“ママじゃない私” ポートレート

いつものあなたの、いつもと少しだけ違う顔。いろんなママたちの、「ママじゃない顔」ポートレート。

vol.8 かずさん の「ママじゃない私」ポートレート

 

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育児サークル仲間のかずさんは、すみれさんの翌年度に代表をつとめてくれたママさん。この企画を始めたときから取材したかった友だちの一人です。彼女の人柄がすてきなので、いろいろ聞き出したかったのももちろんあるし、それに、もうすぐお引っ越しと聞いていたから。飾り気はないのに、なぜかとても居心地の良いかずさんのおうちが大好きでした。家って人を表すんだよね。でも、この年季の入った社宅は、もうじき取り壊されることが決まってるんです。かずさんはここで男の子2人のママになって、忙しく懸命に暮らしてきました。ぜひ、写真に残してほしいなと思ったのです。

 

◆自分は穏やかな人間だと思ってたのに

 

―――事前アンケートって、やっぱり、子どもが寝てから、夜の時間に書いてくれる人が多くて。

私も。「夜中のテンション」になっちゃった。なんか変なテンション。

―――や、それがいいんだよー。
「家でダラッとしているとき、本を読んだり、テレビやネットしているときに小さな幸せを感じる」って回答、すっごくわかる!! 等身大だわー。 「お酒をちびちび飲みながらがベスト」って付け加えてあるのも最高。

あそこの上に置いてあるパソコンを、子どもが寝たら下ろして、ちびちび飲みつつダラーッとね。テレビつけっぱなし、みたいな(笑)

―――怠惰にね。

怠惰ー。なんにも考えてない時間。

―――必要だよね! そのささやかな時間があるのとないのとでは、全然違うもん。何日かそういう時間がとれなかったら、だんだんイライラしてくるもんね。

私、あれに振り回されるんよ。女性ホルモン。PMS症候群、というのかな。病院にかかったりしたことはないんだけど。

―――うん、あるよね。私は体にくるほうで、腰とかお腹が痛くなったりする。その時期は、どうなるの? イライラする?

うん、怒りがちになる。出産してからなんだけどね。なんか、何が起きてもイライラしてる。ほんと、自分がこんな人間だとは。穏やかな人だと思ってたのに(笑)

―――へぇー想像つかないけどね。

この近辺の人たちはわかってるよ。私が怒ってるの聞こえてるもん。「あー、やってるな」って思われてるはず(笑)

―――あ、じゃ、よそからも子どもの声とか聞こえてくることあるんじゃない? そういうのも、社宅らしくて、いいよね。「みんな子育てしてます」だよね。

親も子どもも、みんなだいたい同年代だからね。幼稚園から帰ったら、だいたい下(駐車場スペースが広いんです)で一緒に遊んでる。

―――いいよねー。うちのマンション、小さい子おらんけん、そういうの全然なくて寂しいもん。
ねー、かずさんがイライラしてるとき、ダンナさんはどういう感じ?

時が過ぎるのを待つ感じ。

―――(笑) ダンナさんに対してもイライラすると?

あのね、ダンナに対してが一番イライラする。

―――うわっ、そうなんや!! ちょっと、そこは詳しく聞きたいね(ゲス顔)。

いやー、彼なりにがんばってくれてる、と普段は思えるんだけどね。私の受け取り方の問題なんだよね。

―――ダンナにギャンギャン文句言ったりする?

ってわけじゃないけど、顔にも態度にもすぐ出る。「ふーん、釣り行くの。あっそ」(←すっごく冷たく)みたいな。

―――でも、ダンナさんは言い返してきたりしないんだ。「穏やか」って書いてあるもんね。子どものこととか、何か真剣に話し合わなきゃいけないときや、聞いてほしいことがあるときは、聞いてくれる?

あ、うん、それは。子どものことも、案外、私よりよく見てるかも、ってときもある。でもまー、子どものことでなんかあったりしたら、2人で話して、2人してどんよりしてるかな(笑)。

 

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◆本とマンガは必需品


 

―――イライラしたり、落ち込んだりした時は、どうやって浮上する?

本とかマンガ読んで現実逃避

―――わかる!!!

こないだは、『宇宙兄弟』を全巻レンタルして読んでた。

宇宙兄弟(1) (モーニング KC)

―――あーっ、いいよねーっ。

子どもとか出てこないほうがいいの。難しすぎず、考えないでどんどん読めるような…

―――わかるわかる。

現実逃避は本当に必要。どーせ朝になったら現実に戻らなきゃいけないからこそ。やっぱ、何かまったく別のことに集中する、っていうのがいいよね。「物語の力」だよ(そのうち番外編に書きたい)

―――アンケートには「飽きっぽい」って書いてあったけど、これまで他にハマったことは?

うーん、瞬間的にガーデニング、瞬間的に手芸。ミシン使って小物作ったり・・・瞬間的に走ってみたり。

―――瞬間的(笑) や、全っ然、いいと思う、すぐ飽きても。自分が楽しむためのブームだもん。

本だけはずーっと続いているかな、常に。でも、作家にハマったら、そればっかり読んだり。今は三浦しをん

―――わ・か・る! 大好き!! 三浦しをん

あ、前に載ってたモデルさん 白泉社が好きって書いてあったけど、私もだよー!

―――あー、やっぱり! 『花咲ける青少年』じゃない? 『僕の地球を守って』?

花咲ける青少年 (第1巻) (白泉社文庫) ぼくの地球を守って (第1巻) (白泉社文庫)

両方持ってる(笑)。『僕の地球を…』は、寮の図書館に全巻そろってて。私たちの代が最後の寮生だったから、そこの本、全部もらって帰っていいよ、ってことになったんだけど、死守した(両手で抱え込む仕草)。

―――すごい人気作やったけん、けっこう競争率高かったんやない?

「私、副寮長やったやん。ちょっと先に選ばしてよ」って(笑)

 

                                  

 

 

 

◆嗚呼、花の女子寮生活

               

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―――学生時代、広島だったよね。寮だったんだね。寮生活って興味ある! 体験したことある人少ないよね。

最近聞かないよね。確かにうちの寮も、私らの代でなくなったしね。

―――何人ぐらいおったと?

4,50人かなー。

―――規律とかあった?

あー、わけのわからないやつね。お風呂の入り方とか。門限は21時。ま、18,9(才)だから。フロアごとに当番が点呼して、22時に一応、就寝になるんだけど、誰も寝ないよね(笑)。で、あっちこっちの部屋に行ったり来たり。毎日夜通し、お酒なく、ひたすら喋ってた。おやつ食べたり。

―――女子同士の大変さとかなかったの?

一部大変そうな人たちもいたけど、ちょっと離れたとこから、「あー大変そう」って感じで(笑)。

―――かずさんはあんまり大変なことになりそうにないもんね。

そういうの好きな人っていうか、巻き込まれ体質の人っているよね。

―――あーいるね。なぜかいつも周りがゴタゴタしてるっていう。

今ほどケータイとかもないし、自分でパソコン持ってる人も少ないし、テレビも一台しかないからみんな遠慮してあんまり見なくて・・・何にも知らない、あの時代のこと。テレビとかも。

―――ある意味、世間から隔離された世界だったんだねー。

そう。今でも一番続いてるのはそのころの友だちかなー。

―――やっぱり、そこまで密に付き合うと、そうなるよね。

でも、寮って、遠くから来た人ばっかりが集まるけん、(卒業したら)バラバラなんだよね。地方から来た人が、また地方に行く、みたいな。私も福岡にはほとんど知り合いおらんもん。

―――周りの友だちには、どういうふうに見られてる子だった?

「家にいるときと外とが違いすぎる」って。

―――えっ、どういうこと? 家?

くつろぐときは、ほんっとくつろぐから、ダラッダラしてるのね。でも、いちお外ではきちんとしたカッコとかするじゃん。その落差が一番激しい、って。オンとオフの差が。

―――(ちひろ) 寮でそこまでオフが出せるってすごいよね。

―――そもそも、家じゃないけんね、寮やけんね(笑)。や、いいことだよ、寮でオフれるのは。それできなかったら、つらいもんね。逆にオンのときは、すごーくしっかりしてるってことだしね。

(寮では)「もー、気ぃ抜きすぎ」「ちょっと、それどうよ」って言われるぐらい。それぐらいかな、ナンバーワンって言われたことあるのは(笑)。

―――(ちひろ) 自分の中でスイッチが切り替わる?

んー。着替えたときかな。でも自分じゃよくわかんない。

―――それだけどっちも自然体ってことだよね(笑)

 

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◆何もない日々に、「なんかしました」ってのがあれば

 

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―――お引っ越しはさみしいね。

古い社宅だけど、ご近所づきあいがすごく楽なとこで、同じ世代の人が多いから良かったんだけどね。ダンナによると、「こんなにゆるい社宅はないよ」って。

―――え、同じ会社の社宅でも、社宅によって全然雰囲気違うってこと?

なんかね、ここは特別、ゆるかったらしい。

―――どうする? 上司の奥さんに付け届けとか…

―――(ちひろ) 月1回のお茶会とか…

半沢直樹」の世界だね(笑)。そんなんだったら、もう、働きに出ます! 私はいません!!(笑)

―――あ、いずれ、働きたい気持ちはある?

うん、この子(下の子ちゃん)がもうちょっと大きくなったら…。バリバリ、ってのは無理でも、外に出た方がいい気がする。ダラッとしちゃうだろうから。

 

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―――育児サークルの代表を引き受けてくれたときは、どんな気持ちだった?

なんだろう。どうしようかなーと思ったんだけどね。主婦って、何にもないじゃん? 「一年間だけでも、なんかしました」ってのがあればいいかな? って感じ?

―――あー、そういう気持ちがあったんだ。やっぱり、一種、前向きな…。

実質は何にもしてないんだけどねー。他の役員さんがいろいろいっぱいやってくれたから。

―――うーん、ま、私も一緒に役員やってたので、昨年の役員の活動について冷静な評価はできないんだけど(笑)。でもとりあえず、一緒に話し合ったり、お仕事したりしてても、やっぱり「副」と「正」ではまったく違うよね。責任っていうか。私なんか副だったから、表に出ることそんなにないから、無責任にいろいろ言えてたわけでね。

確かに私も、前任のすみれさんに「どう?」って言われたとき、最初は「副なら」って言ったもんね。

―――あのときはお子さんがひとりの人が多かった中で、2人、しかも年子のママのかずさんが代表を引き受けてくれたから、ほんとすごいな、って思って。子どもも今よりもっと小さくて、手がかかるころだったろうしね。

(後日、追加で、一年間、代表をつとめた感想を聞いてみました。)

一番は、続いて良かった!かな。無くなるのは切なかったから。

(註: 4月から幼稚園・保育園に入園する子がほとんどで、年度末で存続の危機に晒されていたのです。その後、地道な勧誘活動が実り、新年度の代表さんが決まったため、サークルは今も元気に活動中です♪)

大変だったことは、メールのお知らせ文章。うまく伝えられてたかなー。楽しかったのは、やっぱり役員であーだこーだと集まって話したり準備したりしたこと。めんどくささと表裏一体の楽しさ!

―――ほんとだねー。私も、一緒に役員やって、ほんと楽しかったです! かずさんたちとも仲良くなれたし。「ママ友って怖くないやん、楽しいやん」って思えた体験でした♪



終わり☆

 

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[編集後記]

インタビュー:エミ
ちひろちゃんが選んだ最後の一枚に思わず涙がこぼれそうになったエミです。子どもが小さいうちは・・・いえ、もしかしたら独り立ちするまで、親子はずっと手を繋いで坂をのぼっていくようなものかもな…って思います。
取材は次男くんも一緒で楽しい時間でした。幼稚園が別々なのであまり会えなくなった今、時々会うと、なんだかとてもホッとします。子どもが小さいころのママ友って特別な存在なのかもね。初めて聞く話もたくさんだったけど、どれもかずさんらしいエピソードで、ますます好きになっちゃいました。どのママさんも、小さな息抜きや現実逃避(笑)をしながらがんばってるんですよねー!

写真:橘 ちひろ 
イイ感じに古い社宅のお住まいに興味津津でお邪魔しました~。わ~!思った以上に小さい!可愛い!そこにかずさんの暮らしぶりがしっかりと生きていて、頑張っていない・気取ってないのにどこかセンスのいいんだよなぁ~この塩梅はすごく難しいと思うのです。階段も建物の回りもご近所さんもと~ってもいい感じで取り壊すなんてもったいなく思えてキュンとしてしまいました。
一枚目の和室でのポートレートも横顔の写真もとっても素敵です。最後の写真はまだ幼稚園に行ってない次男くんと一緒に坂を登っていく一コマで。いい思い出となりますように!