“ママじゃない私” ポートレート

いつものあなたの、いつもと少しだけ違う顔。いろんなママたちの、「ママじゃない顔」ポートレート。

音楽家 ・ 【Life-is-mine】主宰、サニー安田さんに会いに行きました

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ついに男性ゲストをお迎えしました! 「ママじゃな」の初めての男(きゃー!)、サニー安田こと安田クニヒデ。インタビュアー・エミが音楽を通じて知り合った、10数年来の古い友人です。バンドマンであり、ソングライターでもあり、この春からは、前記事で紹介した ブログアパートメント、【Life-is-mine】 も主宰。表現し続ける大人の男の、この面構え! かっこいいですね。「いや~年とると、良くも悪くも言葉が多くなるね~」と苦笑しながら、流れるような語り口でインタビューに応じてくれました。キラーフレーズも満載です!

ちなみに・・・サニーさんの奥さまは、 「ママじゃないポートレート vol.5」に登場していただいたニコランさん ですよ~!あわせてどうぞ~! 



◆「Life-is-mine」、地道にコツコツやってます! 



―――「Life-is-mine」、毎日更新おつかれさまです。面白いこと始めたよね。どんな感じで思いついたの?

ブログやろうと思ったんだけど、ブログって続かないよね。何でみんなやめちゃうのかな?って考えたら、2,3日あいたときに、イヤになるんじゃないかなと思って。3日あいたら、4日目には、前の3日分も書かなきゃダメな気がしちゃう。

―――あー、あるかも。

だったら、何人か集めたらいいんじゃないかな?って。毎日誰かが更新してる状態だったら、ひとりひとりのプレッシャーは減るやん?

―――確かに、ブログって、定期的に更新してる賑やかな感じ、大事だよね。でも、記事を集めたり、更新のスケジューリングしたり、運営するの大変やん? 人を集めた以上、いったん始めてしまったら「飽きたからやめまーす」って簡単にいえないし・・・。

それが助かってるわけよ。やめられないから。

―――え、やめられないこと始めちゃったんだよ。プレッシャーじゃない?

いやー、続けるとか着実にとか、コツコツとか、自分の辞書にまったくないんで、50でそれにチャレンジするのもいいかなと思って。

―――50歳で、自分にないものにチャレンジしたくなるものかな?

なるとよ、それが。ほら、長所伸長法っていうの? いいところを伸ばすっていう。あれすごくわかるけど、置いてけぼりにされた短所がかわいそうな気がするんだよね。
ずっと残るわけやん。ものすごい大女優になっても万引き癖が治らないとかさ。長所だけ伸ばしちゃったからそうなったわけで、万引き癖を先に治そうよって感じがするわけよね。


―――そりゃ万引き癖だったらね(笑)。えらい極端な例だな(笑)。

もともと性格ひねくれてるけんさ、世の中みんな、長所だー長所を伸ばそうって言ってるけど、「そうはいうけど、短所に挑戦したほうがいいんじゃない?」って思ったりして。

―――なるほど(笑)。それで「コツコツ続けること」に挑んでるわけね。

イデア出すのは昔から得意で、通知表にも「誰もしたことのない遊びを考え出します」とか書かれる子やったんよ。でも同時に、「長続きしません」とも書かれてた。飽きっぽい。そういうの打破しようかなと。自分ひとりの力じゃ無理だから、人の力も借りてね。

(ちひろ) いっぱい人がいて、いろんな人がいると、飽きなさそうだしね。

―――それはあるね。見てるほうも飽きない。それにしても、人の力を借りてチャレンジしようとかさ、ちょっと意外な感じがするな。一匹狼なイメージあったから。そういうふうに考えるようになったのは、年の功なのかな。

50年かかったよ(笑)。


◆自分に無いものを持ってる人に惹かれる

 

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―――自分よりずっと年下の子たちとバンドやったり、曲を提供したりしてるよね。年の差とかあんまり気にしないほう?

年齢も性別も気にしないね。男の子でも女の子でも、自分に持ってない何かを持ってると、惹かれるよね。一緒にやれば、何かおこぼれがもらえるんじゃないか、自分も磨かれるんじゃないか? とかは、すごく思う。

―――若い子を「プロデュースしたい欲」みたいなのとは違うの?

それはないかなー。自分にできないけど表現したい世界があるから、それを表現してもらえたらうれしいよね。僕はね、作品主義で、作品そのものをすばらしくしたい。誰が作ったとかじゃなくてね。絵の下のあれ(説明文)、読まない人なんで。

―――「Life-is-mine」も、“サニー安田色”ってわけじゃなくて、いろんな人たちの、いろんな表現世界だもんね。

振り返ると、いちばん最初はさ・・・小学校の時に「壁新聞コンクール」ってのが好きだった。

―――あー、なるほど! 

思えば、そのときも自分で全部書いてたわけじゃないんだよね。自分は、花屋のお姉さんにインタビューするとかいう記事だけ書いてさ、4コマ漫画はあの子がうまいから頼んで・・・頭のいい子に“算数の誰にでもわかる解き方”をこのくらいのスペースに書いてもらって・・・みたいな。

―――それ、まさにサニーさんの原点やん!!

自分にないものを持ってる人は、ものすごくいっぱいいる。面白いよね。


◆サニー流、BOYS & GIRLS 理論

 

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「一緒にやらない?」って声かけて、のってくれるのって、ほとんど女の子やね。僕だってほんとは、すげー細くてラメが似合うような男の子ともバンドやりたいとよ。キラッキラした感じの。19,20(才)とかで、金髪とか。

―――昔のデビッド・ボウイみたいなね(笑)。

そうそう。歌とかそんな上手くなくてもいいから、人間として存在が輝いてる奴。でもなかなかねー。男の子はやっぱり、プロパティ欲っていうのか、自分の領地を荒らされたくないんだと思う。自分の城のお殿様なんだよね。

―――そうね。そうかもね。直感ではないよね。男の人って。

あと、男の人は、「始めたからには、やめちゃいけない」て気持ちもあるから、簡単には始めないね。女の子はさ、「やりますやります」って言ってくれるんだけど、次に会ったらもう全然冷めてたりして。

―――そうね(笑)。そうかも。

その日、朝起きたときの気分で世界がまわってるやろ、女の子って。だから、ダメな日は全然ダメ。世界が止まってる。

―――ふとした拍子に、心のドアの鍵が空くときがあるとよ。たぶん。

いつ開くかわかんないんだよね。いろいろ痛い目にもあってきた、そのへんは(笑)。

―――閉まってるときは、どんなにノックしてもダメなんよね。

それをやる気にさせる方法はまだ謎やね~。わからん。雨乞いするようなもんだ。「いつか、出てください、やる気」って(笑)。

(ちひろ) でもサニーさん、そういう、気まぐれな女の子がとっても好きってイメージ。

―――振り回されるの、イヤじゃないやろ?

振り回されるってことは、知らなかったってことだから。過去のデータにない、新しいものに出会った喜びはあるね。新刊が出た、みたいな感じに近いかも(笑)。

(ちひろ) 今聞いてて、そういうのが好きな感じがすごく伝わってきました(笑)。


◆スケールの小ささがウリの音楽家です(笑)



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―――自分が振り回したい欲はないんだよね。

振り回すの、めんどくさいもん。基本、めんどくさがりなんよ。ただ、新しいものが好きで・・・。逆に言うと、古いものをないがしろにしちゃうんだよね。学生時代の人間関係とかさ。男の人って割と続いてるものなんよ、先輩後輩とか。

―――それしかないって男の人も多い気がするよ。しょっちゅう飲んでるけど、相手は会社の同僚か、学生時代の人間関係かのどちらかしかない、みたいな。趣味がある人は別だろうけどさ。飽きないのかな?とか思ったりする。

でも仲良さそうじゃない? 女の子って、そういう、男同士でつるんでるの見るの好きでしょ?

―――あ、それはね、「ホモ萌え」っていうんだよ。ホモソーシャル=男性コミュニティ萌え。部活とか、男子の集団がわちゃわちゃ絡んでるのを外から見て「萌え~(ハート)」って。ジャニーズとか、新選組とかもその一種ね。

そうなんだ(笑)。僕そういうのないからさ、軽薄な感じがするんだよな。自分の存在自体。

(ちひろ) でもサニーさんみたいに新しい関係を軽やかに作り続けてる人っていいと思うなあ。

いやー、でも僕、「フェスに呼ばれない音楽家」よ?

―――何それ(爆笑)

音楽やっててもさ、ここ博多の、伝統的なのあるやん。

―――めんたいロックね、いわゆる(笑)。

そういうの通ったことないんだよなー。王道を歩めないの、常に。こう、2・3人しかいないところに着地しちゃうような。スケールの小ささが売りなんですよ(笑)。

(いやいや、そんなことおっしゃるけど、サニーさん50才記念ライブは大盛況でしたよ!! そのときのではありませんが、ライブ中のサニー氏↓)


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(写真はサニーさんよりおかりしました。サニーさんのライブ情報はこちら→https://l.facebook.com/l.php?u=http%3A%2F%2Fsunnyrocks.jimdo.com%2F&h=KAQF-vv_cロックな夏、ライブハウスでおまちしています!)



◆奥さんは花をしょったアイドルだから



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―――「ママじゃな」としては、大先輩に結婚生活のこと聞きたいんだけど。息子さんがハタチだから、結婚20年以上経ってますよね?

経ってますよ。知り合ってから30年。

―――客観的に見て、すごく仲の良いご夫婦だと思うんですが。

そうね。

―――それは相性ですか? それとも努力? どっちもあると思うけど、どっちかというと、どう?

あのね、奥さんのほうは僕に対して努力してると思う。僕は彼女に対しては相性だと思う。

―――そうなんだ!! 奥さんはどういう努力をしてくれてるのかしら。

やっぱね、この人はこうだからしょうがないや、でも、こういうとこがあるから、他の点では良いんじゃないか?みたいに、発想の転換をしてもらってると思う。理解しようって努力してくれてる姿を見ると、こっちもがんばらななーと思ったり。

―――あ、じゃあ、自分のほうもがんばってるんやん。

んー、まー、でも、すごく上のほうで、花をしょってる(彼女の)姿が見えるから。なんつーか、アイドルなの。

―――アイドルなんだ?! 今も?!

今も。

―――ええええええええええ!!

なんですか、その反応(笑)。

―――まあ、そうじゃなきゃ、今でも一緒に出かけた先で、奥さんの写真とか撮ったりしないよね。ニコランさんかわいいし…。

いや、それはさー。世の中の雰囲気もあるんじゃない? 夫婦になって長くなってくると・・・たとえば、結婚したその日からだって、そういうことはしなくていい、って雰囲気。

―――ああ・・・そうかも・・・

結婚記念日に花を買って帰る、とか言ったら、「女房を甘やかしてる」みたいな目で見られたりするんだよね、男社会って。

―――あるよね! 「嫁に花げな買うて、どげんするとや?」みたいな。

だって別に毎日じゃないよ。年に何回かだよ。日本の男子はね、お花のコスパを考えるべきだと思う。

―――(爆笑)

5千円の食事食べたって、その日だけかもしれない、覚えてるのって。でも5千円の花束もらったら、案外長く覚えてるんじゃない? そこ重要だと思うんよね。

―――お花もらったらうれしいもんね。「こんな綺麗なものをもらえるに値する人間なんだ」って思えるよ。自分の価値がちょっと上がるような気がする。

やろ? だいたい、花を買う自分をちょっと想像してみてくださいよ男子。花を選ぶって、どんだけ気持ちがいいことか。優越感といってもいいよ。別にスーパーの花だっていいんだよ。そういうのがたまにあると、自分も相手も新鮮な気持ちになれるし。

(ちひろ)私も、人の家にお花を持っていくの好き! ベランダの花とかなんだけど、持っていくとき、すごくワクワクする。「早く渡したい」って、足取りがかるーくなって・・・

花はなくなってしまって、思い出だけが残るけど、思い出って増幅されるからね。

―――思い出が増幅・・・・いい言葉だ!


◆夫婦だって、違う意見が出てくるとこから面白さが生まれる

 

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―――あらためて聞くけど、奥さんのどういうところが好きなんですか?

ルックスですね(笑)。でも、ルックスってその人を表さん?

―――表す表す。

(サニーさん、ニコランさんと出会ったとき、「リップスティックグラフィティ」のヒロインにそっくりだ!!!と思ったんですって。)



なんか不機嫌なとこもあったりとか、変化を怖がらないとか。芯の強さがすごいと思うし。

―――ハタチのころから?

うん。で、自分にない世界をいろいろ知ってるなーって、異文化みたいな感じもある。あと議論ができることかな。

―――おふたり、すごくよく喋るんだよね。会話が。議論が。

どんどん話が乗っかってきてさ、話自体が広がるっていうのが、一緒にいて一番面白い。くだらないことばっか喋ってるけどね。

――― 一般的に、夫婦って、長く連れ添うと話さなくなる、とかいうけど。子どもが小さいうちは子どもの話題があるけどさ・・・

話さなくなるっていうのは、クセだと思うんよね。話さなくてもいいかなって。ほら、日記も書かない日が続くと書かなくなるやん。
夫婦も、忙しくて一週間話せないとか、普通にあるやんね。でもそれをさ、今ただ休憩してるだけだと思って、話せるときが来たらいつでも話せる、いつでも話に乗るよ、って意識だけは持ってた方がいいと思う。


―――あー、なるほどね。会話ってほんと、大事だと思うんよね。

喋るのって頭の回転が必要だけど、頭の回転って、持って生まれたものだけじゃなくて、経験っていうか、やってくうちにできるようになると思うし。

―――わかる! 逆に喋ってないと衰えていく。私、出産前に仕事辞めて、大人の会話をする機会が激減して。日々、喋りたーいと思ってるんだけど、いざ人と会うと喋りが下手になってるんよ。なんか自分がつまらん人間になったような。

たぶん、社会で働いてた女の人が、子ども産んで家の中に入ると、子どもが小さいうちは喋れないから語彙が少なくなる。そのあとママ友と出会うんだけど、やっぱり話題が限られてたりしてさ。元の世界に戻るとき、暖気するのに時間がかかると思うんだよ。その暖気をお手伝いできるのは、やっぱりダンナさんなんだよね。

―――んー、すごい良いこと言うね!!

外の話題を持ってくるっていうか。映画見に行くことはできなくても、DVDは借りてこれるわけやん? 何十分でも一緒に見たら、何かしら感想ってあるわけやん。それを話すんだよね。同じ意見でもいいんだけど、違う意見が出てくるとこから、面白さって出てくると思うし。

(ちひろ)別に話さなくてもいいけど、なにげない話・・・今日見た本の話とかするとさ、次の日もできるんだよね。自然と。

そうそう、ゼロじゃなければ。

―――でもさ、おしゃべり嫌いな女の人ってあんまりいない気がするけど、男の人って無口な人は無口じゃない?

あのね、喋るとバカと思われるから。俺、バカと思われるもん(笑)。

―――(笑)。しゃべらないほうが何となく重々しく見えるってことね。

そうそうそう。僕、全然、軽々しいやろ?(笑) 
会社の男の人の文化ってあるよね。貴族文化。奥さんに優しくするとかって負け組なんよ。会社では「うちの嫁なんて」って顔してる。ほんとは思ってなくてもね。それが、家に帰ってパッと切り替えられればいいけど、会社って長いやん? 家にいるのが3時間、会社が8時間だと、会社が勝っちゃうんだよね。


―――なるほど、そういうものなのか・・・。

自分は会社勤めじゃなかったから、そういうのに染まらずにこれた、ってのもある。

―――そうね。それ大きいんだろうね。私も会社勤めしてたから、会社の男の人の文化って、すっごくわかる。

でも、ダメなこと挙げていったらキリがないけんさ。いいなと思うこと挙げていったほうが楽しいと思うしね。なんやかんやいって、好きで結婚してるわけやん? 出だしはね。

◆若い子たちの傷つき方が愛おしい



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(ちひろ) サニーさんみたいな人がお父さんだったら、楽しそうだなー。

いやいや、親が楽しく生きてると、それはそれで微妙みたいよ。楽しみすぎてるから(笑)。

―――なるほど・・・

息子も、音楽とかも嫌いじゃないけど、「アンタ(父親=サニーさん)がやってるからねー」ってのもあるんじゃない?

―――親と同じスポーツやったりさ、特に気にせず同じ道を歩む子もいるんだろうけど、でもなんか、親と一緒のことはやりたくない気持ちもわかるよね。

(ちひろ)わかるー。

―――同じことやると、どうしても親と絡むことになるもんね。

こっちも口出ししちゃうもんね。“子どもに良かれと思ってやることの間違い”はすごい経験した。

―――あー、そうなんだ。深いな。経験者は語る。

ほんとね、アドバイスって、「その子のために」と思ってやるんだけど、結局、言ってるがわの自己満足もあるっちゃんね。息子もいろいろイヤだったろうなって、今になったら思うもんね。

一緒に音楽やってたりしてもさ、ハタチくらいの子を見てると、傷つき方が愛おしくて。


―――「傷つき方が愛おしい」。詩人の表現やね、うまい! 若者の感情の振り幅って、ホントしんどそうだけど、大人になってしまった今見ると、その感受性が眩しくもあるよね。

なんとかしてあげたいな、って思う。でも、手を出しすぎないようにしなきゃ、ってのをすごいガマンしてる。

―――言いたくなっちゃうもんね。

「もうちょっと、体を大切にしろよー」とか言っちゃう。「そんなこと、口に出して言うもんじゃないよ」とか。でも、口に出して言いたい時期なんだよね。自分もそうだったし。

―――そうなんだよねえ(笑)。

なるべくいったん、若かりし頃の自分に置き換えて、フィードバックして考えるようにするとさ、今の若い子たち、みんな自分よりよくできてるから・・・

―――「ごめん、俺なんて、なんも言える立場じゃなかった」みたいな?(笑)

ほんと、そうなんよ(笑)。



(★おわり)

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サニーさんが「自分のテーマソングみたいなもの」と言う歌がこちらから聞けます。大人のメロディを甘い歌声でどうぞ。

『朝食に花を』
https://note.mu/sunnysideyasuda/n/nc066e68b1f26

 

[編集後記]

インタビュー: イノウエ エミ
いいなあ、サニーさん! こんなふうに生き生きと語ってくれる大人の男の人っていいなあ! 言葉が生きてる。現実の中で鍛えられた言葉って感じがします。“こういうものでしょ”とか“こうすべきでしょ”みたいな「大人の分別」じゃなくて、自分の立ち位置から物事を見て感じて、それを奥さんをはじめ周りの人との豊かな会話の中で発展させ続けてきた人の言葉。

親でも先生でもない、こういう大人が近くにいるって、若い人にとってはめっちゃいい環境だなって思います。サニーさんは「考えてみたら俺たち全然共通点ないよね」って言ったけど、私は、「2・3人しかいないところに着地してしまう」人生、そのちょっとした淋しさと、「いいよそれで」って嘯いちゃう性質に、ちょっと共感してます。サニーさんの周りにはそういう人が集まってきてる気がするよ。

ご夫婦ふたりともに取材できて、「ママじゃな」にとってはすごく刺激的で充実した機会になりました。ありがとう、これからもよろしくお願いします!

※Life-is-mine、私も参加してまーす

エミの moonshine 離れ | 私の人生、私のもの。【ブログアパート】



撮影: 橘 ちひろ

久々の「ママじゃな」撮影、緊張したけどサニーさんがとても堂々と快く写って下さって楽しく撮影が進みました。
しばらくはベビー連れの撮影…時が進むごとに厳しくなるでしょうね(汗)
でもサニーさんが「子連れでの撮影、これ、かなり将来的に自信になるんじゃない?」って言って下さって勇気が出てきました。

そして、サニーさんは本当に面白い方、説教くさくないし昔ばなしばかりじゃない珍しい「おじさま」でした。サニーさん、これからどんな面白い事していくんだろう、そして私も何か面白いことしていきたいっ、それには行動だなって思いはじめています。

【Life-is-mine】 に参加しています (エミ)

こんにちは。なんちゃって梅酵素を仕込み中のエミです。”なんちゃって” なのは、初めての試みでうまくいく自信がないから~(・ω<)


ちょっと前から、ブログアパートメント【Life-is-mine】に参加してます。

 

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http://lifeismine.me/

 

この4月に始まった新しいサイト。古い友人、サニー安田こと安田クニヒデさんが主宰しています。

お誘いを受けて、「私これ以上、何を書けるかな?」と思ったのですが、楽しそうなことには乗っかってみよう!と思い、一室をお借りしてみました。


10代から50代までの男女、今は30人くらいの方が、思い思いに、好きなことを綴っています。

日々の出来事。食べたもののこと。映画やライブの感想。趣味のこと。活動の紹介や告知。


私は特にテーマを決めてないんですけど、基本的に、「役に立たないこと」を書いていこうと思ってまーす。

今、私の記事で一番新しいのは、こちら。

http://lifeismine.me/archives/1965

 

いかにも役に立たなさそうでしょ?(^^)

よかったら、見てみてね。

 

そしてよかったら、あなたも【Life-is-mine】で何か書いてみませんか? 空き室まだまだあるとのこと。
家賃・敷金礼金etc、一切かかりません(笑)。

テーマも更新ペースも自由。難しく考えないで、写真1枚+説明1行、とかでも全然いいんですよ。週に1度でも、月に1度でもいいし、忙しければ黙ってお休みしてていいんです。

そんなに適当で、やる意味あるの? って思うかもしれないけど、「なんかやってみる」って、どんなに小さくても確かな一歩じゃないかなと思います。

まずは、どんなところか見てくれたらうれしい! 毎日更新があって、ホントにいろんな人がいろんなこと書いてて、見てても飽きないです。

ちひろちゃんも、もうすぐ始めるみたいだよ。そうだよね?(^^)


ちなみに、この ↓ のハガキのモデルさんは、 「ママじゃない私ポートレート」vol.5 で登場していただいたニコラン・コランさんです
ニコランさんは、【Life-is-mine】主宰サニーさんの奥様なのです!

 

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番外編: 働く背中


東京みやげに歌舞伎座の「隈取りシートマスク」はいかがですか? こんにちは、エミです。

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◆21世紀に世襲って・・・

 

突然ですがみなさん、「世襲制」って聞くと何を思い浮かべますか? あ、「現代の」世襲制ね。将軍とかじゃなくて。

世襲議員、二代目社長、タレント親子・・・。そして、歌舞伎を始めとする伝統芸能。いずれにしても、良いイメージはなさそうですね。

かなり前ですが、ダウンタウン松っちゃんが、すこぶる否定的な発言をしていました。
人間国宝だーとかいって有難がるけど、歌舞伎の家に生まれりゃ誰にでもできるようになるんやったら、大した芸と違うんちゃう?うんぬん(意訳)(エセ大阪弁)」。
才能と努力とでお笑い芸人として一流になった、という強烈な自負が見え隠れする意見でした。歌舞伎好きを自認する私も「うーむ、一理ないとはいえない・・・」と思わされたもんです。

ま、時代錯誤ですよね。世襲だなんて。職業選択の自由、それは現代社会において当然の権利です。いえ、それは建前で、実際は格差社会が広がりつつあったりするのでしょうが、「職業選択は自由であるべき」という概念は皆が共有しているはず。



私は歌舞伎が好きで、それから“バックステージもの”も好きなので、テレビで歌舞伎役者のドキュメンタリーや特番などをやってるとよく見ます。その中に必ず出てくるのは、家族の話題。

奥さんや子どもとの微笑ましい話。感動秘話。ま、歌舞伎役者に限らず、普通の芸能人でも、むしろ一般人でも、親子で出演する「家族アルバム」的な番組ってありますもんね。プライベートの切り売りも仕事の一部ですよね。

・・・なーんて、割とシラーッとした目で見る(というか、興味ないので見ない)のが私の基本姿勢なのですが、最近、ちょっと違う気持ちが芽生えましてね。


子どもを許容できる職場

 

この新春(だいぶ前だな)、市川海老蔵中村勘九郎の特番をそれぞれやってたんですね。2人はまったく違うタイプの役者なんですが、共に30代で、近年、偉大な歌舞伎役者であった父親を亡くしている点、共通しています。また、彼らは共に、幼い子どもたちを持つ父親でもあります。

当然、特番にも出てくるわけですよ。子どもたちが。

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勘九郎の2人の子どもたち。ニューヨーク公演にも家族で行く)


男の子は跡取り候補です。となると、物心つくかつかないかの頃から稽古し、初舞台を踏んで・・・言ってみりゃ大人の勝手ですよね。かわいそうなのかもしれません。

でも、彼ら結構楽しそうなんです。ていうか、幼児だから、基本、自然体ですよね。小さい子はマネっこが好きだから、芝居のキメせりふを言ったり威勢よく見得を切ったりします。褒められるとすごくうれしそうです。もちろん、厳しく指導されたりする姿はかわいそうなんですけど。

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(怒ってても、子ども相手の優しい顔ではある。怒られてる方はそんなのわかんないだろうけど)


子どもは天真らんまん。稽古場でも楽屋でも、走り回ったり、大人にじゃれかかったり。父親同士が同じ舞台に出ていると、子ども同士で遊んだりもします。

気に入らないことがあれば機嫌を悪くしたり、泣いたり。眠くなれば寝て、1公演時間まるまる、楽屋のソファで寝たり。

それを、母親や、おばあちゃんや、お弟子さんやスタッフ、そして歌舞伎役者、誰かが見守って、相手をしたり、叱ったりしています。勘九郎の息子、七緒八くんの場合は、七之助おじさん(勘九郎の弟ね)がかなり良い遊び相手になってるみたいですね。


なんかいいなあ、と思います。稽古場も楽屋も仕事場ですが、子どもの存在を許容するスペースというか、余裕があります。母も子も、家庭に閉じ込められず、いろんな人との雑多なふれあいがあるということ。

開演を前に化粧台に向かう父、勘九郎のそばを、息子の七緒八くんがちょろちょろ走り回ります。もちろん子どもを邪魔に感じるときもあると思うんです。でも、無邪気な姿にほっこり和むときもあるだろうと思います。

かーわいいんだよねぇ。お父さんの職場で、小さい子どもがうろちょろしてる姿。


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海老蔵と息子ちゃん)

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勘九郎と息子ちゃん)

子どものほうも、こんなとこじゃなくて外で遊びたいと思ったりもするだろうけど。でも、親のいるところって、小さい子にとってはやっぱり安心できる場所だよね。

 

◆働く父を見て育つ

 

そして、子どもは見ています。稽古場を。楽屋を。上演本番を。
地道でハードなバックステージから、観客で埋め尽くされる華やかな舞台まで、大人の仕事の一部始終を見て育ちます。

大勢のスタッフのそれぞれの分担、チームワーク。そして父。本番前の、ピリッと緊張感漂う背中。舞台の真ん中に立って喝采を浴びる姿。


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海老蔵にしても勘九郎にしても、生前から父への尊敬を隠しませんでした。そのほかも、歌舞伎では、スター役者の息子は、やはり歌舞伎役者になる例がほとんどです。

既得権だもんねぇ」って話かもしれない、「レールに乗っかった人生」かもしれない、でもね、大の大人が一生懸命に打ち込んでいる姿を見続ければ、それはやっぱり心に響いて不思議じゃないですよね

逆に、そういう場面を見ることなく大人になってしまう人間が大半なんですよね。私も、「♪職業選択の自由アハハーン(古)♪ 何でも選んでいいよ~」って言われても、仕事のことなんて何も知らないから、何を選んでいいのかわかんなかったタイプです。

親と同じ職に就くって、前時代的で世界が狭いようだけど、親の仕事ぶりを間近で見て育って「自分もこの仕事がやりたい」と思えるならば、それはすばらしいことなのかもな。と思います*1

もちろん、伝統芸能に限った話じゃなくてですよ。NHKの『サラメシ』なんか見てたら、田畑とか工場とか、家族で仕事をしてる家って今でもけっこうあるんだなあとわかります。


「仕事ってなんだか面白そうだな」と

 
とはいえ、誰もが子どもに仕事ぶりを見せるってのは不可能ですからね、世の中。我が家も現在サラリーマン家庭。息子を夫の会社に連れていって、父ちゃんの働いている様子を見せてやることはできません。

でも、 子どもに親のどういう姿を見せるのか?」ってのは、ときどき意識したいなと思います。
子どもに、どんな人間になってほしいか?」「何を体験させてやりたいか?」 それもあるけど、「子どもに自分の何を見せるのか?」ってことを。

いや、見せようとしてなくても、子どもは見てるものだよね。自分にとって、もっとも身近な大人である親を、無意識のうちにも見て、影響されて育ってく。

 A.「仕事って面白くなさそうだな。大人って大変なんだな」
 B.「仕事って面白くなさそうだな。でも仕事が終われば楽しそうだな」
 C.「仕事ってなんだか面白そうだな。仕事以外も面白そうだな」

できれば、Cがいいよね。

我が子が、会社からなんとなく疲れて帰ってくる親を見て、「仕事って面白くないんだろうな」「大人って大変なんだな」って漠然と思って育ったら悲しいもん。

とかなんとか言っちゃって、今現在、私、専業主婦なんで、「世の中で働く姿」は見せられないんですけどね、だはー。


(おわり。写真汚くてごめんなさいね、エミがテレビ画面撮ったりしたものです。)

 

*1:歌舞伎の場合、「女の子は望んでも同じ仕事ができない」とか「同じ歌舞伎役者でも家柄や格がいろいろ違う」なんて問題もありますから、世襲を全肯定してるわけでじゃないですよ念のため・・・

vol.17 稲生 茉莉子 の 「ママじゃない私」ポートレート

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まりちゃんは、年中さんの男の子・もうすぐ2歳の女の子のお母さん。お兄ちゃんのほうは、インタビュアー・エミの息子と幼稚園のクラスメートです。うちの幼稚園でも、いちばん遠くから通ってきてるんじゃないかな。昨年の初夏には、彼女の家のそばでホタル観賞会もやりました。入園してまだ2か月だったのに、まりちゃんが発案して、クラスのみんなに声をかけてくれて・・・。

そう、まりちゃんは行動の人。三姉妹・コーラス・ココナッツオイルなど、彼女を語る上での要素はたくさんあるんだけど、今回は、子ども→独身時代や自然・農業などに的を絞ったインタビューになってます。代打カメラマンとして、福岡乙女カメラ部の綾子さん に再び登場してもらいました! 綾子さんは同じ幼稚園の年長さんのお母さんです。3人の“ママ友ランチ会”って感じの楽しいひとときをどうぞー。 

 

◆おもしろい人なんです、まりっぺ

 

ゆうべは早く寝ようと思ったんだけど、ちょっと緊張してきて片づけたりして・・・

―――あ、緊張した?

いや、楽しみだったけどね。

―――よかった。今日は、まりこ・オン・ステージやけんね(笑)。

私だけの話をしていいんやろ? なかなかそういうことないけんね。「(エミちゃんは)どう?」みたいに気を遣って話を回さなくていいってことね。

―――ははははは(笑)。そうそう。

―――(綾子)おもしろい人だね(笑)  (註:綾子さんとまりちゃんは、がっつり話すのは今日がほぼ初めてなのです)

―――おもしろいやろ?(笑) 夜は何時に寝てる?

えー、バッラバラやけど、子どもと一緒に寝て、潔くそのまま朝まで起きないことも多いよ。8時から6時半までとか。

―――へー! やっぱりそれぐらいたくさん寝るのが大事かもね。肌とか綺麗やもん。今日、化粧した?

今日ね、眉毛とチークだけしたと。化粧してるっぽいやろ?

―――(綾子)いつもスッピンなんだ。

―――今日、もしかして、すごい化粧してたらどうしよう?って思った(笑)。

お母さん飲み会のときみたいにやろ(笑)。

―――あのとき、なんかすごいシャイニーやったもんね(笑)。

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◆田んぼにチャレンジしています

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今年、友人たちと共に、かねてより興味のあった自然農にチャレンジしているまりちゃんです。田んぼの場所は、今の家から、さらに山へ行ったほう・・・じきに、その近くにお引っ越しすることも決まっています。

 

そのあたりは中山間部っていうんだけど。山間部での農業は、もう廃れてしまったらしいと。中山間部もかなり減りつつあって、今が大事な境なんだって。これ以上、食糧自給率を下げないためにも、中山間部の農業をいかに守るかが鍵になる。

―――何組くらいでやりようと?

20人くらいいるかな。でも、月に1回でもいいし、1回だけ参加する人もいる、それで全然いいと。人手は大歓迎やけん。

―――自由参加なんだね。

私たちの先生は、特に若い世代に参加してもらうことが大事だと思ってるんよ。先週、田植えをして・・・

―――手ですると? 自然農だったら。

私そう思ったらね、田植え機使ったんよ(笑)。

―――あら(笑)

トラクターも使うんよ(笑)。

―――そこはやっぱりそうなのね(笑)。でも、田植えとか、すごいよねー。めちゃ興味ある。

やろ? 来て来て。ぜひぜひ。

―――どうやって水引いてるわけ? 中山間部なら、高いところなんだよね? 昔ながらの水路があると? 

山からの水。そこらへんの農家さん、みんなで管理してると。だから、そこに交渉に行くとこから始まって。

―――「うちらにも水路を使わせてください」って?

そうそう、あいさつ回りをして。私は今回行けなかったけど、溝掃除とか、会合がある時は、参加できる人はするんよー。

―――うわあ、すごいなあ。

そしたら、たまたまね、その中の農家さんのひとつが、私がリハビリの仕事してるときに、患者さんだったおばあちゃんが住んでたおうちやったと。

―――(綾子)えー、すごくない?

―――すごいすごい!

すごいやろ?! おばあちゃんはもう亡くなってるんだけど、すごくしっかりしててスッテキな人やったけんよく覚えてるんよ。お嫁さんがね、ベッドの横に、いつもサザンカとか季節の花を一輪挿しに綺麗に挿してあったと。で、退院前に自宅指導でうかがって、手すりの相談とか、一緒に歩いて動作を家族と確認したりしたことがあって・・・。この話をしたら、お嫁さんが、「あー、いらっしゃいましたね」って言ってくれて、一気に・・・

―――距離が縮まったんだ。ご縁のあるおうちなんだねえ。水路を使うためのあいさつ回りから始まるっていうのが、めっちゃリアルでいいわー。私、田んぼ関係の話聞くの大好きなんよ。

―――(綾子)あ、今日、そこ掘り下げていく?

―――あ、違うよね(笑)。それは今度あらためてじっくり・・・(笑)。水路の話とか大好きやけん。

あのね、じゃ、これだけ。水路って、これぐらいの(と、赤ちゃんの頭くらいの大きさを両手で作る)石1個で操作してるんよ。わかる? 水が流れてるのを、この石で堰き止めたら、今度はこっちの方向に流れていくっていう・・・

―――すごーい!!(大喜び) 昔ながらの知恵だねえ。


 

大都市を転校してまわった子ども時代

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―――事前アンケートを見てびっくりしたのが、子どもの頃はずっと都会に住んでたってこと。しかも、東京アメリカ大阪名古屋・・・って4年ごとに大都市を引越ししてたんだってね。

そうそう。父の転勤でね。

―――転校とか、「全然、苦にならなかった」って書いてたけど。

別れが悲しいとかも、まだそんなになくてね。中学の時も、別れ際は泣いたけど、「さあ次はどんなとこだ」って楽しみな気持ちもあったかも。

―――引っ越しのたびに、ある意味、リセットするみたいな感じ?

そう! 中学とかさ、別にトラブルはなくても、なんかこう、ちょっと人間関係が複雑なときとかない?

―――あるあるある。めんどくさい年頃やもんね。

バスケ部のキャプテンしててさ、顧問の先生が怖かったし、「あー、これで辞めれる! スッキリ!」って。

―――きれいな体になって脱出、みたいなね(笑)。新しい環境に入っていくのは大変じゃなかった? 友だちはすぐできた?

そうねえ、できたと思うよ。

―――できそうだよね(笑)。

女子同士でがっちり固まってるようなグループとかには入らないんだけど、一対一の関係は割と作りやすかったんよね。席が近い子とよくしゃべったり。


 

 

理学療法士までの道のり(または“思い込み人生”)

 

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―――理学療法士になろうと思ったのはどうして?

無難だけど、手に職が欲しいと思って。高校生の時に父が病気したのもあるんだけど。脳梗塞でね、そのときはひどい失語もあって、もう仕事できんくなるかもしれないって・・・そんなこともあって、手に職が欲しいと思ったのかな。危機感から。

―――そっかー。なるほどー。

どんな仕事があるかわからんけん、図書室で進路関係の本をあたって。わたし数学が好きやったけん、理系がいいなと思ってて、「あ、理学療法士」って。そんな感じよ。直感。

でもさ、危機感からとか言ってるくせに、資格がとれる大学を東京で探して・・・独り暮らしでお金がかかるとか考えてないんだよね(笑)。


―――そこはやっぱり、まだ高校生だからね。

母もなんにも言わずに、「好きなところに行っていい」って。今聞けば、当時はすごく切り詰めて、苦労してたらしいんだけどね。わたし全然まじめに勉強してなかったし、落ちたんよ、私立は。都立のほうは、受験の開始時間を確認しないで行って・・・

―――え? え? 

10時開始って、勝手に思い込んどったと。私そういう、思い込みの人生やけん(笑)。

―――おいおいおいおい!

9時過ぎのバスに乗ってみたものの、学生が誰もおらんとよ。あれ? 今いちばんいい時間のバスだよねって。

―――受験生、どこ行った?って。

―――(綾子)だって始まってるからね。

そこで初めて不安になって、受験要項みたいなやつちゃんと持ってたから広げてみて、日にち間違ってないよね、時間・・・えーーーーー! 9時からやん!! そのとき9時25分くらいやったんよ。で、要項によると30分までは・・・

―――入室できるんだ。

そう、だけん、すっごい全速力で走ってさ、ガラガラガラって開けたら、みんなが、バッ!て、こっち見て。私、ハァ!ハァ!ハァ!って言ってて。で先生が優しく「ちょっとこっち来てもらっていいですか?」て。学園長の前に連れていかれて、学園長から「すみません、9時30分過ぎたので、受験資格がありません」って言われて、泣きながら帰った(笑)。

―――はあああああああ、ひどい話だ!!!!!(笑)

―――(綾子)もう、ひどい!!(笑)

今だから笑って話せるけどねえ。

――― 一部始終を動画で撮っておきたかった。すごい顔してたろうね(笑)。

客観的に見たいよね(笑)。ま、遊び半分の気持ちだったんだろうね。翌年からは、高校で「受験時間は必ず確認するように。去年間違えた先輩がいたから」って先生が指導してるみたい。

―――前例になっとるやん(笑)。悪しき前例(笑)。それで専門学校に?

そう、福岡で。自宅からから通えるところ。結果的に、それが一番良かったんよ。学費がさ、一年で7万円とかやったと。親戚とかからも「親孝行」って言われて。

―――運命に導かれたんだね。きっと必要な遠回りだったんだよね(笑)。

 

 

 

◆患者さんたちとのこと、今でもよく覚えています

 

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―――実際、職に就いてから大変じゃなかった? 理学療法士、リハビリの仕事だよね。

大変だった。一年目とか、担当した患者さんに対してプレッシャーっていうか、申し訳なくてさ。勉強して一年で技術が身につくはずがないわけよ。気持ちでカバーするしかないんだけど・・・

―――身体がすごく不自由になってるわけだよね。患者さんは・・・。

半年前までバリバリ働いてたような50代の男性とかね・・・。脳梗塞で、ひどい失語で、手足もかなり固まってて。

新人のころは、患者さんとは病気してからしか会ってないから、患者さんとしか思えんかったと。でもそこで、その人や、ご家族と関わりながら・・・奥さんから「昔こういう人だった」って話を聞いたり、写真を見たり・・・ちょっとずつ、ああ、患者さんだけど、自分より大先輩で、長い人生を・・・


―――社会で活躍したり、子育てしたりとかね。

そう。そういう人がさ、今すごく不自由で葛藤してるわけよね。涙を流したりもする。何とかしてあげたいんだけど、何もできなくて、先輩に相談したりして、言われたとおりにやるんだけど、それが正しいのかどうかもわからずにやってる状態。今もすごく覚えてる。

―――しんどいよね。患者さんはもちろんしんどいけど、まりちゃんも。

今、自分がリハビリしたら、もっと違うことができたかな、私も年を重ねて子どもを産んだりもしたし、その人の人生の新しいきっかけになるような後押しができたかもとか、もっとこう・・・心を寄せられたんじゃないかもしれないと思うけど。21歳のころの自分じゃ・・・。

―――うん、それはやっぱり難しいよ。

いまだに申し訳なさがね、ご家族に対しても・・・。奥さんに「歩けるようになりますか」って聞かれて、ほんとは「なりません」とか言っちゃいけないし、思ってもいけないと思うけど、私、一生けんめい歩行訓練もしたんだけど、状態はなかなか良くならなくて・・・「前みたいに歩けるようにはならないと思う」って言っちゃったことあるの。そのときの奥さんの表情とかね・・・。

―――まりちゃんも必死だったんだよね。

そのときは「伝えたほうがいいのかもしれない」って思っちゃったんだよね。人生勉強させてもらった・・・。でも仲良くなれる人もいっぱいいたよ。私、人と触れ合うのが好きやけん。毎日リハビリで会うことを楽しみにしてくれた人もいたし。

―――何年やったの?

6年半くらいかな。

―――けっこう長いよね。がんばったよね。

でも、いつも逃げたかったかも。やっぱり重たい仕事だから、休みの日も考えちゃうし、うまく気持ちを切り替えられんかったと。自分の技術にも自信がなくて。

 

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(すばらしく味のあるダイニングテーブルは、おばあちゃんの家から譲ってもらったもの。綾子さんも惚れこんでました)

 

◆ダンナさんには何ひとつムダなものがない

 

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―――ダンナさん(註 まりちゃんは職場結婚で、ご主人は今も理学療法士をされています)は、切り替えられる人?

うん、向いてるんだと思う。仕事のときは、ちゃんと寄り添える人だと思うんだけど、家に帰ったら、完全に自分の趣味・・・自転車オタクだからね(笑)。

―――そういう趣味があるからいいのかもね。切り替えやすいっていうか。

そうそう。子どもといる時間もそうだろうし。彼ね、しばらく前、90才ぐらいの患者さんに、言葉はアレだけど「人間は気違いくらいにならないとうまくならないよ」って言われて、ほんとそうだなと思ったらしく、すっごい練習し始めたんよ。自転車。山道が好きでね、平日は朝5時くらいから・・・

―――平日もやるわけ?!

仕事に行く前に乗るんよ。朝5時から6時半くらいで乗って、そこから仕事に行く。朝からお腹ぺこぺこよね。朝ごはんもいっぱい作らんといかん。もうね、健康的よ。ムダなものがないもん。

―――休みの日も? 

前は私が期待して空けとったけど、最近はもう私が自分の用事を入れるようになって、そしたら気兼ねなく乗りに行く。一日じゅう。三瀬に行って、糸島行って、吉野ケ里のほうから帰ってくるとかだよ。100キロ以上行くもん。

―――ええええー! すご!!! でも、家族で過ごしたいと思わない?

逆にね、過ごすときはちゃんと過ごしてくれる。メリハリつけて。昼から家族で出かけようってなったら、午前中、10時までに帰ってきて、出かけられるようにピシャッて準備してくれて。

―――機会は少なくても、その分、濃いのかもね。ぎゅっと濃縮されて。まりちゃんも、ダンナさんのこと「私をいつも肯定してくれる人」って書いてたよね。

―――(綾子) なんか、いい夫婦だね。見習わないといけん。

いやいや、ケンカもしてますよー。

 

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(ささっと、その場で手際よく作ってくれたお昼ごはん。すてき!! そして、とっても美味しーい! たっぷりひじきとキュウリのドライカレー、今度作ってみようと思います! 「大人が食べるならミョウガでもおいしいよ」とのこと。)


◆土に触れながら、どんどん自由に

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―――都会で育ったのに、自然派になったのは何でだろう?

うーん、今思い出すと自然の中に連れて行ってもらってた、旅行とかも。父が奈良のほうに電車で連れて行ってくれたり。山登りで秋の田んぼを見た記憶はあるんよね。なんか憧れがあったのかもしれないね。

―――アンケート、「結婚前に農家に行った」って書いてたよね。そのころは既に農業に興味があったってことよね。

食べること大好きやけん、食には興味があって、でも料理教室とかだと、なんか切り離されちゃってるよね。食材ができるまでのことと、料理して食べることとが。

―――確かにそうだね。

どうやってできるか知りたい、やっぱり農業はやってみたいなと思って、結婚前に、「今がチャンスだ」と思って早めに仕事を辞めて、結婚までにあと半年は残ってるけん、行けるしこ行って来ようと思って。だけん、結婚式の準備全然してなくて、だいぶブーブー言われたけど(笑)

―――(笑) 山形と小国(阿蘇)だったよね? どうやって見つけたの?行くところ。

「ウーフ」っていうシステムがあってね。農業労働力を提供するかわりに、ホストの農家が食事と寝床を提供するっていう交換システムがあるんよ。双方、登録制でね。

―――へー、そんなのあるんだね。

私の大好きな湯布院のおばあちゃんのお父さん、だから私のひいおじいちゃんが山形出身でね。おばあちゃんが「北の人間が好き。静かな中に、内に秘めた力強さがある」って言ってて、わたし東京より北って行ったことなかったけん、これはチャンスだと思って、山形マクロビやってる若いご夫婦の農家を選んで行ってみたんよ。

―――山形、なかなか行く機会ないよね、九州人だと。何作ってたの?

さくらんぼ農家で、リンゴも作ってて。田んぼもしてたかな。その人たちは、すごいマクロビで、一日一食で農作業するんよ。朝からずーっと外で作業してても食事の時間がないけん、作る手間もなくて、すごい効率的なんよ。夕方5時に帰ってきて、ばーっとゴハン食べて寝る生活。

―――ひいいい! 疲れんと?

疲れないんだって。あ、私は二食食べてたよ。

―――あ、よかった(笑)。農作業やってみて、どうだった?

すっごい楽しかった! こういう労働っていくらでもできるなと思った。田んぼも初めて入ったときは、あー気持ちがいい、幸せ~って思ってね。

―――(綾子)向いてるんやろうね。

―――完全に向いてるね。

ウーフのシステムは世界中にあってね、それを使ってステイする人もいて、私が行った時も韓国の男の子と一緒だったんよ。その子、ウーフでいろんな日本人の女の子に会ってるんだけど、「日本人の女性は感性がすごいね」って言ってて、「だけどなんで政治的な話は全然しないんだろう?」って言われて。

―――へええ、国際的な話だね。

「すごい疑問だ」って言われたの覚えてる。そうだよね、何も知らないんだな、って。政治のこと語られない風潮あるよなって。

―――そういう気づきもあるんだね。

小国でお世話になった方は、50才ぐらいで、シングルで男の子2人育ててて、すっごい自由主義の人なんよ! なんか日本人離れしててね。「こーんなに自由に、快楽主義で生きていいんだな」って思って。もちろん、クセの強さに引く人もいるんだけど、私にはそこが逆に魅力的で。

―――それで、まりちゃんもどんどん自由に自由にと・・・

自分の人生は自由に生きようと思って。やっぱり楽だよね。

―――楽しそうだもんね、すごく。

そう? いろんなものに閉じ込められちゃうのはもったいないよなって思う。自分の身体とか心とかがほんとに喜ぶことを探していこうとは思う。

―――(綾子)いいね。楽しく生きたほうがいいよ。

―――土とかって、人間を解放するものかもしれんね。土とか山とか。

あー、そうかも。柔らかさがあるしね。固い中に生きるのと違うかもね。そんな気がする。田んぼとか、イモリもカエルもいーっぱいいるけど。こないだは顔をアブに刺されて、コブとりじいさんみたいになったんよ(笑)


(おわり。)


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野草を掲げて満面の笑顔・・・そんなあなたが好きよ☆)



[編集後記]

インタビュー:エミ
いやはや~(しみじみ)。まりちゃんとは子ども入園以来、いろーんな行事を共にしたり、日々の送り迎えでも話したりして、すっかり「おなじみの存在」なんだけど、当然ながら、お母さんになる前の彼女のことはなんにも知らなかったわけで。
いつもオープンなところ、面白いところ、情熱的なところ・・・まりちゃんのすてきな個性が、子どものころからの様々な経験によって培われ磨かれてきたことを感じて、いろんな話に爆笑しながらもちょっと感動してました。まりちゃんのこと、これまでよりもっと親しく、そしてなんだか誇らしく感じます。

ほかのママ友たちも、みんなそれぞれ、いろいろな経験を糧にして今のその人ができあがっていて、縁あって一緒に過ごしているんだなあと、出会いの不思議さ面白さをあらためて思いました。まりちゃん、美味しいお昼ごはんごちそうさまでしたー! のどかなご近所をお散歩しながらの撮影も楽しかった!!

撮影:野田綾子
まりちゃんとは今まで顔見知り程度だったのでどんな人か全然知らなかったのですが、話してみるととっても面白い!
前向きでキラキラしていて大好きになりました。

まりちゃんの作ってくれたひじきカレーがとっても美味しくて、もうすでに2回も家で作ってしまいました。
また遊びに行かせてね〜♡

 

大池どんぐり文庫、梶田さんに会いに行きました

 

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すてきな家庭文庫「大池どんぐり文庫」を長いこと主宰していらっしゃる梶田由美子さん。ずっと前から、ぜひ「ママじゃな」に登場していただきたいと思っていた方です。

文庫では、通常月2回のオープン日にやってくる子どもたちに、膨大な、そして選び抜かれた蔵書を貸し出しています。物語の語り聞かせ“ストーリーテリング”や、絵本の読み聞かせの時間もあります。
この快く、あたたかい空間はどのようにできたのか、以前からずっと知りたかったのです。2人のお子さんも既に育てあげていらっしゃる、ママとしても大先輩の梶田さんに、勇気を出して、取材のお願いをしてみました! 今回の代打カメラマンは、みやこ食堂でおなじみの京子ちゃんです。梶田さん、京子ちゃん、よろしくお願いしまーす!



●大好きなどんぐり文庫、大好きな梶田さん

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―――私がお友だちに連れられて初めてうかがったのは、「赤ちゃんどんぐり」の日ですね。0歳~就園前までの小さい子たちに読み聞かせやわらべうたをしてくださって・・・うちの子は1歳になる前、10か月くらいのときだったかな? 

そうでしたね。かわいかったですよねぇ。

―――中には当然、はしゃいだり、機嫌の悪い子たちもいるんだけど、なぜか騒がしく感じない、まとまった雰囲気で、すごくびっくりしたんです。「こんなことができるんだ!」って。
子どもが集まれば騒然とするのが当たり前だと思っていたから、どんぐりさんの落ち着いた雰囲気には本当に癒されて・・・

そうでしたか。それは良かったぁ。来てくださってるお母さんの声って、案外、聞ける機会がないので、今うかがって、「あーよかった」と思いました。

―――ね、そうだよね?(と、本日のカメラマン京子ちゃんに)

―――(京子)ほんと、梶田さんに癒されてます。

子どもと本のおかげだと思いますけどねぇ。そして、本当にいろんな方が助けてくださっているからですね。

―――どんぐり文庫のいちばん最初って・・・?

13年前だと思うんです。私たちが対応できる人数は限られてるから、チラシをまいたりとかはしないで、「口コミで来てくださったら、そのご縁を大事にできたらいいね」という感じで広がって・・・。
なんか、「緊張してる」って言う割に、ぺらぺらしゃべってますけど私(笑)。


―――ぜひぜひ、どんどん聞かせてください!

私ひとりでは、する勇気がなくってですね。私、声帯がちょっと弱いのか、幼稚園の先生をやっていたころも、声がよく枯れていたんです。だからお話の活動はなかなか難しくて・・・

―――子どもと接しようと思ったら、声の問題は、けっこうシリアスですよね。

そうなんです。でも、あるお友だちが、「だいじょうぶ。梶田さんが声が枯れてても、そのときには、私が読みますから。やりましょう!」って言ってくださって、それで、勇気が出たんですよ。
ほかにもたくさんの方に助けてもらって・・・「本を読んであげるのはできないけど、裏方をやるわ」って、ずっと文庫の貸し出し係をしてくださってる方とか。いろんな方の支えがあって、楽しい時間を過ごさせてもらってるんですよ。



●文庫のルーツ、原点

子どもも本も、もともと好きではあったんですね。私、大きくなっても、ずっと児童文学を読んでるような人だったんです(笑)。で、いちばん最初はですね、高校のときに・・・・ (と本棚に本を取りに行く梶田さん)

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これ、『子ども図書館』っていう石井桃子さんの本をたまたま読んでね。
ご自身で家庭文庫を始めた、その7年間くらいの記録なんです。私自身が子どもの頃に楽しんだ本がたくさん出てきて、文庫での子どもの様子もわかりやすく書いてらっしゃって、私、すっかりうれしくなってしまってね。何度も何度も繰り返し読んじゃ、わくわくできるんです。


―――なるほど~! これは、梶田さんの「原点」っていわれたら、すごくわかる気がします。今、パラパラと見ただけでも・・・

(この本の新装版↑をお借りして、読みました。すごく面白かったです! ちょっと、私も文庫がしたくなりました(笑)。事実、この本が出版されてから、日本全国で家庭文庫が急増したくらい、影響力の大きな本だったようです。)


で、「おばあさんになったころに文庫をしよう、うちで」と思ってたんです(笑)。子どもとお茶を飲みながら本の話をできるような文庫がしたいな、とずっと思い続けていて・・・

―――わあ、かわいい、すてきな夢!

そういう文庫がしたいっていうのは、前々から夫には話していたので、おうちを建てるときに、設計の人にお願いしたら、こんなふうに作ってくださったんです。

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(いくつもの大きな本棚には、色とりどりの本が並びます。文庫の日には、子どもたちが思い思いに本を選んで借りていきます。)


子どもだけが持っている特別な力

 

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―――今日の予習にという意味もあって、自分でも『子どもと物語の力』という文章を書いたんですけど・・・ 

 
とても面白く読ませていただきましたよ~。「そうだな、そうだな」と頷きながら読みました。

子どものころって、お話が、大人とは違う入り方をするような感じがして・・・なんていうんでしょうか、ただ見たり聞いたりしてるんじゃなくて、そのまんま入り込んじゃってるような感じがするんです。
子どもたちの顔が、本当にもう、なんていうか、別物のような、別世界に行ってるような。「体中でお話を感じてる」っていうと、なんだか薄っぺらいんですけど、もっと違うんですけど・・・


―――わかる気がします。なんて言ったらいいんでしょうね・・・

そんなときに、大人と子どもってやっぱり違うな、と思うんです。
だから、本当に、子どもの、そのときそのときの年齢に届けたいなあと思って。なかなか入り込んで聞けなくて、「つまんないわ」って言う子もいますけど・・・


―――いますよね、中には。

そんな子が聞けることもあって、それはとてもうれしい瞬間なんですね。お話の楽しみを味わわないまま、いなくなっちゃう子もいますが、こんなふうに聞くお話があるんだなってことを知ってたら、またちょっと違うかもしれないな、なんて・・・自己満足かもしれませんけどねぇ。

―――いやいや、そういう願いというか、祈りをもって活動されているのが素敵だと思います。

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(お話会では、「お話のろうそく」に火を灯して、みんなでお話を聞きます。終わって吹き消すのは、誕生月の子の役目。火が消える瞬間にひとつだけ、それぞれ心の中で願い事を唱えます。)


●耳からお話を聞く体験

 

―――お話会のスタイルは、最初から、今のようなものができていたんですか?

そうですね。大学生の時から長いこと、ボランティア図書館のお話会に所属していましたから、そこで勉強したことが土台ではあったんですね。
文庫を始めてからも、いろんな講座を聞きに行ったり、今も、子どもたちの様子を見ながら、みんなで考えながらやっていますけれど、とにかく、お話をひとつは入れたいなって。


―――お話、というと・・・

ストーリーテリング、耳からお話を聞く体験ですね。 (エミ解説・絵本のように絵を見せながらではなく、語り手が、物語を覚えて語る「語り聞かせ」です)

今ね、中学校でも、「朝読」のときに、月にいっぺん、やっているんですよ。

―――えーっ、中学校で!! 聞いてみたいです! でも中学生向けって、選ぶのが難しそう・・・

そうなの。時間が10分だから・・・。でも探せばいろいろあるんですよ。意外によく聞いてくれるんです。
語り聞かせは、本を持たないから、子どもたちの顔がよく見えるんですよ。最初は眠そうにしていたり・・・


―――授業の前ですもんね。

「俺はそれどころじゃない!」って何かやってる人もいたり、窓際で、「お話よりも、私、外を見ていたいわ」って人も(笑)、いろんな子がいるんですけど、お話が佳境に入るにつれ、みんなこうやって・・・(と、梶田さん、身を乗り出し、目を大きく見開いてみせる)

―――すごい! 中学生がねぇ。たとえば、どんなお話を・・・

あ、持って来ましょうね(と、本棚から取ってきてくださる)。

 

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日本の昔話って、私も知らない話がいっぱいあってね。『オオカミの眉毛』は2年生によくするんですけど、すごく面白がってくれて。

―――あ、意外と短い。(数分で読む) ほんとだ、面白~い!

こっちの『みそ買い橋』は1年生に。あっさりしたお話なんだけど、夫がこれをすごく好きで。

―――えっ、ご主人も昔話を読まれるのですか?

いえ、私がひっきりなしに語りの練習をしてるから(笑)。 聞かざるをえない、みたいな(笑)。

―――聞くともなく聞いてらっしゃるんですね(笑)。

夫にも、いいんじゃないかな?って思ってるんですけどね(笑)。

―――いいと思います! 精神的に、きっと・・・。

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子どもに「怖い話」を聞かせても大丈夫?

 

―――ハッピーエンドでないお話も、語られますか? 私は、子どものころ怖がりで、怖い話や悲しい話はあまり好きじゃなかったんです。今は息子が同じで、こないだは『ねないこだれだ』をゴミ箱に捨ててました(笑)。

ねないこだれだ (いやだいやだの絵本 4)

ねないこだれだ (いやだいやだの絵本 4)

 

あれ、こわいと思いますよ(笑)。

―――1歳ぐらいのときから読んでいるのに、4歳で捨てるのか、と。今、怖くなったのね~と(笑)。だから最近、怖がるかなと思う絵本は、敢えて選んでいないんですけど、ハッピーエンドでない話にも良さってあるから、機会があれば触れてほしいなあとも思ったりして・・・。

あんまり怖がらせなくてもいいですものねぇ。
ただ、怖い話っていうのも、案外、大人と子どもで違うことはあったりしますねぇ。たとえば『三匹の子ブタ』だったら、最後にオオカミが煙突から鍋に落ちたのを、ぐつぐつ煮て晩ごはんに食べました」って言うんです。


―――はい、はい。

そしたら、子どもたち、みんな、ホッとした顔が多いんですね。でも、こないだ幼稚園で語ったときに、お母さんたちは「ん?」って思ったみたいでね。「た、食べた?」っていうような(笑)。

―――大人はちょっと引っかかりますよね(笑)。ちょっと残酷っていうか。

そうですよねぇ。ただ、子どもたちのほうは、子ブタの身になって聞いているので、「よかった、これでもうオオカミはいなくなった」って思ってるんじゃないかな。
なんか、こう、「すっきり、ピタッと終わった」ということに、安心感を覚えているような波長を感じるんです


―――うーん、なるほど~。子どもには納得なんですね。

『かしこいモリー』っていうイギリスのお話があって、私すごく好きなんです。その中にね、私がうちで(語りの)練習をしていると、夫が必ず「おかみさん、かわいそう…」と言う箇所があって・・・(笑)

―――おかみさんっていうのは・・・?

お話のメインストーリーとは関係ない脇の登場人物なんだけど、ちょっとかわいそうなめにあうところがあるんですね。

エパミナンダス 1

エパミナンダス 1

 

(『かしこいモリー』は、このお話集『エパミナンダス』の中に収録されています。おかみさん、なんと袋詰めにされてボコボコにされちゃうシーンがあるそうです!! きゃー)

でも、子どもは意外と平気なんです。

ただ、何年か前に幼稚園で語ったときは、ものすごーく怖がっている子がいましたね。ある方は、「私は、あの話、小学3年生くらいにするわ」とおっしゃってました。「いちばんギャングエイジのころにすると、すごくぴったりくるような気がするのよ」って。


―――ああ、ギャングエイジに! なるほど! 

聞き終わったとき、やんちゃな男の子が「モリー最強・・・」ってつぶやいてたことがありました(笑)。

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やっぱり、お話がぴったりくる年代ってあるのかなー、って思ったりします。
ギャングエイジの子どもたちにとっても、それは驚きの展開で、そのころの子どもの内にあるエネルギーにも負けないパワーを持つお話だと思うんですね。

昔話には、「こわい」「残酷だ」と思う描写がよく出てくるように思われますが、それは大人の視点・大人の心配であって・・・。『かしこいモリー』にしても『三匹の子ブタ』にしても、主人公にとっては“喰うか喰われるか”の話。子どもはそのお話の本質、根本にあるもの・・・生き抜くたくましさとか、生きるエネルギーをちゃんと感じとりながら聞いているように思います。


―――なるほどー、言われてみればわかる気がしますね。小さければ小さいほど、自分中心というか、主人公になりきって聞いているんですよね。


●囲炉裏端で子どもに語ってあげるように・・・

 

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―――私、“絵本の読み聞かせ”ではなく、“語り聞かせ、ストーリーテリング”って、子どもが生まれてから初めて知りました。

ストーリーテリング」って思っちゃうと、それほど身近になかったかもしれないけれど、本当はもともと、お話って、囲炉裏端でおじいちゃん・おばあちゃんが子どもたちに語って聞かせるような・・・

―――あー、そうか!昔話や民話って、そうやって口伝いに受け継がれてきたものですよね。文字が身近でない時代からずっと・・・

子どもを喜ばせたいとか、笑わせたい、ドキドキさせたい、っていう気持ちで・・・キャッて耳を覆ったり、ハラハラドキドキしながら聞いている子どもの様子がかわいくて、慈しむような気持ちで語ってたんじゃないかなあ、なんて思うんです。

―――語り聞かせは、自然な形態なんですね。でも、今はそういった昔話の伝承も、かなり失われてきているんでしょうね・・・。

そうですねえ、だから、たくさんの子に聞いてほしいと思うと、学校とか図書館とかでの読み聞かせになりますが、あんまり大げさなパフォーマンスにならないようにとは思っているんです。
「こんなお話あるよ」って感じで、さりげなく語るだけで、子どもたちは「へえ」って驚いたり「ふーん」って聞いて、胸にすーっと入りやすいのかな、なんて・・・


―――授業や講演のような感じではなく、日常の延長みたいな感じでですね。

わらべうたなんかも、同じように思います。気持ちを整えたり、切り替えたり、たとえばハイハイを上手に誘ってあげたりするなど、生活していく術として伝わってきたものだと思うんですね。

―――うんうん、「あかちゃんどんぐり」では、とっても自然にやってくださいますよね。

わらべうたって、私もあんまり知らなくて、よーく知ってる方に教えていただきながら、来てくださる方と一緒に交わってやっているんですよ。

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―――語り聞かせるって、良い方法かもですね。
活字を読むのがあまり好きじゃない子に、「これ、面白いから読んでごらん、ほい」と言っても読まないだろうけど、実際に語ってもらえれば聞けるし、そういう体験が重なれば、本も身近に感じるようになるかも・・・

それにね、目で見るより、声に出した方が面白い本ってあるんですよ。我が家では、「くまのプーさん」。きっと、石井桃子さんの訳の、言葉の選び方やリズムが良いんでしょうけどね。

息子が小学校中学年のころ、難しい時期があって、本人も家族も、悩んだり、イライラしたりとあったんですけれど、そういうときでも、声に出して『プーさん』を読むと、あんまりおかしいもんだから、家族みーんな大笑いして、ひととき現実から離れるっていうか、楽しい時間だったんです。

その記憶が、息子にも娘にも夫にも、家族中にものすごく残っていてね。息子が高校で忙しくなって、ほんと朝早くと夜遅くしか家にいないようなころでも、たまたま私が『プーさん』を声に出して読んでいたりすると、帰ってきた息子が、階段のそこらへんから聞いててね、笑ってるんですよ。


―――へええ、すてきな話! いいですねぇ、そうやって家族で共有できる思い出の本・・・。

だから私、活字で見るのと、語りで聞くのとは、やっぱり違うものだなと思うし、本っていいなあ、とつくづく思ってねぇ。
覚えなくても、おうちだったら、一緒に読み聞かせてあげればいいからね。



●たくさんの人たちとのお付き合いの芯にあるもの 

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じゃじゃーん! 持ち寄りランチの真ん中に鎮座するのは、「みやこ食堂」のベーグルです。わーいわーい。いえ、決して、これをお目当てに京子ちゃんを誘ったわけではありませんよ!!
 
京子ちゃんもやはり息子ちゃんと「赤ちゃんどんぐり」時代から来ていて梶田さんを慕っているから、ぜひにとお誘いして撮影をお願いしたんですけども、考えてみれば、おうちカフェをやってる京子ちゃんと、どんぐり文庫をされてる梶田さんは、
「自宅という私的な空間の中に、いろいろな人を迎え入れる公的な空間を設けている」
点、共通しているのでした。お昼ごはんを食べながら、そんな話でも盛り上がったり、私が敏腕営業マンのように、京子ちゃん作のスイーツを梶田さんに売り込んだり(笑)。

 

―――文庫をされていると、いろいろな方との出会い、素敵なご縁と同時に、人付き合いで困ったなあということや、悲しいこと、こちらが失礼しちゃったかなあというようなこともありませんか?

そうですねぇ・・・。

―――人付き合いで、ポリシーといったら大げさですけど、心がけていることとか、ありますか?

うーん、普段、あんまり意識していないかもしれません。どちらかというと、子どもとか、本とかのほうに気持ちが向いているので、うまくいかなかったなあって引っかかり続けることは、あんまり、ないかもですね。

―――人の反応が気になったり、くよくよしたりとか、ないです?

うーん、あるような気もするけれど・・・。失礼してしまったものは、どうしても取り返しがつかないからね。それで本が嫌いになったら悲しいけれど・・・。
また別のところで、いい出会いができたらいいなぁとか、巡りあわせのようなものもあるかな?と思います。


―――巡りあわせ! そうですよね、ありますよね。
ややもすると、人の反応が気になって、なかなか行動できない、ってことになったりしますが、全員に認められるってことは、なかなかないですもんね。

人がどう思うかとか、評価とかは、あんまり問題じゃなくて、子どものこと、本のこと・・・。自分がやりたいことがあるから、うまくいかないことがあっても、それをプラスにしていけたらなあ、と思うし、やりたいことを、はたらきかけたくなるのかな?っていう気はしますね。
私にとっては、子どもの姿から受け取るものが本当に多くて、楽しくて、うれしい時間なので・・・。


―――うんうん、やっぱり、「やりたいことがある」のが芯なんですね。

 

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(★おわり。)


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(どんぐり文庫の看板。文庫に来ている子のおじいちゃんが、心をこめて作ってくださったもの。梶田さんが書いた文字をトレースし、柿渋でつややかに仕上げてあります。少々の風では倒れない安定感と、あたたかみのある色合い、形。子どもたちはこれを触ったり、大きな子は持ち上げて運ぶのも大好きなのだとか。)


[編集後記]
インタビュー:エミ

「本は自分で(ひとりで、目で)読むもの」だと思いがちだけれど、本来、昔話や民話は人から人へ、口伝いで伝わってきたものなんですよね。語る大人と聞く子ども、お互いに楽しい時間と空間を共有し合うのが、物語の楽しみの原点かもしれません。

私は、子どもの心を育み、時には小さな魔法にもなる「物語の力」を信じています。今回お話をうかがって、それにプラスして「子どもが持っている力」を感じることができました。子どもたちはお話が大好きで、大人にはない特別な「聞く力」を持っているのだ、と。
読み聞かせ」といえば小さい子相手のイメージがありましたが、忙しかったり他の楽しみが増えたりで本から離れがちな小学生、中学生時代にも、とてもいいのかもしれませんね。
お話を聞いている顔が見える「語り聞かせ」、緊張しそう、でもすごく楽しそう!!

教育や、道徳のための読書ではなく。パフォーマンスでもなく。ただただ、「本が好き、子どもが好き」という、梶田さんの純粋で一途な心がどんぐり文庫をつくり、共鳴する方々が集まり、子どもたちが集まって、この素敵な雰囲気ができているのですね。心があたたかくなるお話をたくさん、ありがとうございました!

(最後に私からお願い、もしこれを見て「どんぐり文庫」に行ってみたいと思われた方がいたら、梶田さんを探して直接ではなく、私( mamajanai.watashi@gmail.com)にご連絡くださいますか? ご家庭でされていることでキャパシティの問題などあるかと思いますので・・・)

撮影: 「みやこ食堂」京子

家族の写真を撮ることはあっても他の誰かを撮るのは初めてでとても緊張しました~。

いつもは子どもたちと一緒に過ごす賑やかなお部屋もこの日はゆったりと落ち着いた雰囲気で、お話もできて幸せなひとときとなりました。
文庫のときにいつも笑顔で接してくれる梶田さん。そんな素敵な梶田さんのやりたいことへの情熱に私も勇気がもらえた気がします。

参加できてよかった、ベーグルも喜んでもらえてよかった! えみちゃん、ありがとー! 梶田さん、スイーツの発注、いつでもお待ちしてまーす(笑)

ちひろ&エミで おしゃべり 「“ママじゃな” 1年経ちました」

 

 

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こんにちは、エミでーす。新しい家族を迎えたちひろちゃんの家に遊びに行ってきましたよ(*^^*) 


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いやーん! かわゆすぎる!!(*´д`*)ハァハァ

ついでに、2人で、ちょうど1年前に始めた「ママじゃな」について、おしゃべりしてきました~。


◆すでに、はるか昔に思える・・・

 

(エミ) モデルさんになってくれたママたちに、「そろそろ生まれた?」とか「おめでとう!」とか言われたよー。

(ちひろ) わー、みなさん、ありがとうございます。

 

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(親バカですが♡もう顔変わっちゃっているので)



(エミ) でもなんかさ、「ママじゃな」やってたころが、はるか昔に思えるんじゃない?

(ちひろ)そう! よくやってたなーって。なんか、すごい勢いでやってたような・・・今は全然違う生活が始まってしまった感じというか・・・。パソコン操作とか覚えてるのかな?って感じ。覚えてるんだろうけど(笑)

(エミ) それ、私も近いかも。ブランク空くとさ、「モデル依頼して、日程調整して、事前アンケートお願いして・・・」みたいな一個一個の作業が、ちょっとハードル上がるんよね。できるかなあ?って感じる。

9か月で15人取材したんだよね。よくやったよね、自画自賛だけど(笑)。

今はさ、これだけ形ができてるから、ブログを見せたら「こういう感じのものだ」って何となくわかってもらえるけど、最初の頃は「何それ、海のもの? 山のもの? おいしいの?」って感じやん。その状態で、よく図々しくモデル頼めたよね、っていう(笑)。 

(ちひろ)まずは、まきちゃん、しほちゃんにお願いしてリズムつかめたのがよかったね。

(エミ) ほんと、あの2人は大きいね、快く引き受けてくれて・・・ありがたやー。
 

 



◆よもやま思い出バナシ その1


ポートレート記事のファイルを2人で見ながら喋っています)

(エミ) ちひろちゃんは、初対面のモデルさんが多かったよね。最初のころから比べて、変化はある? 単純に緊張しなくなったとか・・・

(ちひろ)うん、それはやっぱりあるね。初対面で最初に撮ったのはニコランさんだけど、あのときはやっぱり緊張したよね。

(エミ) 誰か印象深い人はいる? 

(ちひろ)みんな印象深いけど、いちばん好きな感じの写真が撮れたのは、まゆみさんかなー。一番に思い浮かぶのは。

(エミ) なんでだろう?

(ちひろ)なんか、質感フェチな私の心がくすぐられる写真が撮れたというか。

(エミ) 撮ってるときに、すでにそういう手ごたえがあったと?

(ちひろ)うーん。取材で初めてお会いしたんだよね。すごくナチュラルな雰囲気の方でね。なんていうのかな、綿の布って気持ちいいやん? 綿とか麻とか。そういうイメージが湧いてきて、そういう手触りの写真が撮れたような・・・ 

 
(エミ) 私、アキちゃんのも好きやね。最初に写真を見たとき、なんか胸がきゅんとくるような感じがした。

(ちひろ)アキねー。ほんとしっかりしたママになっとって・・・。会ったころは日本に来て間もなかったから、ちょっとややこしい日本語も私が教えたりしてたのに・・・(笑)今や・・・(しみじみ)
 


 (エミ) 写真、やっぱりペーパーで、大きいサイズで見ると、いいよねー。

(ちひろ)綾子さんのときは緊張しすぎやね。綾子さんの素敵なところをもっと撮れてたら・・・ほんとはもっと素敵なのに・・・

(エミ) そう? かわいく撮れてるよ。まあ、緊張してたよね。そりゃするよね(笑) (注:綾子さんは『福岡乙女カメラ部』の部長さんなのです) 


なんかさ、「すごいタイミングで取材に行ったなー」ってのは何件かあったよね。綾子さんところのユキちゃんも・・・(愛猫ユキちゃん。取材の2か月ほど後に亡くなったのです)。かずさんも、取材のあとすぐに、鹿児島に転勤が決まって・・・

(ちひろ)麗子さんも、取材時は妊娠がわかった直後で、まだ妊婦さんって感じじゃなくて。次の状況に突入する前のお話&写真が取材できた!

(エミ) そのときその瞬間が残せるから、写真っていいよね。麗子さんの写真も好きだなー。

(ちひろ)オレンジ色の服がすごく似合っててcute。お店も良かったね。

(エミ) 情熱的に喋ってるところと、キュートなところ、両方撮れてて、すごいいいよね。
 


(エミ)てか、ママじゃな自体、いい時期に始めたのかもね。ちひろちゃんの出産まで9か月間、みっちりできたから・・・

(ちひろ)そうなんよねー、なんだかんだいって、始めて割とすぐ妊娠したけんね。

(エミ)企画を思いついたあと、サクとゆまちゃんが幼稚園に入園して、すぐに始めたのがよかったよね。あれから何か月か経って、ちひろちゃんの妊娠がわかったときにまだ始めてなかったらもう・・・

(ちひろ)始めなかっただろうね~。


◆「その人のおうちで その人を撮る」すばらしさ

 

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(産後、自宅に戻り、少~しずつ日常が戻ってきたとこです。)

 

(ちひろ)30いくつにもなると、顔だけじゃない、雰囲気も自分で作っていくものやん? おうちってさ、その人が選んだ家具とかファブリック、服とかと、その人の雰囲気とがマッチしてていいよね。

(エミ) すごくいい! 出るよね、その人の30数年、40数年が。

(ちひろ)そして、元から知ってたモデルさんはね、インタビューしてから印象が変わったっていうか、今までの分にプラスされた感じかな。

まきちゃんもさ、「子どものころから活発で社交的だった?」とか、今さらなかなか聞けないもんね。まきちゃんが聞かせる雰囲気にもっていかないというか(笑)。いつもは聞き手っていうかツッコミ役な感じだから。


(エミ) そういう意味でもいい機会だね。あらためていろいろ聞けて。モデルさんみんなに、「いろいろお話聞かせてくれてありがとうございます」って言いたいよ。こんな謎の企画に・・・(笑)。

(ちひろ)ライフハックみたいなので読んだけど、女の人に共通して、「自分の話をするのが好き」ってあるらしいよ。そしたらすごく気持ちがいいらしい。ストレス発散っていうか。私もそう、写真でも発散できるけどやっぱり自分の話をするって大事な気がした。恥ずかしいけどね、少し気持ちがさっぱりしたと。出てくれた皆さんはどう思ってくれただろう。

(エミ) あー、それあるかもね。ママやってると、自分のこと話す機会ってあんまりないしね。育児サークルに行ってミニ座談会みたいなことやったとき、「自分の話を聞いてもらえてうれしかった」っていう感想をくださった方がいたんよ。

(ちひろ)ほんと、“よるべない”って感じの時期なんだよね。子どもが未就園の時期は・・・ 


(エミ) 取材お願いすると「私、特別に趣味も特技もなんにもないから、お話できることないよー」って言われることあって、その気持ちもすごくわかるんだけど、でも、実際はどんな人の話を聞いてもすごく面白いよね!


(ちひろ)その人ならではの、30何年があるもんね。

(エミ) 育児サークルで知り合ったママさんたちに出てもらって、独身時代の話とかいろいろ聞けたの、すごく面白かったー。

 

  

 
(ちひろ)良かったよね。なにげない話なんだけど、それがいいんだよね。

(エミ) 意外と聞く機会ないもんね、ママ友同士だと。ダントツ若いモデルさん、彩ちゃんの回も反響あったよ。

(ちひろ)彩ちゃん!! ほんとかわいくてしっかりしてて、すてきだったね。

 

 

 

 

◆よもやま思い出バナシ その2

 

(ニコランさんの記事を見ながら)

(ちひろ)家って いいよね。統一感あるよね。ニコランさんは特におしゃれで世界観がハッキリしてるのもあるんだろうけど・・・

(エミ) こないだサニーさん(ニコランさんのダンナさん)に会ったんだけど、「取材の前の夜、奥さんと2人ですっごいがんばって片づけたんだよ」って言ってたよ。「そういうとこ、俺たちは見栄っぱりだから」って。

(ちひろ)ほんとに?! いつも全然あんな感じって雰囲気だったのに! 

(エミ) ま、家具とか、飾ってあるものとかは急にそろえられないんだから、センスはああいう感じですばらしいんだろうけどね。普段はもうちょっと生活感あるのかな?(笑) サニーさん、取材のために素敵な花まで買ってきてくれてたよね。

(ちひろ)ほんとに!「こういう男の人が福岡のこのへんにいるんだー」って・・・
 

 
(エミ) あ、ひろみちゃんだ。かわいいね。

(ちひろ)うん、洋服もお花とマッチしてていい感じ。

 


(エミ) 一年経ってから見ると、季節感が出てるの感じるね。ひろみちゃんのころは初夏で、かずさんになると、夏だよね。朝顔。典子さんになると、めっきり冬。ストーブも写ってる。

 

 

(ちひろ)あかねちゃんだ。このときは子どもたちも一緒に行ったんだよね。

(エミ) あかねちゃんが「一緒にどうぞ」って言ってくれてね。電車に乗って、ちょっと遠くまで行って、楽しかったね。

(ちひろ)夏休みスペシャルな感じだったね。 

 

(エミ) ほんと、こうして見ると、いろんなタイプの方を取材できてよかったね。バリバリ仕事してる人、子どもたくさんの人、おっとりした人・・・

(ちひろ)取材の帰り道に、お互い感想言いあうのも楽しいし、半月とか経って記事を作り上げてから編集後記を書くころには、また違う思いが出てきたりして・・・

(エミ) 充実してたね。


◆好きなことを大事にしていこう

 

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(赤ちゃん@ベビーベッド をのぞきこむ私エミの息子、激写する私、それをちょっと後ろから見てる、ちひろちゃんの娘ちゃん)


(ちひろ)なんかこう、写真撮るのもパソコン作業も、やってないと、楽しさを忘れちゃう部分があるんよね。

(エミ) うんうん。遠くなるよね。

(ちひろ)やらなきゃいけないことはいっぱいあるしさ。

(エミ) 自分のことはどうしても、優先順位的に後になっちゃうからね。

(ちひろ)今、細切れの生活だもんなー。

(エミ) まあでも、子育ての時期とか、何年か空いてもさ、好きなことって続けられたらいいね。綾子さんがね、

「(趣味って)仕事じゃないから、がんばる必要はないけど、がんばらないとすぐ終わっちゃう面もある」

みたいなこと言ってくれて・・・

(ちひろ)うんうん。綾子さんが言うとすごい説得力あるよねー!

(エミ) いろんな人を取材して思うのは、「なんでも積み重ねだよなー」って。

たとえば京子ちゃんも、今すごい素敵な「みやこ食堂」やってるけど、その前はベーグル屋さんで修行してた時期もあり、元をただせばお料理が好きなのはずーっと前からだろうし。にぎりっ娘。さんも、今のお弁当ブログは割と最近始めたものだけど、料理も写真も昔からずーっとやってきてるから、あんなにセンスよくできるんだよね。
 

 

 
(エミ) その人が今までやってきたことって財産やけん、大事にしていったほうがいいなーって。これからの「ママじゃな」がどうなるかは置いといても、ちひろちゃんも何かの形で写真をやっていけるといいね。やるだろうけど。

(ちひろ)うんうん。私、旅行して撮りたいとかってなくてさ。観光地とかだったら、逆に人よりカメラ出さないくらい、撮らない(笑)。何撮っていいかわかんなくなっちゃうんだよね。(それでも自分らしく撮るのが上手な人なんだろうけど)

(エミ) へえーっ、そうなんだ。

(ちひろ)やっぱり、撮りたいのは日常生活で。

(エミ) うんうん。

(ちひろ)でもさ、前に綾子さんが、「一眼レフって重いよね」って言ってたのが、赤ん坊が産まれてからわかる。こないだ花見に行ったときも、この人(赤ちゃん)抱っこして、荷物持って、カメラ・・・「うーん、花咲いてるけど・・・カメラ重い・・・置いて行こう」ってなっちゃった。

(エミ) 置いて行ったんかい!!

(ちひろ)(笑)。でも、いざ撮るときがきたら、またワクワク感が戻ってくるような予感はするよ。



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 (こんなんじゃいかーん、っと、後日とった桜・・・)


花が散りゆくのは淋しいけれど、枝先の若葉を見れば、みずみずしい生命力を感じて心があらたまりますね。
写真はすべて、ちひろちゃんが最近撮ったものです。

  

 

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                          (あ、どーも!)

 

 

 

(★おわり。)

番外編: 先生の45年間

 

こんにちは。春ですね。「桜と石垣」の組み合わせが大好き、エミです。

この記事は今現在ご本人の許可なく書いているもので、ルール違反かなあと思いつつ、でも私の思いを綴ることを、きっと先生なら許してくれる気がして・・・。

(追記: 後日、先生にも当記事を読んでいただき、掲載を快くお許しいただきました。先生、ありがとうございます!)

 

◆45年、あたたかく、おもしろく

 

幼稚園で息子の担任だった先生が、この春、定年での退職を迎えられました。先生の幼稚園教諭生活は、なんと45年に及びます。

このあたりで(って、どのあたりだよ?って話ですが笑) 「ゆかわあおい先生」と聞けば、うちの園の卒園児を持たずとも、「ああ!」と思い浮かぶ方は少なくないのではないでしょうか? あるいは、ご自身が先生の指導を受けた、という方もいらっしゃるかも。

それぐらいの名物先生、ベテラン先生ともなれば、私みたくペーペーな母親にとってはちょっと怖いぐらいに威圧感があるんじゃないか・・・? と想像されるかもしれません。あるいは、いつも微笑みを絶やさない、穏やかなおばあちゃん? 

それがどちらもまったく違うのです。先生はすごく面白い人で、私は先生が話してくれる「子どもたちの様子」を聞くのが大好きでした。

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入園式での先生。エレガントかつキュートな着こなし。)


「Aくんが石を集めてたから、「いい石ねぇ」と言ってたんです。お昼になって、お弁当箱を開けたらびっくり。ごはんの上に、さっきの石が乗ってる! 「うわあ、私のお弁当にかっこいい石が! 誰が入れてくれたんだろう?」と言うと、わかってる子たちはニッカー、と笑って黙ってるんです。「Cちゃん、入れてくれた?」と聞くと、 Cちゃん、「ちがうよ」とAくんの顔を見る。口では違うと言っても、顔には出ちゃうんですよねー。」


「最近みんな、友だちのしてることに、すぐケチつけるようになりましたね。おもちゃを貸さない子に、「いかんとよ」「○○ちゃん、わるいね」。そう言う子も、別の場面ではやってるんですよ、同じこと。いい悪いはわかるけど、自分のことは棚に上げる。それが3歳児でーす。」


「年中さんの縄跳びがうらやましくて、年少さんもやり出したんです。でも跳ぶのはまだ難しいから、途中から綱引きになった。Dちゃんが最初、「相手が男の子ばっかりで負けちゃうー」と泣いたから、Eちゃんを誘って、女の子同士でやってみたら、Eちゃんの手からパッと縄が離れて・・・Dちゃんは尻もちをついて、やっぱり泣いちゃった。見てた男の子たちは、「なんで なくと?」「かったっちゃけん、なかんでいいやん」って。面白いでしょう?」


「幼稚園に持っていくものは、自分で準備しようね。朝は、お水で顔を洗ってこようね。とみんなに話してたんです。水で洗うと、目がシャッキリ覚めるし、皮膚も強くなります。「お湯はダメだよ。お湯で洗うと、顔がしわくちゃになっちゃうからね」と私が言ったら、年中さんがすかさず「ゆかわ、おゆで あらったろ?」って言ったんですよ! 「だけん、そんなしわくちゃになったっちゃろ?」って!」



ああ、文字では、あの面白さの十分の一も伝えられないのですが・・・。身振り・手振りを交え、子どもたちの口調を真似ながら、つぶさに場面を再現してみせる先生の話は、さながら、落語家漫才師か、ってぐらい。もちろん、その根底にあるのは、確かな観察眼と、何より、子どもたちに対するあたたかい目線です。

先生は、子どもたちを丸ごと受け止めてくれます。土踏まずができてくる時期だからどんどん歩かせたいなとか、先生を介しての遊びは上手になったから子ども同士での“ごっこ遊び”を取り入れようとか・・・「こういう力を育てていきたい」というビジョンはありつつ、子どもの発達の個人差や、それぞれの気質・性格をよく理解し、お天気や行事疲れによる体力・機嫌までを考慮して、臨機応変な保育をしてくれます。


親に対しても、そんなにもベテランだったら、「こうしたら、ああしたら」と万事アドバイスしそうなもんだし、「最近の若い母親は」と苦々しく思うこともありそうなもんだけど、ないんです。

息子の未就園クラス時代のこと。やっとトイレでできるようになったと言う私に、先生、 「まあ! できるようになったのー!! すごいねー! え、うんちはまだ? いいじゃない、おしっこできるようになったんだもん。よかったね、よかったねー!」 。息子がその場にいないのにもかかわらず、手放しに、すごい勢いで誉めてもらえて、びっくりして、ちょっと泣けた記憶があります。

保護者に相談されると、先生自身がすぐに答えを出すのではなく、 「どう思う? 同じような経験したお母さん、いませんか?」と、周囲に投げかけることが多い印象でした。先生のそういう姿勢が、保護者同士で悩みを共有したり、助け合ったりする幼稚園の雰囲気につながっているのだと思います。

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(夏祭りでの先生。法被がお似合い。)

 

◆与えて、与えて、与え続けて

 

そんな先生だから、3学期の最後の日の「お別れセレモニー」は、多くのママたちの涙とすすり泣きに包まれました。先生も目を潤ませる様子があったけれど、最後にマイクを渡されると、声を震わせることもなく元気に話し出しました。


「50歳近い人にも、「先生!」と声をかけられることがあってびっくりします。私、そんなに長いこと、先生やってきたのかー、と。

やめたいと思うこともあったんですよ。でも、毎年3月になって、卒園・進級の季節になると、「今度はこうしよう、ああしよう」と、力が湧いてくるんです。それは、子どもたちと、お父さんお母さんたちに支えられてきたから。みなさんの力があったから、45年もできたんです。お嫁にもいかずにね(笑)。

私がベランダに座っていると、いつのまにか園児が膝に座ったり、背中に乗っかってきて、髪をつついたり、手を引っ張ったりして、「ゆかわー、あそぼう」と言います。遊ぶと、本当に楽しそうな顔をしてくれます。こんなおばあちゃんにですよ。こんな幸せなことがあるでしょうか? 

子育ても同じ。今が一番かわいいときだよね。忙しいときにダダこねられると、こんちくしょうと思うけど、ちょっと心を込めて声かけしたら、子どもはすぐ応えてくれます。あと10年もしたら、そんなこと絶対ないですよ(笑)。

だから、できるだけ笑顔で。楽しく。悩んだときは、先生たちや、周りのお母さんに、なんでも相談してください。みんなで支え合って、これからの幼稚園を作っていってください。」



これまた、文章ではとても伝えきれないけれど、エミの記憶による抄訳です。


先生の、しわくちゃの笑顔。ちょっとしゃがれているけど、なぜかよく通る独特の大きな声。ユーモアのある口調。先生はいつもどおりに明るいのに、聴いているママたちは一様に目を赤くしている・・・。あのときの雰囲気を思い出すと、10日以上が経った今でも、喉の奥に熱いものがこみあげてきます。

「みんなの支えがあったからできたこと」と先生は言うけれど、支えられたところで、これだけのことを成し遂げられる人がどれほどいるでしょうか? 私から見れば、先生のこれまでの人生は、与えて、与えて、与え続けてきたものです。


先生とのお別れを、どこまで分かっているんだかいないんだか・・・な年少&年中児たちが、花を一輪ずつ、先生に渡してゆきます。だんだん大きくなっていく花束。先生が与えた愛情は、一人につきほんの一輪の形にしても、やがて先生の細い体では抱えきれないほどの大きさ重さになります。

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(遠足での先生。もちろん海にも入ります。)


年齢や雰囲気から、先生を「園長」と勘違いする人も多いです。「あの幼稚園、園長先生が裸足で子どもたちと一緒に泥だらけになって遊んでた」みたく。先生が、一年じゅう裸足で、泥だらけになって遊んでいるのは事実ですが(笑)、先生は経営とはいっさい関係がありません。40年以上、雇われの身、一教師でしかありませんでした。今どき、大資本の世話にもなっていない小さな幼稚園ですから、お給料はたかが知れていたでしょう。「貧乏暮らしは慣れてますから」と先生は笑います。

先生は遠い島のご出身で、退職後、やがては島に戻るつもりとのこと。この喪失感をどうしたらいいのでしょうか! 

卒園しても先生が近くにおられる、思い立てばいつでも会えると思いたいのに。それに、講演やらセミナーやら、なんならラジオやテレビでも! あっちゃこっちゃに引っ張りだこになってほしい。幼児教育に捧げてきた日々を、いつものように明るく面白く喋りまくって、どんどん広めて、みんなを元気にしてほしいというのに!! 

ほとんどの人生がそうなのだけれども、こんなに偉大に思える人生も、広く知られることはなく、ただ関わった人々の記憶の中だけに、ひっそりとうずもれていくのですね。私が宮本常一ならば、民俗学のひそやかなロングセラー『忘れられた日本人』の中に「ゆかわあおい先生」の章を設けて、一筆書きたいものです。

忘れられた日本人 (岩波文庫)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

 


・・・おっと、たとえがマニアックすぎましたか?(でも、めちゃめちゃ名著です!おすすめ。) 

ではポップに、私が阿川佐和子なら「サワコの朝」で、黒柳徹子なら「徹子の部屋」で、くりいむしちゅーの上田なら「おしゃれイズム」で、先生にインタビューして全国放送するのに!! 


子ども
がお世話になったのはもちろんのこと、先生のような人に出会えたのを、私は心からうれしく思い、先生の45年間に畏敬の念をもっています。

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(クラスから先生に贈ったもの。ママたちの寄せ書きと、写真。それから、子どもたちのお絵かきを焼きつけたカップ&お皿セット。)

 

「こういう人がいる」 「こういう人生がある」という記録をひっそりとネットの片隅に残しておきたくて、アップします。


(おわり)
(先生の写真は私が子どもとの思い出のために撮ったものです)