけ・・・。

あ、うんうん。書いてたっけね。

―――それもわかる気がする。やっぱり、美しいものに気づけない、美しいと感じられなくなるときもきっとあるよね、人生いろんな状況があるから・・・。
でも、やっぱり普段から心がける、っていうとちょっと違うけど、普段から感じるアンテナを立てておくほうが、気づきやすくなるってのはあると思うんだよね。

そう。気づかなくなっちゃうからね。

―――で、写真に撮ると残るから、それがまたいいよね。撮った写真を見返すと、すてきな瞬間を積み重ねて暮らしてるんだ、っていうのが実感できる。私も日記書いててさ、楽しかったことや感動したことをたくさん書くようにしてるんだよね。

そうだねえ。

―――なんか、語り残したことない? これは話しときたい、みたいな。

いやいや(笑)。光と空が平等だなーって話ができてよかった!!

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【編集後記】

インタビュー:イノウエ エミ

大好きな友だちは、尊敬すべき友だちだった。
と、この2年近くのちひろちゃんを見て思っています。
きっと誰の人生にも、いろんな不安や苦しみに襲われる時期はある。そんな時期にも、美しいものを見て美しさを感じること。毎日の小さないろいろを楽しむこと。ちひろちゃんを見ているとその大切さがわかります。それは、苦しい時期には難しいことですが…。だからこそ普段から大切にしたい。美しいものを感じられる目をひらいておくこと。窓を閉ざさず開けること。外に出て季節の匂いを嗅ぐこと。
路上の花の思わぬ生命力や、眠たげな子どもの顔や、投げ出された赤いタイツ、ビルの上の鱗雲…落ち葉のじゅうたんに伸びる長い影・・・。
この写真たち! ちひろちゃん家族はいつのときも祝福されている。そう思います。それは私たちの家族、私たちの人生も同じ! 光と空はいつもみんなに降り注いでいます。どんなときも。

・・・あら? なんかちょっと、宗教っぽい文章になっちゃってるかしら?(笑) 普段は私たち、他の友人や子どもたちも含めて集まって、美味しいもの食べてご機嫌で飲んだりしながら、他愛ない話をしています。


写真:橘 ちひろ

いや~!ありがとうございます!
なかなか上手く文章でまとめられないでいるのでエミちゃんにまとめてもらって本当嬉しかったです。
本当、エミちゃんって聞き上手の聞き出し上手の汲み取り上手♡
例えば全くしゃべらない相手でも一記事書けちゃうんじゃないかと思います 笑 いや、本当に!
写真はインスタグラムにアップし続けている日々のスナップから抜粋しました。




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