“ママじゃない私” ポートレート

いつものあなたの、いつもと少しだけ違う顔。いろんなママたちの、「ママじゃない顔」ポートレート。

番外編: ふなっしーの自由と孤独


 新年おめでとうございます、箱根駅伝を走りたかったエミです。今年もよろしくお願いいたします。


◆私が梨好きになるまで


少し前になりますが、NHK Eテレ「SWITCHインタビュー 達人達」 という番組で、ふなっしー阿川佐和子の回を見ました。ジャンルの違う達人が、2人で互いにインタビューし合うという番組です。

ふなっしーに興味を持ったのはブレイクしてしばらく経ってからです。「何この梨、会話力、高ッ!」と。ユーモアがあるっていうのか、ウィットに富むっていうのか・・・。とにかく、やたらめったらいろんな番組やイベントに出まくって、どんなにいじられても、ツッコまれても、ビクともしない。それどころか、いちいち「そうくるか!」ってな、面白い答えを返すもんだから、ついつい、画面に目がいくようになっちゃった。

さらに決定的だったのは、彼が「世界の果てまでイッテQ!」でイタリアの「石鹸箱祭り」に参加する姿です。ボロっちい木箱に四輪のタイヤをつけて、けっこうな傾斜の坂道を降りていくタイムを競うレース。ほぼ直角の曲がり角を始め、コースは湾曲し、途中には、水や火やジャンプ台などの障害もあります。

生身の人間でもたいがい怖いってのに、あの梨ときたら、ハンドルがほとんど見えない、身動きもとれない状態でチャレンジし、見事に完走したのです! なんという度胸。なんと勇敢な梨! あれは絶対やらせじゃないと思う!!



◆目立ちたいんじゃなく、喜んでもらいたいなっしー

さて、そのインタビュー番組。


―――好きな女の子のタイプは?

洋梨。くびれ具合がたまんないなしな! いってみれば外タレ、レディーガガ的なっし!

―――ふなっしーは、オナラしないの?

あんまりしないけど、したときは地獄なっし。軽い拷問器具みたいになってるなっし。

など、随所で普段どおり軽妙に飛ばしながらも、真摯に回答していくふなっしーであります。

―――全国津々浦々、多士済々のゆるキャラ界に出ていくにあたって、何を武器にしてたの?

という質問に対しては、

武器とかいうより、郷土愛と、人を喜ばせたい気持ち。目立ちたいとかではなく、何をしたら目の前の人が笑ってくれるかしか考えてなかった。やっぱり、コミュニケーションをとると、みんな喜んでくれるなしな。

と答えます。芸人さんを始め、芸能人って「天下とりたい」みたいな ヤンキー思考 向上心 を掲げる人も多いですが、ふなっしーにはそういう傾向は皆無のようです。ちなみに、これまで人々が喜んでくれたこととして、

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などを挙げるふなっしー。「みんなお尻が大好きみたいなっしー」とのこと。フフフわかる(笑)



これからの展望を問われると、

こんなふうにテレビ局が来てくれるのは長くないと思うなっしー。
だからまあ、ペースは落ちていくと思うけど、やれる範囲でやっていきたいと思ってるなしな。その辺の、幼稚園とか小学校とかに気軽に行ったりして・・・


ふなっしーには、迷いはないそうです。「喜ばれるうちはやりたい」という気持ちが強いんだそうです。


 

◆少々梨持ちでも、それが一番幸せかというと違うなしな



徐々に、これまで明らかにされていなかった、ふなっしーの信条が明らかになっていきます。

―――ふなっしーの本業は?

と聞く阿川さん。この人、「梨の皮をむいた中には何人いるの?」とか普通のテンションで尋ねます。さすが、ジャイアント馬場から大島優子まで、インタビュー千本斬りをしてきた女。

“中には何人が?問題”については 「何を怖い話してるなっしー。オカルト的な話なっしー」 と、かわすふなっしーでしたが、本業は?と聞かれると、「いきなり内角ストレートをガーンと投げ込んでくるなしな」 とワンクッション置いて、

基本的に、何をやっても生きていける自信はあるなっしー。

と言う。梨の妖精やめてスイカの叩き売り妖精でもいい。「なんでそんな自信があるの?」と重ねて阿川さん。すると、

大前提として、昔からお金がなくても生きていける

なんと、ふなっしー(の前世?)、5万円くらいで自分でDIYした小屋に3-4年住んでたこともあるそうです。貧乏は全く苦にならないタイプだ、と。

―――いま、貧乏なの?

ああ、今ね、少々梨持ちになってるけど

梨持ちって(笑)。

だから幸せかというと微妙な話なしな。

小金持ちならぬ小梨持ち?になれたのは幸せだけど、 「それが一番の幸せかというと多分ちがう」 と、ふなっしー。ここはもちろんツッコミどころで、阿川さん、尋ねます。

―――じゃ、ふなっしーにとって、一番の幸せは?

やっぱねー、死ぬまでに、どれだけ良い思い出をつくれるか。
そのために、お金が必要なら死ぬほど仕事すればいいし、学問が必要なら死ぬほど勉強すればいい。必要ないなら、遊んでればいいと思うなっしー


男! ふなっしー、男前です!


さらに、ふなっしー、ひょうひょうと 「嫌われても平常心」 と言い放ちます。 「最初、けっこう嫌われてたし、嫌われるところは多々あると思うから。騒がしいとか気持ち悪いとか・・・(そんなふうに言われるのは)しょうがないなしな」

メンタル強っ!



自由だけど、常に孤独感はあるなしよ。



そして番組の終盤、今度はインタビュアー役として、阿川さんの話を聞いていたふなっしーが言います。ヤフートピックスとしても報道されてたフレーズです。

自由と孤独は表裏一体な感じがするなしな。
1人でやってて、自由だけど、孤独感はあるなしよ、常に


ちなみにふなっしー、どこの事務所にも所属してないそうです。電話を受けるのも、スケジュール管理も、グッズの監修、ギャラの交渉まで全て自分でやっているとのこと。

「それ、大変じゃない?! どっか入んなさいよ、事務所。マネージャーつけるとか」という阿川さんに、 「うーん、でも、やってみたらできちゃったから」 と、ふなっしー。テレビやイベントの露出だけでも相当多忙だろうに、寝るヒマあるのか?! てか、能力高いな! できる男!!

考えてみれば、ふなっしーって、はぐれ者っていうか、はぐれ梨ですよね。

成人男性(成人男梨?)だろうに、会社にも、どんな組織にも属さず、梨としての人生(梨生?)を送ってるわけです。淋しくないのかな。不安じゃないのかな。友だちとかいるのかな? 最近、弟は出てきてるみたいだけど・・・。


ふと思い出したのが、絵本『クウネルがゆく』。マリカおばさんが、ちびクウネル君にかけた言葉。

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友だち
すこしでもだいじょうぶ
本当に好きなことには
だれもがひとりで
むかっていくんだよ

 

なんか日本の学校って(日本に限った話なのかわかんないけど)、過剰に「友だちが大事」「みんな仲良く」って雰囲気があった気がして、それって転じれば「友だちに合わせないと」とか、「友だちがいなかったらどん底」になりかねないから、私、淋しい子どもがいたら、この言葉をかけたいなって、前から思ってるんです。

大人になれば、あるていど個人が尊重されるというか、自由度が増す気はするんですけどね。

それでも、やっぱり、はぐれ梨・・・もとい、はぐれ狼に徹するのは勇気のいることで、古今東西、新しいこと・人と違うことを成し遂げる人って、「孤独への耐久度」が高い人たちなんだろうと思います。逆にいうと、周りの顔色なんか気にしてちゃ、やりたいことなんてできないんでしょう。ふなっしーも、きっと、そう。

「孤独感が自分を強くしている気がする」 と言ったあとで、 「そう思って、自分に酔ってるなしなー」 と、ふなっしー。こんなふうに自分を客観視できるから、生き馬の目を抜く芸能界で、そのへんの一発屋芸人よりずいぶん長く、やっていけてるんだろうなーとも思うのです。



◆「自由も、つながりも」という真理



自由と孤独を愛する彼が、「目の前の人々を喜ばせるために」「人々とコミュニケーションをとる活動を」「迷いなく、やりつづけたいと思っている」というのは、ちょっと不思議な気がします。なんか矛盾しているような…

でも、思うに、それが真理なのかもしれません。

孤独を引き受けてでも自由でいたい、と願うのと同時に、誰かを喜ばせたい、つながりを持ちたい、という思いに突き動かされるのは。

人間という生き物の、それが普遍性なのかも。・・・・・・って、あいつは梨ですが(笑)。


メディアに露出する「商品」としては、そろそろ消費期限を迎えるかもしれないふなっしーですが、私は、こういう梨がいたことを長く記憶に留めているだろうと思うのであります。梨汁ブシャー。

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(おわり。)

 

クウネルがゆく (クウネルの本)

クウネルがゆく (クウネルの本)