特別編:【ヌードという表現】 圭子さんの被写体活動に迫る。
数か月前から、「ママじゃな」の撮影担当、ちひろちゃんが一人の女性のヌードを撮り始めました。
その写真が、とてもいい! それで、私と同じような、子育て中のお母さんたちに見てもらいたいなぁと思っていたところ、いろんな流れで、モデルの圭子さんご本人にインタビューさせてもらえることになりました!
※記事の最後のほう、ちょっとヌーディな写真がありますので、ご承知おきください。
また、別ページに、ちひろちゃんが撮った圭子さんの作品集を載せています。記事を最後まで読んでみて、もしも興味が湧いたら、リンク先をクリックしてごらんください。
◆写真大嫌いだった私が被写体になったわけ
―――ヌードの撮影も、びっくりするほどあっけらかんとしてるんですね。なんか全然、違和感なかった。
そうですね。ちひろさんとはこんな感じ。カメラマンさんや、そのときの方向性でいろんな現場がありますね。
―――被写体の活動はいつからされてるんですか?
30才からです。8年前くらい。
―――そのきっかけは・・・
地元の久留米でアマチュアバンドのライブイベントを主催してて。イベントを撮ってほしいなと思って、mixiの写真系のコミュニティに入ったのが一番最初かもしれない。
―――そこから本当に撮られるほうにいくには、もう一段階あるんじゃ?
よくある話ですけど、昔から自分にものすごく自信がなくて、必要以上にブサイクだと思い込みすぎてて。ちょっと悪いことがあると「見た目こんなんやし、しょうがないな」って思ったり・・・。
そういうの良くないなとずっと思ってて、撮られることで自分を受け入れていけるかな、と。
―――それで、「撮ってください」と自分から手を挙げた?
そうです。
―――すごく考えがあって、始めたことなんですね。実際に撮られてみてどうでしたか?
今思えば、綺麗にしていただいて撮ってもらったんだけど、「あ、やっぱダメだ」が最初かな。自信をもって表には出せなかったですね。
―――それでも、やめようとは思わなかった?
そうですね。
私、友だち同士で「写真撮ろう」ってなっても、「私いいわ」って逃げるような・・・そのくらい、写るのが嫌いで。そういう思いするのが嫌だったんですよ。だから、“克服してやるんだ”っていうほど前向きじゃないんだけど、うーん何かもうちょっと続けてみようかな、って・・・
―――なにか心にひっかかる思いがあったんでしょうね。
でも、プロのモデルさんじゃないから、依頼されるんじゃなくて、自分からその都度、手を挙げないと撮ってもらえないですよね。。。?
そうですそうです。
そういうのって一般的なイメージで若くてかわいい子がするものじゃないですか。
30にもなって、ポーズができるわけでもなく、自信もってカメラの前に立てるわけでもなく。だから最初のころはお返事がくればいいほうで、きてもお断りされるほうが圧倒的に多くて。
というか、私も、突撃する方向が間違ってたんですよね。若くてかわいい子を撮りたい人のほうに突撃してたし、私にも「被写体は見た目が良い人がやるものだ」って固定概念があって、「あー、もうやだ」としか思えなかった。
―――なるほど、そこがミスマッチだったんですね。でも、そういうのも、実際にやってみないとわかんないもんねぇ。
もう最後にしよう、と思って頼んだ方が、たまたま、綺麗な子を綺麗に撮りたいわけじゃなくて、内面を撮りたい人で。初めてカメラを持ったような、1こ年下の女の子だったんですけど。その子にとってもらえて、なんか光が見えたんです。
こんな私でもやれる世界があるっていうか、しっくりくる世界があるかもな、って。初めて見た目を気にせずに、自分の写真を見れた。
◆まず「わーい」の一言から始めました\(^o^)/
―――バンドのイベントを主催してた、って話・・・
最初はライブを「わー、かっこいいな」って見てたんですよね。でも、ずっと長いこと見に行って、打ち上げまで呼んでいただいても全然しゃべれなくて、じーっとしてて。
「この人たちとどうにか楽しくお酒を飲めるまでならないかしら」とか、「好きな人たちを好きな順番で見れたらどんなに面白いだろう」とか思ってたんですけど・・・
―――その段階から、イベント主催までこぎつけるのすごくないですか?!
周りの方に恵まれてたのかもしれないです。すごく協力してくださって。
―――自分から発信するのは、苦にならないですか?
んー、好きなものを好きと言うだけですからね。
でも、前は人前で気持ちを出すのがすっごく苦手で。飲み会に行っても、怒ってるんだか機嫌悪いんだか?って思われてたと思います。
―――あ、圭子さん自身は、ほんとはわくわくしてるのに?
そうそう。内心、すごいテンション上がってるんですけど(笑)。それで、うれしいとき楽しいときに「わーい」だけでも言ってみよう、って。喜んでるのが伝わらないのって淋しいから。
―――なるほど、「わーい」の一言から始めるんだ!
絵文字の「わーい」ってあるじゃないですか。\(^o^)/ ←こんなの
―――いいかもいいかも。絶対喜んでるってわかりますもんね!
(ちひろ)圭子さん、「わーい」のイメージある!
◆ 誰もが日々、表現してる
―――そうやって、感情とか、思ってることを表現するってすごく大事だと思う。なかなか、そういう機会がなかったりするけど・・・
日本人って表現するのは苦手なほうだろうけど、表現って、何か立派なものだっていう固定概念があるのかも。ほんとはみんな、日々何かしら表現はしてますよね。お料理だってそうだし、今日何着ていこうかな~とか。
―――そっか、それが表現だと気づいてないのかもしれない。
私みたいなことしてる人がえらいのかっていうとそうじゃないし、芸能人がえらいのかっていうとそうでもないし、たとえば有名な芸能人が私と同じ介護の仕事できますか?っていうと、きっとそうじゃない。
立場って本当は対等なんだけど、固定概念が強いと、やっぱり有名な人のほうを見上げちゃう。
―――うんうん。表現も人間関係も、ほんとは全部フラットなんですよね。圭子さんは、いつからそういう境地にたどりついたんですか?
うーん。あんまり深く考えてなかった気がするけど。ヌードを撮り始めたこととは関係あるかな・・・。
実は、ヌードを始めてから2年くらいなんです。服着てる期間のほうが長くて。
―――あ、そうなんだー! (あらためて文字で見ると、「服着てる期間のほうが長い」っていう説明、なんか面白いですね(笑))
「私、こういうことやってます」って言えるようになってきたのも、この1年くらい。それまでは、「いや、ただの物好きで…」とかそれくらいしか言えてなかったですもんね。
―――言えるようになったのは…。
「私これをやりたいんだ」って明確になってきてからかな。
◆ すっぽんぽんになってみたら・・・?
今回の取材は共通の友人・サニー安田さんに立ち会っていただき、この撮影現場を撮影(笑)していただきました。
photo by sunnyとクレジットのある写真たちです。ちょっとフェティッシュで茶目っ気のある作風がステキです!
●サニーさん(安田クニヒデさん)主宰のブログアパートメント【 Life is Mine 】]
http://lifeismine.me/【ママじゃな】でも以前サニーさんの取材記事つくりました
http://mamajanaiwatashi.hatenablog.com/entry/2015/07/13/124158サニーさんによる、この日の撮影風景のスライドショーです!
https://www.youtube.com/watch?v=G7iyE6O78Eg&feature=youtu.be
もともとは必要がない露出は一切したくない派で。でもあるとき撮影中に、「こんなのが撮れてるよ」ってカメラを見せてもらったとき、「あー、これはヌードのほうが面白いんじゃないか」って思って、「やってみていいですか?」って言ったんですよね。
―――えっ、じゃあ、その場の思いつきで?
そのときスリップ1枚で撮影してたんですけど、布が一枚あるだけで、思考がとても女性的になってるんですよ。見えてはいけないものが見えてるんじゃないかとか、はみ出てはいけないものがはみ出てないかとか。
脱いでみると、隠すものがないから、思いきり「どや」ってやれる。気持ちが切りかわって、すごく気が楽にカメラの前にいられるようになって。
―――う~~~~~、面白い!!
そこが面白くて、(ヌードを)追求してるのかもしれない。
―――昔から、芸術家も裸婦の絵や彫像をたくさん作ってきたけど、「ヌード」って聞いたら、どうしても、みんなグラビアみたいなほうをイメージしますよね。
それも固定観念を植え付けられてるっていうか・・・日本の芸術って、エロ発祥が多いのかなって気もするんですけど。
―――私、コンビニのはじっこで売ってるようなエロ本の表紙とかは全然いいと思えないんですけど、圭子さんの写真はそういうのとは全然違うなあって。
きっとあれは、完全に男性が主(しゅ)で、男性目線のために、男性が喜ぶだろうことをやってるわけじゃないですか。もし私の作品が、“ちょっと違う”というふうに見てもらえるなら、こちらが主で発信してるからかなあと思います。
―――うんうんうん。とても主体的ですよね。
誰かを喜ばせるためじゃなく、自分がそうしたくてしたいようにやってる。いえ、もちろんグラビアの業界に携わってる方たちも、きっと誇りをもってやってらっしゃると思うんですけどね。
―――そっかー、私は、女性の性を消費されてるような気がするようなものに嫌悪感をもつのかも。結局、「若くてかわいくてスタイルが良い」っていう記号に興奮して消費されて、冷めたらポイッて捨てられるような・・・。
圭子さんの写真は確かに自分主体だけど、あんまり自己顕示欲も感じないんですよね。「私を見て! どう?!」みたいな感じじゃなくて、さらっとしてる。
そういわれたことあります。きっと、私は自分のためにやってるから、人に見てもらうとうれしいけど、褒められて満たされるわけじゃない。「いいね」が100個ついた、ってうれしい人もいると思うけど・・・。
―――承認欲求でやってるわけじゃない、ってことですよね。
私はそこにはまったく興味がなくて、「前よりちょっと自分を好きになれたかな」とか、そういうときにすごく喜びを感じています。
◆ 十年たっても、裸の写真を
―――介護のお仕事をされていますが、職場の人たちは被写体活動のことは知っていますか?
チラッとは知っていても、まさかヌードだとは思ってないでしょうね。
―――何かのはずみで、作品を見られることがあるかもしれませんが、それは抵抗感ないですか?
それはないです。ネットに出すっていう時点で、永遠に残るってことだから。
―――そうですね、不特定多数の人に・・・
インスタに上げた写真、自分が削除したけん、「ハイOK」っていう世界じゃないですよね。だから、万一家族に見られようが職場の人だろうが、将来子どもができて見られようが、堂々とできるものしか撮らないと決めてるから、それは大丈夫。
―――すごいですね。写真の中でも、特にヌードは、固定概念をもって見られてしまうと、誤解されたり偏見もたれる可能性もありますよね。そういうので傷つくことはないですか?
そんなに何とも思わなくなったかも。私にとっては自分らしい状態だから、それをどう思われるかはもう、好きか嫌いか、合うか合わないかの世界かなと思います。
―――年をとることについてはどうですか? 一般的には、30代って若さという価値は減ってるとみなされますよね。
そうですね、若いときに美しさとか、価値を持ってた人は大変かもしれないけど、私はそもそも自分に価値を見出してなかったので。私は、今こうして自分を出していくことによって、どんどん環境が良くなってるから、「あー 年とるっておもしろいな」ぐらいにしか思ってないかな。
―――たとえば5年後、10年後も裸の写真を撮れると思いますか?
はい、撮ってくださる方がいれば。それはもう、全然。
(ちひろ)やった!
―――喜んでる人がいる(笑)
はい!と3歳児、ビスコの差し入れ 笑!
◆ #naked is normal 体ごと、自分を愛そう
―――今日の撮影で、圭子さんは、肩の後ろ側のラインがとてもユニークで綺麗だなと思って。人間、もってる体のパーツは同じでも、個体の特徴はみんな違いますよね。
同じ性格がひとつもないのと同じで、体も違うのは当たり前なのに、それこそグラビアモデルさんみたいな体が理想で、自分の体はここが崩れてる、みっともない、恥ずかしい・・・と思い込んでるんでしょうね。私も含めて。
(サニー)性的に勝負をするってことに、まだ価値を持ちすぎてるんじゃない?
―――それはなぜだと思う? 性的な目線にさらされてきたからじゃない?女性が。
(サニー)その価値基準を刷り込まれてきたってことだよね。
―――その価値基準をもとに、自己否定があるんだと思う、どこかに。「こんな体」って。
よく「私もヌードやってみたいけど、脱げるような体じゃないから」「もっと脱げる体になってから」とかいうけど、見てもらった通り、私の体も年齢なりの隙とかいっぱいあります。でも、ここまで自分と一緒に生きてくれてる大事な体じゃないですか。それを否定するのは悲しいなあ。
―――ほんとにそうですね。圭子さんの写真見てたら、体って大切なものだなあ、大切にしなきゃと思います。自分の体も、ほかの人の体も。
でも実は、私もずっと、ちゃんと自分を大切にしてこれなかったんです。
子どものころから、みんなと同じ「普通」のことができない子で、けなされたりバカにされることも多くて自信もなくて、当然、恋愛もなかなかうまくいかなくて。
彼氏らしきものができても、結局私の体だけが必要なんだろうな、美人でもないししょうがないんだろうな、って。自分の体を、居たい人といるための道具にしてた。
―――とても悲しい。どんなふうに変わっていったんでしょうか?
もっと体ごと自分を大事にしたいと思うようになって・・・。被写体活動も含めて、日々もがいてきたと思います。
そうやっているうちに、たくさん出会いがあって、私の感性を認めてもらえる機会が増えて、やっと自信を持てるようになったのが、この半年くらい。
それで、もう一歩踏み込むことにしました。
―――それが、今、写真を発表するときタグに掲げてる「naked is normal」「裸は普通だ」「アイデンティティを取り戻せ」なんですね。
もっともっと自分を見つめて、心身ともに愛してあげようって。
憧れてた「普通」のことが出来なくても、そんな自分を受け入れて愛してあげたら素敵な世界が待ってたよ! って。
―――うんうん。「自分を大事にする」「そして堂々とする」って、“ママじゃな”のテーマの1つだから、すごく共感します。だから私は圭子さんの写真が大好きなのかも!
今回撮影させていただいた keiko×ママじゃな(橘ちひろ)の作品集を、別ページにまとめています。(下記リンク↓↓↓)
たくさんの人に、特に女性たち・ママたちに見ていただきたい! そして、このインタビュー記事や作品集にご感想をいただけたらうれしいです。一言でも!
【編集後記】
インタビュー:イノウエエミ
【ママじゃな】には、「自分を大事に」「堂々とすることの気持ちよさ」そんなメッセージを込めていますが、それは簡単なことじゃないとも痛感しています。
若い子。綺麗な人。スタイルの良さ。子どもがいるかどうか。立派な仕事をしているか? 素敵な趣味があったり、しゃれた家に住んでいるか? 悪目立ちせず皆と同じようにできているか?
どうしても、そんなふうに価値判断をしたり、劣等感を覚えたりしてしまうのです。
固定観念を刷り込まれていることに気づく余裕もなく、「決められたものさし」に合わせることに一生懸命な忙しい毎日。それが私たちの現実ではないでしょうか。
でも、圭子さんは目をそらさず、あきらめず、劣等感や違和感と向き合い続けてきた。ヌードになったのは偶然の成り行きのようで、必然だったのだろうと思います。
「裸になって、初めて自分を大事にできた」
逆説的だけれど、その言葉にめちゃくちゃ納得したのです。
裸になることで、すべての固定観念を、そこからくる劣等感を、脱ぎ捨てられたのだと思います。
そうでもしなければ自分を愛することができない。それが、女性を取り巻く現実のひとつだと思います(フェミニストと言わば言え)。
圭子さんの裸の写真は、「脱いだら誰でも美しいんじゃないか?」という気分にさせてくれます。あなたでも、私でも。
見せるために美しいのではなく、私たちは、本質的にみんな美しい。崩れた体を綺麗な洋服で隠しているのではなく、美しいから普段は隠している。私たちは、こんなにも美しいという秘密をもっている。そう感じるのです。
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既にずいぶん長くなってますが、インタビュー前、facebookに書いた文章を載せておきます。
ちょっとうまく書けないのだけど、日本の学校で教育を受け、日本の家庭・世の中で育っていると、「自由に対する恐怖や忌避感」みたいな思考をすりこまれるのかな、と思うことがある。感覚を鈍くしないと生きにくいような。自分の意見なんてまちがってるんじゃないかとびくびくするような。
でもそれってすごく寂しいし怖いことです。正しいか正しくないか、役に立つか立たないか、お金になるかならないかではなく、後ろ指さされないかを恐れることもなく、ただ1枚の絵や写真、1つの音楽や詩を前に、どう感じたかを口にする・・・
いえ、言葉にしなくても、自分が感じたことを抱きしめる。そんなことを大事にしていきたいのです。自分が感じたことを大切にできなければ、人の感じ方も大切にはできません。
写真:橘ちひろ
まさか自分がチャレンジし始めた撮影のことが記事になるとは!
でも突き詰めていくと、本当に「ママじゃな」のテーマにあっているんですよね。
自分の身体・自分の心・・・・。
圭子さんはとてもたくさんの方と撮影をされていて、その作品はすべて素晴らしいものです。そして色々なタイプの写真があり、写真家がいます。
私は今は思考よりも視覚や感覚だけで動いています、本当に、ごめんなさいってくらい。実物を見る・感じる・受け入れる・切り取る・感じたままに近づける・・・それだけ。テーマもまだ決まっていないし、イメージもそんなに湧かない取り手です。(がんばって思考に走る時期もよくありますよ、ただそんなに得意じゃないのでグダグダなってしまいます)。
今回の取材メンバーのみんなはしっかりと考えを突き詰めていくタイプで、エミちゃんも圭子さんもずっと思考しています。そこにひたすら感心していますし、すごく助けられています。あ・・・サニーさんはどういうタイプなんだろうか・・?
今回のインタビューはまだまださわりの部分かも、思考は日々変化していくし。
でも、もしこの記事を見て心の中に何かが残った方、その種を育ててまでは言えないけど、ちょっと取っておいてほしいなぁと思います。
きっと世の中のみんなで共有してしまいがちな「罪」??みたいなことから逃れられる、もっと自然に人間らしく生きられる、ヒントがあるような気がするのです。
自分はそれを探しています。
どうぞこれからも圭子さんの活動に注目してほしいです!
圭子さんのインスタグラム→ @kei_ko_5211
そして私もよろしく 笑。 がんばるから。