vol.22 こんどうしず の 「ママじゃない私」 ポートレート
双子ちゃんのママ、しずりんは、インタビュアー・エミの小学校時代からの親友です。結婚して今は関東に住んでいる彼女が帰省してきたところを、はっしとつかまえました。
「ママじゃな」を始めたとき、まずは身近な友人知人にモデルをお願いしてきたのですが、彼女はその頃まだママじゃなくて、お腹に赤ちゃんズがやってきたのはそのあとだったんですよね。しずママに取材できる日が来てくれしいな。・・・とはいえ、「ママじゃない彼女」は昔からよくよく知っているので、今回は「ママになった彼女」の話もたくさん聞いています。
◆出会って四半世紀、ママになって“暗黒期”も経験・・・
―――私、小学5年の5月に転校してね。転入先のクラスの学級委員が、しずりんだったよね。それから仲良くなって。
―――(ちひろ)あ、そうなんだー!
そんな、やりたがりな時期もあった(笑)。
―――中学でも一緒にソフト部に入ってね。彼女が部長で。
それは、やりたがってない(笑)。
―――部長は、前任者からの指名制だったよね。しずりん、人望があったけん。
いやいや。まー、こんなに長いお付き合いになるとはね。お互いお母さんになってるなんて、びっくりだよね。
―――ほんとにね。でも、しずママは今すごく大変で、今回のアンケート書いてくれたのも相当、闇な時期で・・・回答も暗めで・・・
いや、あれからさらに病んだから(笑)。
―――あらっ、あのとき、まだ底じゃなかったと? 2月ごろだったよね。
あのときはお母さんが来てくれとったけん、あとから思えば楽勝やった。そのあとお母さんが帰ってからがね・・・
―――闇の時期はどうなってんの?
今すごい頻回授乳で、すぐおっぱいに寄ってくるわけよ。それが1日中ずーっとだから、ほんとイヤになっちゃって、両腕にこう2人を抱えながら、敷いてるマットに、猫みたいにガリガリ爪を立てて・・・
―――おお・・・
子どもたちがキーキー叫んでたら、一緒になって私もギャーって言ったりして。
―――ああー・・・
まあね、冬で窓も閉めきってるから、隣近所には聞こえないだろうと思ってたら、ある日突然、上の部屋の人がポンカンを持ってくる事件が!
―――うわあ!
引っ越したとき挨拶したきり、二度と会ってない上の部屋の人が、ポンカンのおすそわけを(笑)。ダンナが「様子うかがいに来たんじゃないの?」って。うるさくしてるから・・・
―――もしかしたら何ごとか、事件の気配が…って?
結局、真相はわからないんだけどね。それぐらいキーキー、子どもと一緒にうるさくしてる。あと、暴飲暴食がひどい。甘いものすごい食べちゃう。
今もう歩けるようになってきて、自己主張する分、ずーっとついてきたり足に絡まってきたりさ、それがかわいくもあるんだけど、やっぱイラッとしちゃうときあるんだよね。なんか、虐待とかでニュースになるやん。しちゃう人の気持ちが分かるっていったら変だけど、わからんけどさ、その瞬間的な・・・
―――そのときの衝動、「んもうー!!」って気持ちがわかるよね。お母さん自身が追いつめられてる。
一概にその人だけを責められないというか、周りがどうにかできなかったのかなとか・・・
―――夫や両親とか、近くに誰か力になってくれる人がいれば、そういう衝動も落ち着くけど、ずっと母子だけだったりしたら、落ち着くヒマがないもんね。で、エスカレートしちゃう。そういうメカニズムが理解できるよね・・・
なんか、息抜きって大事だなって思うよね。ガス抜きというか。
◆「自分の時間」って何ですか?(泣)
―――事前アンケートで「自分の時間はありますか?」っていう質問があるんだけど、「ない!」って、これほど断言するモデルさん初めてよ(笑)。
うそっ。そうなん?
―――しずりんは、今までの「ママじゃな」で、“ママ歴”が一番若いモデルさんだから。第一子、1歳児、しかも双子。ほんと大変だよね。
何をもってして自分の時間というのかわからんけどさ。よく「“ながら授乳”はやめましょう」とか、言うやん。
―――「赤ちゃんの目を見て語りかけながら」とかね。
いや無理やし、と。授乳してる隙にLINEを返したりとか、テレビ見たりとか。それが自分の時間といえば自分の時間かもしれないけど・・・
―――いや、それは自分の時間には入らないよね。ただのスキマ時間で。
寝かしつけで自分もウトウトしてきたら、そのまま一緒に寝た方が体にはいいんだろうけど、半眼みたいな状態で意地で起きちゃったりして。
―――あーわかる。せっかく子どもが寝たんだから、何かしないともったいない気がするよね。ほんとは、そんなフラフラ状態で起きてても大したことできないんだけどね。
見てないDVDとかもたまってるけど、見るならちゃんと1から10まで全部みっちり見たいのに、いつ「ふぇ・・・」とか言われるかわかんない。そんな怯えた状態で全然集中できないよ!って。だからツムツムぐらいしかできない。
―――ツムツムしてんだ(笑)。
ツムツムぐらいよ、癒しは(笑)。
―――ほんと、いつ呼ばれるかわかんない、って気が休まらないんだよね。呼ばれたら待ったなしだし、いつ終わるかわからんし。
だから、買ったけど見てないDVDとか積んである。Amazonで買ったけど未開封の写真集とか。
―――写真集ね(笑)。(※何の写真集かは、後述(笑))
◆ダンナには感謝してるけど、地蔵にはなれません!
時々、休みの日にダンナに子どもたちを預けて出かけるのはリフレッシュになるんよね。
―――ダンナさんえらい。がんばってる。新米パパが同時に2人見るんだもん。
有難いなーと思ってる。でもさ、ちょっとね、「一人で子どもたちを見て、このガリガリする気持ちを味わってみろー」とか思っちゃうとこもあって。
―――わかるわかる(笑)。しんどさを体験してほしい(笑)。
それがさー、私がいないならいないで、けっこう平和に暮らしてるんよ。うちの母親が見てるときもそうなんだけど、やっぱりおっぱいをくれる人、くれない人って子どもたちもわかってるんだよね。
―――ああー。おっぱいおっぱいってグズグズせんのやね。
帰ったら「キャッキャ遊んでたで」とか言われて、えええー、って。
―――ガリガリしたくならんかった?って(笑)。
「寝てる間、掃除してたわー。あそこと、ここと、網戸洗った」とか。
―――えらい! えらいけど・・・うれしいけど・・・
―――(ちひろ)なーんか狙いと違うんだよねー(笑)
逆にちょっとイラッとする。そんなエピソード求めてない!(笑)
―――ゲッソリ感が欲しいのに(笑)。
そのうえ、「こうしたらいいんじゃない?」みたいなアドバイスされちゃったりして。
―――「おまえが言うな」だよね!! これぞ、ネット用語の「おまいう」案件!
私が、イライラするイライラするって言うと、「子どもなんてそんなもんやろ。怒ってもしゃあないやん」って。そりゃ、家で奥さんがイライラしてるとダンナもイヤだろうなと思うけどさ。なんか、アドバイスとかされると、無能感みたいな・・・。
―――あー、それ! 募るね。
なんか、「私がダメなの?」みたいな気になってくるんだよね。こっちだって精一杯やってるし。「地蔵じゃねーよ!」って。
―――地蔵(笑)。や、イライラもするよ、誰だって。しかも双子ちゃんだもん。そこは、言い争いにはならんと?
なっても堂々巡りやけん、だんだんめんどくさくなって、「はいはい、わかりましたわかりました、私が明日から・・・」
―――地蔵として・・・(笑)
「歯ァ折れるまで食いしばります!」みたいな。にこやかに、とか無理だから。「爪は丸めます」って(笑)。
―――地蔵マインド(笑)。
や、すごく子ども好きなダンナで、いるときはよく遊んでくれるしあやすのも上手やけん、それはほんと感謝してるんだけどね。
◆教職はとったけど・・・
―――さっき、「無能感」って言葉が出たけどさ、ほんとそれな。
初めての子育てって、「私ってダメだな、うまくいかない・・・」って気分になりがちな気がする。
しずりんは昔から、勉強も運動もピアノとかも、割と何でもできたほうだから、なおさら、自己否定みたいな気持ちって初めてじゃない? 子どもの頃、劣等感とかあった?
ううーん。でもまあ、中学くらいになると、「あ、これは無理。向いてないな…」とかわかるやん。そういうことに関してはあきらめが良い気がする。
育児は、自分がせざるを得んけん、あきらめるわけにはいかんけん、ぐるぐる悩むよね。悩んでもどーにもならんのやけど。
―――そういえば、子どもの頃から、何かになりたいとかなかったの? しずりんなんてスペック高い人から、たとえば東京の大企業で働くとか、専門職に就くとかいう道もあったんじゃ?
いやー私ね、食べていくためにちゃんと続けられる仕事を、っていう気持ちはあったけど、それぐらいかなあ。
―――そういえば大学で教職とってたよね。教員免許持ってるよね?
そうそう。でもね、1年生時点で「あー、あたし向いてない」って思った。
―――早っ。むしろそのモチベーションでよく教育実習まで行ったね(笑)
もう意地だよね(笑)。先生になりたいっていうより、それぐらいしか思いつかなかったっていうか。
あのさー、小さい頃って、お花屋さんになりたいとかケーキ屋さんとか言うけどさ、そこからそんなに広がらなくない? 知ってる職業って。
―――そのレベルに留まるよね。で、高校生ぐらいになると、お医者さんとかパイロットとかそういうのは自分には無理だとわかってくる。
だから、もっといろんな職業を知れてたらよかったなとは思う。
女一人でも生きていけるように・・・って考えたとき、「先生なら」って思ったけど、ほんとは女性の仕事なんてもっとたくさんあるのに、知らなかったからさ。
◆ママになるまでの宙ぶらりん期
(取材後半、めいっぱい遊んで眠たくなったふたごちゃん。インタビュー担当のエミも一人を抱っこしながらインタビュー・・・の図)
―――今の話でいくと、結婚するときに仕事を辞めたのは、イヤじゃなかったと? もちろん、彼が東京転勤になったから辞めざるを得なかったわけだけど・・・
あー、そのときはね、もういいかなって。外に出ることが多い仕事だったから、もう日焼けしたくないとか、朝4時起きって何なのとか、そのときはそういうのがきつい時期やったんよね。
―――そういう感覚も変わっていくもんね、年を重ねると(笑)。
で、東京ですぐ仕事を探せればよかったけど、そのころ彼が転勤の多い仕事だったから、長く働くにも・・・
―――そうだよね、そのあと大阪転勤もあったもんね。
でもしずりん、結婚後に社労士の資格とったよね? そんな簡単に取れるもんじゃないはずだけど(笑)。
そう、それで大阪で社労士事務所で働いて、そのあと、ダンナがまた東京転勤になってからも、面接には行ったんだよね。
でもさ、まぁいい年した既婚者だから、「お子さんは?」って聞かれるよね。そのときはまだいなかったけど、「いりません」ってわけでもないし、「えーっと・・・」ってなって・・・
―――残念ながらお祈りされたんだね。(※「就活 お祈り」で検索してください)
ま、別にそういうの関係なく単に私が至らなくて落ちただけかもしれんけどね(笑)。にしても、やっぱり子ども欲しいなと思ってたけん、そっちが先じゃないと、本腰入れて仕事って難しいのかなって思って。
―――うんうん。
でもなかなか子どもできなかったけんさ、ボサッとしてるだけっていうか、「あたし何してるんだろ」感はあったよね。
働くなら働くなり、子育てがないならないなりに、なんかもうちょっとしたほうがいいのかな、って。でもやっぱり子どもは欲しいから、ガッツリ正社員ってのも・・・って堂々巡り。
―――宙ぶらりんな感じだよね。わかる。女子って30くらいになると、「しっかり仕事してます」か、「子育て真っ最中です」か、はたまた「子育てしながら仕事してます」って人が多くて。どれでもなければ、「私っていったい・・・?」みたいな感じになるというか。
◆「ママじゃない私」は、ただのオタク?(笑)
―――ママ友とかのお付き合いも出てきたと思うけど、どうですか?
前に住んでたところで同じくらいの子どもたちのママの集まりに行ったりしてたんだけど、去年の秋に引っ越しちゃってね。
―――ママ友、欲しい? そういう集まりは楽しい?
うん。子どもたちも、今日みたいに遊び相手がいたら楽しそうだったりするし、私も、同じくらいの子たちが今どんな感じなのかってわかるのはいいんだけど。時間に合わせて出かけるっていうのが今大変だったりしてね・・・
―――昔っからの友だちだから思うのかもしれないけど、しずりんって子どもができてもあんまり「ママ感」を醸し出さないよな、って。第1子って、超・親ばかな感じになってもおかしくないのに・・・
えー、そう? 自分では相当親ばかな気がしてたけど。
―――いやぁ、おとなしいほうよ(笑)。facebookの投稿とか見ててもそう思う。もちろんすごくかわいがってるけど、なんていうのかな、「私、ママでーす♪」って感じがないっていうか、親ばか感を外にださないっていうか。
―――(ちひろ)なんかかっこいい。ドライな感じ。
―――そうだ、トンペン(=東方神起のファンのこと)的なことも、しゃべっとく?
あ、東方神起をどうぞよろしく。ちょっと今、兵役に行ってるんですけど・・・
―――彼らのどこが魅力的ですか?
いやもうなんだろね、顔・スタイル・踊り・パフォーマンス・・・(←すべて好きすぎてうまく説明できないご様子)。
―――パフォーマンス、ほんとカリスマ感あるよね。J-POP的な、甘ーいラブソングを日本語で歌ってるイメージがあるけど、そうじゃないやつも見てほしいんだよね(←かつて、しずりんに布教を受けた人(笑))
そうそう。彼らの魅力はそれだけじゃないからね、全然!
―――ダンスも歌唱力も、カリスマ的なんだよね、パフォーマンスが。プロ意識もすごいし・・・それでいて、素に戻るととってもおちゃめだったりね。
でも今、彼らが兵役行ってる以前に、ご時世的になかなか韓国のアーティストはテレビに出られなくて。
―――ゆゆしきことだよね。コンサートチケットの争奪戦とかジャニーズ並みにすごいのに、そんなに人気あるのに、テレビとか全然出られないって、完全に政治的事情だったり、ケンカンっていうの? 国民感情だったり。
ぱったり出なくなったもんね。
―――(ちひろ)兵役って、いつ帰ってくるんですか?
来年ですね。2年間だから。
―――こんなに近い国なのに兵役のこととか良く知らんよね。芸能人でもホントに行くんだねーとか。
あんだけ稼いでるのにお金で解決とかないんだよね。
―――アイドル事情ひとつとっても、ジャニーズともEXILE系とも違う。お国柄ですな。
いやほんと、機会があれば見てください。youtubeで。私、彼らを知る前と知った後で人生変わったんで。
―――すげぇな(笑)。てか、やっぱりさ、ちょっとマニアックなとこがあるから、「ママです♪ 親ばかです♪」って感じにならんのかね。
―――(ちひろ)子ども以外にもすごーく好きなものがあるって、いいね。
まあ、「ママじゃない私」は、ただのオタクだからね・・・
―――(笑)
(おわり。)
【編集後記】
インタビュー:イノウエ エミ
あらゆるマンガを貸し借りし、ソフト部では一緒に顧問の鉄拳制裁を受け、恵方巻が流行れば一緒に丸かじりし、互いの結婚式でスピーチを読み合った我々なので、あらたまって取材なんて恥ずかしくもありつつ、やっぱり楽しかったー!
ただでさえ初めての子育てって大変なのに、双子となると倍増以上だよね。しんどい部分を赤裸々に語ってもらったけど、双子ちゃんはすくすくのびのびと育っていて、人なつこい笑顔や、好奇心&食欲旺盛なところをたくさん見せてくれました。
インタビューには収録しませんでしたが、「世の中にいろんな職業があって、いろんな選択肢があることを子どもに教えたい」という話から、「じゃあ、どうやって教えたらいいんだろう?」って話にも。みなさん、どう思いますか?
しずりんの話が面白おかしいので終始ゲラゲラ笑ってたんだけど、子育てにしんどくて孤独な側面があること、仕事でも子育てでもない女性の「宙ぶらりん期」、そして子どもに何をどうやって教えていくか・・・・と、なにげに示唆に富む話題が多かったなと思います。
まぁとりあえず、これからもお互いがんばろう。友だちが元気でいてくれるってそれだけでうれしいものです。てか、知ってたけどスタイルいいな! 足長いな!!
あ、この日は赤ちゃんの数が多かったものですから、ちひろちゃんの友だち・ちづちゃんがベビーシッターするよとお手伝いに来てくれたんです。ちづちゃんありがとう。今度はモデルお願いします(笑)。
インタビュー:橘 ちひろ
久々の取材!とても楽しかったです。しかも初の試み、我が家での撮影です。
自慢の白壁撮影スペースも位置を考え直しより安定した自然光を得られるようになったかな。
「ちひろスタジオ」って呼んでください (笑)!!
近所には緑が楽しめる秘密の小道もありますよ~。
ということで今回の被写体さんはしずさん、抜群のスタイル、カメラにもびくともしない自然体、自然体だから笑顔が美しい!どうしたらこんな風になれるんだろうって思いました。
インタビューを聞いていて納得でした。自分をしっかりと受け入れながらも見定め・割り切りがしっかりとしています。
あ、でも読んでの通り、とても冷静なのにお話はざっくばらんで最高の面白さでしたよ。
さすが親友同士のインタビュアーエミちゃんとの掛け合いも気持ちの良いリズムで!
最後のショットはいい機会だから子供たちも一緒に・・・と個人的に撮らせてもらったのですが、かなりいい感じに撮れたのでしずさんに承諾をいただいて掲載させていただきました。
そっくりな二人を両手にしっかり抱っこするしずさん。この感じがたまりません♡
隣の和室でとても楽しく遊んでくれた4人の1歳児たち、そしてベビーシッターに来てくれたちずちゃん、本当に奇跡のインタビュー&撮影タイムでした。special thanksです。