vol.29 たまき の 「ママじゃない私」ポートレート
たまきさんは、9歳と6歳の男の子のお母さん。フリーランスのキャリアコンサルタントとして、企業や学校で講師などをされています。
香川県出身、音楽高校のピアノ科から、東京の音大の声楽科に進学された経歴もお持ちです。音楽学校って、インタビュアー・エミにとっては “のだめカンタービレ”の世界のイメージ! 好奇心がふくらみます。そういえば、たまきさんはのだめちゃんのように自由闊達な雰囲気かも~!
◆ 謳歌、音楽高校時代
―――事前アンケート、ご自分でも「細かいことは気にしない」って書いてたとおり、大らかで明るい感じがすごく伝わってきました。
そう~?(笑)
―――アンケートの、「高校時代、体操服を裏表、前後ろ反対に着て、変な女と言われるが気にせず、高校時代を謳歌。恋愛よりも友情を楽しむ。」
っていうくだりが、見れば見るほどじわじわきて・・・(笑)
そうそうそう、すごいでしょ? 入学してしょっぱなから、やらかしちゃったんだよね。
時間なくて慌てて着替えて行ったら、「あんたちょっと変よ、裏表反対ちゃう?」って言われて、よく見たら前と後ろも反対だった(笑)。
―――両方っていうのがね(笑)。不思議ですね、すごくしっかりしてあるのに、どっか天然なんですね。
親しくなったらよく驚かれる(笑)。
―――女子高生って、集団で群れたりとかあったと思うけど、そういう中で気を遣ったり、周りが気になったりするほうでしたか?
あー、ないない(即答)。ていうかクラス全体ね、どっちかっていうと女子~って感じじゃなくて・・・
―――さばさばしてる感じ?
だいたいね。「オチがないと」みたいな。音楽やってたからかな、みんな個性があって、言いたいことははっきり言う。ねちねちとか全然なくて、ほんと楽しかったね。
―――なるほど~、ずっと音楽やってる子たちで、自分をしっかりもってるのかも…。梶原さんには居心地良さそうな雰囲気ですね。
居心地よかった~!
―――音楽の専門的な授業もあるんですよね?
あるある。成績もつくよ。出席番号順に入って演奏していって、みんなお互いにどんな感じかわかるし・・・・いまだにテストの夢を見る。
―――えーっ、やっぱりプレッシャーがあったんだ。
そうそう。夢で「さあ、演奏してください」って言われて、「えっ、何弾くんだっけ、楽譜どこだっけ、あーこの曲弾けない!」とか、焦る感じ。
―――わ~、すごいなあ・・・
◆ ニンジンぶら下げて突っ走るタイプ!
―――ずっとピアノをやってて、大学に入るときに声楽にコンバートしたそうですね。
そう。珍しかったみたい。ついてたピアノの先生も有名な人だったから、そこの門下生が歌に変わるなんて!ってびっくりされた。
―――シロートの感覚ですが、歌うのってピアノより抵抗っていうか恥ずかしくないですか?
恥ずかしいというか、歌を本気でやってる人からするとバカにしてるよね、高校の友だちに「あんたどういうことよ、なめんなよ歌を」って言われた(笑)
でも、高校の修学旅行で武蔵野(音大)を見に行って、絶対ここに入ろう!って思って。
―――で、それから歌勉強をして、試験を受けて合格したんですよね。
そうそう、準備期間が短かったから特訓して・・・
先生に「ちがーう! ちがーう!」ってすっごく怒られながら・・・
―――それでもめげずに頑張って、そこはすごいガッツがあるんですね!
そうかもね~。1回やるっていったら、ここ(おでこの前)にぶらさげたニンジンを見て走るみたいな…(笑)
―――音大って、普通の大学とは雰囲気違うんでしょうね~。
違ったね~。びっくりした、お嬢さまが多くて。
―――ご自分は、違うんですか?
全然! 特に、高校からエスカレーターで来てる子とか、超お嬢さまで。ブランドものとか持ってて、身のこなしがすごく上品で、しかも標準語でしょ。
―――そこでカルチャーショックとか、「やっていけるかしら…」とか思ったりしませんでした?
そういうのは全然なくて、もう、おのぼりさんの見学みたいな。「うわー! すごーい! お嬢さまいる~!」みたいな(笑)。
―――いい性格してる(笑)
◆ 腹立つけど、大好き。今がちょうどいい(笑)
―――アンケートに、夫さんのことを「腹立つけど大好き」って書いてあって。大好きって書いた人、【ママじゃな】モデルさんで初めてですよ~! 信頼してるとか、面白いとかはあっても、大好きって!
え~、そうなんだ~(笑)。
―――夫さんとは、同じ会社だったんですね。「元・上司」とありますが、直属の?
そう。同じ部署で。
―――へえええ~、そこから、社内恋愛~~~ ひゅーひゅ~~~(ゲス)
どういうところを好きになったんですか?
仕事っぷりがすごいなって。あと、すごくあったかい人。人の気持ちがわかる。
―――なるほど、仕事もできるし、人間的にもステキ、と。
上司ウケはしないのよね。自分の下にいる人たちとか、お客様に対してとかそういう視点の人で。下にいて、助けてあげたいなって思いながら働いてた。
―――なるほど~、それはステキ♡
でもさ、それで大好きで結婚したとしても、10年たっても変わらないってすごいよね。
たぶんね、最初の“大好き”がすごかったんだと思う。だから、ちょっと減っても、普通の人が言う「大好き」と変わらないぐらい・・・
―――(笑笑笑) 減るのは減ったんだ(笑)
変な話、ちょうどよくなったんだよ。もうほんと、ウザいぐらいに好き好き好きだったから。
子どもができる前は、焼きもちもすっごい焼いてたの。優しいし、人あたりもいいから、若い子にもモテてたんだよね。
―――なるほど~、同じ職場でそういう姿も知ってるからね~。今はほどよく落ち着いた、と。お子さんもいるしね、家庭がしっかりできあがったから。
そうそう。母になると強いね。あんまり焼きもちも焼かなくなった。なんというか・・・厄がとれた? それでちょうどいい感じ。
◆ 定年退職がない仕事を求めて
記事では省略しますが、たまきさんと夫さんの大♡恋愛のお話を聞きました!
こ、これは、「大好き」もわかる~~~!
気になる人はたまきさんご本人に聞いてみてね。
オフレコばっかりになっちゃったけど大丈夫かな(笑)
―――大丈夫です! 今、映画を1本見たみたいな気分です!
(ちひろ)しかも、お話も上手だから。
けっこういろいろ、やらかしてきてるのよね(笑)。
―――でもいろんな経験が、コンサルタントとしても生きるかもしれないですね。間接的にでも。
会社員からフリーになろうと思ったのは、どうしてですか?
夫が転勤しても仕事できたらいいなと思って。下の子が生まれてすぐ広島に転勤になって。
あのときが一番きつかったかな。知り合いも誰もいなくて、夫もずっと岡山に出張で週末しか帰ってこなくて。
―――幼稚園のお兄ちゃんと、赤ちゃんと自分で家に…。
おんぶしながら一人で段ボールあけてね。
で、なんか1回大ゲンカしたんだよね。夫に「おまえは家にいられていいよな~」みたいなこと言われて。
―――ああ~ 男性の勘違いあるあるだ!
私、むっちゃ怒って、ありとあらゆるものを投げたんだよね。「私だって、いたくているんじゃなーい!!!」って。
それで、もう絶対仕事しようと思って。で、「働きたいんだけど」って言ったら、「いくら稼げるの?」って。
―――うわあ~、夫さん、地雷踏みますね~!!
けっこう踏み抜くのよ。そのたびに私が怒るんだけど、本人は悪気ないし、覚えてないんだよね。まさしく男性脳。
―――そう言われて、どうしました?
「今は稼げんかもしれんけど、定年退職がない仕事をしたいけん、今は投資だと思って勉強させて。でなきゃ老後、立場逆転するよ」って言って。
―――えらい!! それを言えたのが・・・! で、そこから勉強して? 資格をとったんですか?
CDAっていうキャリアカウンセラーの資格はもともと持ってたんだけど、広島に来て仕事もなくて。キャリアコンサルタント技能士っていう国家資格の2級をとって。
―――いつも思うんですけど、そこからどうやって仕事がくるようになるんでしょうか。
東京の知り合いが広島の人を何人か紹介してくれて。「仕事になるかどうかはわからないけど、情報だけでももらったら?」といわれて、あいさつに行って、その中の何人かが「こういうことできますか?」とか言ってくれて。
―――それは、たとえばどういう・・・。
たとえば、就職する学生さんのための講座とか。大学では公務員試験受けるための試験対策、ディスカッション講座とかキャリアガイダンスとか…。
―――はぁ~、なるほど~。
とりあえず、やったことなくても、「できます」って言って。
―――やっぱり、それが必要なんですね!
ハッタリね。ハッタリ大事よ。
―――やっぱりそうか! 勉強になります!
(ちひろ)勉強になります!
「できるかどうかわかりません、って言う人に頼みたいと思う?」って先輩に言われて。謙虚さは必要だけど、やっぱり多少のハッタリは必要かな。あと、自分に何ができるかまとめとく。経歴や得意分野とかね。
―――はあーっ。勉強になります!
(ちひろ)すごい。勉強になります!
◆ パパの成長、洗濯もの
―――遠方でのお仕事も多いみたいで、時間のやりくりが大変じゃないですか? そういうときは、保育園のお迎えとかは・・・
ファミリーサポートをお願いしてて。迎えに行ってもらって、おうちにおじゃましてご飯も作ってもらって。
―――泊まりのお仕事もあります?
あるある。前泊とか。パパが帰って来てから出かけて、向こうに23時とかに着いて、翌日に仕事したり。
―――お子さんたち、すんなり「行ってらっしゃい」って感じですか?
うん、全然大丈夫。慣れる慣れる。「ママ行ってくるね~」「わかった、じゃーね~!」みたいな感じ。
―――夫さんは、家事育児はどんな感じですか?
うーん。子どもの面倒はみてくれる。でも、家のことはね…。どこに何があるかとか、ちょっとずつ伝えていかなきゃなと思ってるけど。
お洗濯とか、「これ干しといてね」っていったら干してくれるようになったし、「たたんでくれる?」っていったらたたんだり、しまってくれるようになったぐらいかな。でも、成長。
―――大事ですよね。急に全部できるようにはならないもんね。
最初は、「干しといてね」っていった洗濯物が、帰ったら家の中に干してあったから、「取り込んでくれたんだ」っていったら、「ここに干した」って。そのレベルだった(笑)
前は干し方もね、いらんシワができるような・・・(笑)。それを、「こうやったらいいよ~」とかちょっとずつ教えてさ。こないだは彼が息子に「おまえな、そうやって干したら乾かねえんだよ」って教えてた(笑)
―――成長ですね!!(笑)
あと、やっと、自分で箸とったりコップとったり、食べたものを下げるようになったりとか・・・あたりまえのことだけどね。
―――いや、しない人多いと思いますよ。親の世代では全然しないのも普通だっただろうし。でも、お子さんたちも男の子だから、パパがやるのを見るのは大事ですよね。
そうなのよ。これからの時代、やってないのが普通だと困るから。何でもできるようになって早よう出て行ってもらわんと。
―――あ、子どもを手放したくないとか思わないですか?
全然。昔からない。よく「息子が恋人」とか聞くけど、まっっったくないんだよね。それはやっぱりダンナが好きだからだろうね。
―――絶対そうだと思う~!
◆「まぁ、このままでいいか」と思えた日
―――こんなに、明るくてタフそうなたまきさんも、若いときにうつを経験されたそうですね。
ほんっとうに、うつってつらいんだよね。こんなにつらいのか、っていうか、うつになってることも気づかないくらい・・・。
大学の教育実習のときだったんだけど、楽しみでわくわくしてて、無意識のうちにがんばりすぎて、知らない間に沈没・・・。船が沈没していってるのにも気づけない、って感じだった。
―――そこから浮上するまでには、どれくらいの時間が・・・
親も対応がわからなくて、「元気出しなさいよ、がんばりなさいよ」って言うんだよね。
―――家族も初めてのことで戸惑いますよね・・・。
夏休みに、大学の友だちが長野の実家においでよ、って言ってくれて。そこで2,3か月過ごしてて、徐々に元気になったかな。エネルギーがだいぶ戻ってきて、「何でこんなふうに考えるんだろう?」って考えがまとまるようになってきた。
―――悪いときは、何も考えられないんですよね。
そう。考えられるようになって、それで、「まぁ、このままでいいか」って思ったのが治るきっかけなんだけどね。
―――なるほど、治ろうとしたわけじゃなく・・・。
そうそう、もういいやって。「なるようになるか」的な。友だちが言ったんだよね。「いいじゃん、そのままで。そういうたまきも面白いしさ、好きだよ。無理しなくていいんじゃない?」って。その子はすごく普通に接してくれた。
―――すごい。どうしても、気を遣って腫れものを扱うようになっちゃいそうですもんね。
そうそう。「大丈夫?」じゃなくて、「友だちと諏訪神社に行くけど一緒に来る?」とか普通に誘ってくれて、私が「やめとく」って言ったら「そう、じゃ私行ってくるね~」、「今日は行けそう、行ってみたい」って言ったら、「じゃあおいで~」みたいな。そんな感じで、だんだん良くなっていった。
それからは、「あ、やばいな」って思ったら自分でコントロールするようになったかな。妊娠中とか不安定になったりしたから、早めにメンタルクリニックに行ったり。
―――もともとエネルギーの強そうなたまきさんもうつになるっていうことは、本当に、誰にでもなる可能性があるっていうことですよね。性格とか関係なく。
そう、誰にでも。
(ちひろ)再発しやすいって聞きます。コントロールできるってすごい。
うつになったら、しっかり休むことが大事かも。がんばって大丈夫になったつもりだったけど…ってことが多いのかもしれないね。
―――アンケートにあったけど、夜寝る前に、「今日もいい1日だった」って言うことにしてる・・・って、すごい良い習慣。でも、そう思えない日もないですか?
あるある。でも言うの。
―――そこは暗示なんですね。
あんな失敗したな~とか、今日最悪やったな~とかいろいろあるけど、「でも、ま、いい1日だった」って、とにかく言う。そうすると、意外と寝れるんよね。
―――習慣づいたら、すぐそう思えるようになるのかも。心のレッスン。真似したい! 簡単にできるしね。
そう、簡単にできる!
◆ 二胡の音色に魅せられて
―――二胡はどういうきっかけで?
去年の9月、美味しそうなフォーの店に入ったらそこに二胡が置いてあって、ポスターが貼ってあって。そこに先生が来て教室をやってるってわかって、体験に行ってみたのがきっかけ。たまたまだね~。
―――始めて1年くらいでもう演奏会にも出られて、さすがです! 中国語に興味をもったのも二胡を始めてから?
そうそう。
―――新しい世界が広がりますね。歌は、大学で卒業・・・・?
うん。それ以降は宴会芸みたいな感じ。
―――(爆笑) 宴会芸って言葉を久々に聞いた(笑)
時々、オペラ調で歌うみたいな(笑)
―――いい! いい~、そういう人、宴会にいてほしい!
「ベルサイユのばら」を男声・女声に分けて歌うとかね。
―――専門家なのに出し惜しみせずやってくれるところがいい!
せっかくだったら喜んでもらった方がいいからね(笑)
(おわり)
【編集後記】
インタビュー:イノウエ エミ
とあるイベントで知り合って以来、お会いするのはこの日が2度目だったのですが、たまきさんって人を緊張させない! とてもさりげなく話を振ってくれたり、すすめてくれたり。安心して身を任せちゃう、甘え好きの“チーム・ママじゃな”です。こちらもいい年した大人なのにすみません(^^;)
そのふんわりした包容力とは裏腹に、セキララなまでのプライベート・トークは圧巻! ジェットコースターに乗ってるみたいにスリリングなお話を、にこにこと、あっけらかんと語っていただきました。
人にはそれぞれ、いろんな経験がある! 聞いてるほうもびっくりだけど、自分で言葉にして語ってみることであらためて、「ああ、こんなことあったなあ~。あのときは大変だったな。よくここまできたなぁ。」なんて、驚いたり感嘆したりすることってあるんじゃないでしょうか。振り返ることで初めて、見えてくるものもあったりしますよね。
いろんな道を歩んできた経験豊富なたまきさんに、コンサルのお仕事はぴったりだなぁと思います。いつか、歌声も聞いてみたい!!
写真:橘 ちひろ
お話を聞いているうちにたまきさんのことがどんどん好きになって、その何とも言えない、癖になるような可愛らしさと透明感を撮りたいと思って、それが写り込むように願って撮りました。
古いアンティークな雰囲気が好きというお部屋のインテリアやベランダの感じも好きです。
ポイントとなっている青い壁面はなんとベランダの仕切りです 笑
ピアスとすごくあっていて。
たまきさんは大人っぽさと無邪気さがどちらもありますよね。憧れます!♡